たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2011年06月

雑誌の表紙、あるいはカバータイトル、特集テーマというものは、その時々の世相を反映して猫の目のように変わるものではあるが、毎日新聞社の「エコノミスト」の今年の米国経済に関する編集ポリシーは、「超猫の目状態」というべきか、「くるくる回るよ風見鶏」というべきか。
 
今年1月のタイトルが 「米国デフレ」で大悲観論、3月1日号(2月下旬発刊)は「米国復活」で大楽観論、それで今週出た7月5日号は「米国景気大失速」でまた大悲観論。 ふ~ん、文字通りなら、米国景気はわずか6カ月でデフレと回復と大失速をやってのけたわけだ。  
 
もちろん、そんなことはあり得ない。巨船と同じで米国の実体経済はゆっくりとしか変化しない。くるくるめまぐるしく変わっているのは、景気動向をみる人間、雑誌編集者、エコノミストの主観に過ぎない。
 
私なんかは、金融機関のエコノミスト稼業は足を洗ったので、「短期予測は一切しない」という方針のもとに、2011年の米国経済はGDP成長率で3%弱で「ゆっくり回復」という見通しを昨年11月の某講演会でやってから一切変えていない。「エコノミスト」の3月号「米国復活」特集では私も寄稿したが、あくまでも「中長期的に慎重ながら楽観」の内容で書いた。
 
まあ、実はいばるほどのことじゃないな。毎月、毎週、あるいは毎日のように「・・・で、ここから先、景気はどうなりますか?」と投資家や取引先に尋ねられ、説明する稼業じゃないから、ズドーンと見通し不変でやっていられるだけ。 
 
毎日のように小うるさく「・・・で、ここから先、どうなりますか?」て聞かれると、人間は雰囲気にのまれる動物だから、その時々の世間の超短期的な勢いに影響されて、楽観に傾いたり、悲観に傾いたりしてしまうものだ。
でも時期とタイトルを見ると気がつくと思うが、表紙タイトルは実は「逆指標」になっている。世間の景況感の変化を編集者が感じとって、特集にして出すまでにタイムラグが生じる。その結果、「デフレ!」と打ち出した時には、すでにデフレ懸念は消え始めており、「復活!」と出すと実は既に超短期的な楽観論には影が差す状態になっているのだろう。 
 
だから7月5日号(6月27日発売)が「大失速」と出したことも、実は逆指標になるのかもしれない。
実際、27日から米国の株価がまた上昇し始めているしね・・・・。
 
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貧トレさんの醒めた理性的なコメントを嬉しく感じたので、お寄せいただいた以下の疑問を考えてみよう。
 
「もしも日本が財政破綻したとしたら、どうなるでしょう?
焼け野原になるのは、いいことなのか。それとも暗黒の未来なのか。」
 
ビジネスオンラインの論考(上のサイト)をきちんと読んで下さった方は気がつくと思うが、「国家破綻」というあいまいで、どう定義するのか定かでない言葉を私は使っていない。冒頭の書籍の邦訳名が「国家は破綻する」であり、原題の「This time is different」とは違うことを述べただけ。また最後に「それは今のギリシャとは違ったパターンの『国家は破綻する』シナリオだ」と書いた時も、「 」を付している。
代わって、日本経済がこのまま政府債務を膨張させたあげく、その国富を大きく失うシナリオを、日本沈没、と述べたわけだ(これには「 」なしでね)。
 
「円安でいいじゃないか、それで景気がよくなるだろ」と単細胞的なブロッガーが突っ込み批判のつもりで繰り返し書いている。「合理的な海外投資意欲の回復による適度な円安への戻り」と「金融危機に直面した場合のパニックな資本逃避による雪崩的な円相場崩落」を私がはっきりと分けて書いていることが、連中は読みとれないようだ。
 
後者のリスクを回避するために、財政再建と合理的な海外投資意欲の増進が今必要なんだと説いているわけ。
 
しかし不幸にして、財政再建も合理的な海外投資の増加も不十分に終わり、政府債務が今のペースで累積を続けたら10年後どうなるか? 貧トレさんの疑問へのアプローチはここからだ。
 
あり得るシナリオ
1、国債価格の急落(利回りの急騰)→銀行、機関投資家、郵貯銀行の大規模損失→これら機関の自己資本の棄損→信用収縮→金融危機
このシナリオは損失の原因こそ違え、1990年代後半にも起こったこと。中長期券の価格の下落は利回りの2~3%程度の上昇でも、その数倍の価格下落になる。その時にはおそらく1000兆円を超える残高となった中長期国債は、わずか10%の価格下落で100兆円の損失になる。これは90年代のバブル崩壊で銀行が10余年かけてやっと償却した損失額と同じ規模。
 
こうして株安、円安、債券安のトリプル安が発生する。
 
90年代後半の時は、政府の手際の悪さもあり、長銀などがハゲタカ外資に底値で叩き売られた。あれと同じか、もっとひどい状態をまた経験したいだろうか? その時、買い叩きに来るのが、中国資本だったらどう思う?
 
2、国債が急落したって日銀が国債を買い支えれば済むじゃないか?
 民間機関が100兆円単位で売りに出る国債を日銀が買い支えれば、マネー供給がもの凄い規模になる。過去の量的金融緩和なんて屁のような規模だ。しかも債務膨張を回避できなかった日本政府への信認は内外ともに喪失している。だから国債に資金は戻ってこない。
その結果、膨大なマネーは国内にとどまればインフレ高進をもたらし、海外に向かえば、超円安をもたらす。おそらくその双方が生じるだろう。 だからやはり名目金利の上昇、国債価格の下落は回避できそうにない。従って金融危機も併発する。
 購買力平価に見合った水準への円安ではなく、それを越えた円安になれば、日本国民全体が対外的な購買力を失うことになる。 最後には輸出が伸びて、過度な円安にも修正が生じるかもしれないが、それまでの過程で生じる円安へのオーバシュートは、海外投資家に日本買い叩きの絶好の機会を提供するだろう。 
 
もちろん以上のような最悪シナリオの後だって、それで日本経済が死滅するわけじゃない。その後の再生もあり得る。でも大危機を起こして、失わなくてすむ大きな国富を失うのはバカバカしいだろう?
戦後に復興、高度成長を遂げたからと言って、だれも戦争で焼け野原になって良かったとは思わないでしょ。
 
それじゃ、このへんできりあげて、楽しみにしているNHKドラマ「下流の宴」を見ようかな。火曜日午後10時前
 

今日(6月25日)の日本経済新聞の記事
以前から中国政府が日本国債を買っていると観測報道がなされていたが、データで裏付けられた。
 
「海外の中央銀行が保有する日本国債など円建て資産の合計が昨年末時点で約35兆円となり、1年前よりも24.6%(約7兆円)増えたことがわかった。最近4年で2倍以上の増加。海外中銀の円資産を管理する日銀が、日本経済新聞の情報開示請求を受けて、資料を一部開示した。海外中銀の円資産保有の大枠が明らかになったのは初めて。」
 
国別の残高は開示されていないが、1年間で増えた7兆円のほとんどは中国政府によるものと推測されている。ドル買い・中国元売り介入で生じたドルを、その後ユーロや円など自由な交換性のある通貨に分散しているわけだ。 
 
1年間で7兆円というのは、日本の年間の経常収支黒字の10数兆円に比べて需給的に十分大きい。ときどき勘違いされている方がいるが、為替相場の動向を左右するのは売買量ではなく、経済主体のネットの持高の変化である。この7兆円はネットの持高の変化として、まるごと需給インパクトになっている。
 
まず間違いなく、中国政府はユーロについてはもっと大きな金額で買っているはず。PIIGSの債務危機にもかかわらず、ユーロ相場を下支えしている要因になっていると思う。
 
中国元が自由に売買できるなら、日本政府も中国元を買ってやるのが良いだろうが、中国は非居住者の中国元購入を規制しているので、それができない。こういう非対称性は厄介な問題、もっとはっきり言うと一種の政策的な不公平と言えるかもしれない。
 

本日掲載されました。
「このままでは日本沈没、雪崩的円安→国債暴落→金融破綻への導火線には火がついている」
 
以下本文の一部
「この期に及んでも、『日本の貯蓄率は高く、政府の国債の約95%は国内の貯蓄でファイナンスされているので、日本はPIIGS諸国とは違う。その証拠に国債利回りは1%そこそこの低さを維持しているではないか』という主張が、少なくない政治家や一部の経済評論家から聞こえてくる。増税や給付の削減という厳しい課題に直面することを厭う政治家や有権者には、“Japan is Different”という甘いささやきだ。」
 
「筆者は短期的・中期的な財政赤字による景気対策は否定しない。しかし政府債務の長期にわたる一方的な累積は、将来に向けた巨大なネズミ講(ポンジスキーム)にほかならない。資産の裏付けのない赤字国債が、途方もなく膨張し、投資家や金融機関が何も疑うことなく、積極的にそれを購入し続けているというのは、究極のバブルかもしれない。 」
 
追記:
お、控えめな下の方の掲載だったのに、午後5時25分現在、日中アクセスランキングで2位に上がっている。 記事が出てからアマゾンの「国家は破綻する」の売れ行きランキングも、3000番台から700番台に上がったぞ。日経BP社には「ワンポイント貸しだな」と勝手に思う。
 
 
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 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の貸借対照表(2011年3月末、連結ベース)を見て驚いた。 保有する「有価証券」の残高が71兆円(総資産の34.4%)にも増加し、貸付金80兆円(同38.8%)に匹敵する第2の資産項目になっているのだ。保有有価証券は国債と地方債が大半であり、64%を占めている(国内株式の比率は5.1%)。
 
2005年3月末の有価証券保有残高は48.5兆円(総資産の25.9%)、貸出金85.7兆円(同45.8%)であるから、6年間で有価証券の保有残高は22.5兆円も増えたことになる。
 
みずほFGや三井住友FGも見てみたが、同様に国債と地方債を中心にした有価証券保有の急増と貸出比率の低下が見られる。
 
元来日本のマネーフローは、家計貯蓄の株式や社債などへの投資の多様化が進まず、銀行預金を通じて企業部門の貸付金に流れ、郵貯への資金は国債の購入に集中していた。ところが2000年代以降は、民間銀行の資金も国債に流れるという変化、つまり「民間銀行の郵貯化」が進むことで政府債務はその急膨張にもかかわらず超低位に安定している。
 
融資が本業の銀行が、国債保有残高ばかり膨張させている。これじゃ経済が成長しないのは、当然だね。
 
「経済の低成長が続いているので、企業部門の資金需要は弱い。一方、政府の赤字は増加して政府部門の資金需要が拡大している。従って国債に金融機関や投資機関の資金が流れるのは当然だ。それで何か問題があるのか?」  そう考える方もいるだろう。
 
しかし、それは大間違いだ。なぜか? 今週の金曜日掲載の予定の日経BPビジネスオンラインに書いたので、金曜日にご覧頂きたい。
 
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日曜日の昨晩、夕刻に映画「パイレーツ・オブ・カリビアン、 命の泉(Pirates of the Caribbean,  The
Fountain of Youth)を見た。第1作めから数えてパート4であるが、新シリーズの第1作めでもあるようだ。http://www.disney.co.jp/pirates/home.html
 
世界のどこかにあるという「命の泉」、その泉の水を2つの聖なる杯に注ぎ、片方の杯に人魚の涙を1滴加えて、それぞれを二人の人間が飲むと、人魚の涙の入っていない水を飲んだ人は絶命し、その人の生涯の命ぶんだけ、涙を加えた水を飲んだ人の寿命が延びるという・・・・。
 
ん・・・逆だったけな? そうそう、主人公のジャック・スパローもどっちがどっちだか混乱し・・・というとろこで、まだ見ていない人のために、ネタは明かさないでおこう。
 
で、映画を見て帰ってきたら、夜9時からのNHKスペシャルで「あなたの寿命は伸ばせる~発見!長寿遺伝子~」という番組をやっていた。http://www.nhk.or.jp/special/onair/110612.html
吸いつけられるように見た。
 
偶然にしちゃあ、あまりにもでき過ぎているじゃないか。映画で「命の泉」の後に「発見、長寿遺伝子」だなんて。
 
NHKのこの番組、ご覧になった方は少なくないだろう。えっ、見ていない!そりゃ人生最大の不覚かもしれないよ。
老化を抑制し、若々しさを保ちながら、30%も寿命を伸ばせる鍵を人類の科学は手に入れる寸前のところまできているのだからね。
 
いや、既にその手法は解明されている。カロリーを30%ほど抑えた食事を続けるだけで、長寿遺伝子
Sirtuinが働きだし、細胞内のミトコンドリアを活性化し、ミトコンドリアが老化すると生じる活性酸素を抑制してくれる。この活性酸素が老化現象に強く作用していることは先刻ご承知だ。
 
Sirtuin遺伝子は、それ以外にも血液中の免疫細胞が血管内に沈着して生じる血管の老化を防ぐなど、合計100種類もの生命の老化現象を抑制する働きをするそうだ。
 
ねずみの臨床実験では、カロリーを30%落とした食事を続けたネズミは、そうでない飽食・満腹ネズミよりも30%以上も寿命を延ばしたそうだ。
 
このSirtuin遺伝子は生物が飢餓を生き抜くため過程で、淘汰されながら進化してきたと推測されている。つまり飢餓状態を生き抜くために、エネルギー効率を高め、老廃物の蓄積を回避するなどの機能を進化させてきた。だから、カロリー30%減というダイエット・モード(つまり軽度の飢餓)が持続するとスイッチオンで働き始めるというわけ。
 
「老化せずに長生きしたいけど、ダイエットはつら過ぎる」という方のためには、レスベラトールという成分がSirtuin遺伝子を活性化させることまで分かっている。レスベラトールを含むサプリメントが市販されている。ただし現行のサプリメントの効能はまだ十分に検証されていないそうだ。医薬品業界はより確実にSirtuin遺伝子を働かせるレスベラトール薬剤の開発に傾注しているということだから、近い将来にはダイエットしなくても確実に長寿が実現する可能性が高まっている。
 
「すでに少子高齢化なのに、ますますじいさん、ばあさんが増えると言うことか。年金も医療も財政破綻するぞ」そうだね。でも、元気なじいさん、ばあさんが増えるのだから、年金支給年齢はもっと引き上げて、60、65歳で引退せずに、70、75歳まで働けばいいだけ、とも言える(税金も払ってね)。
 
私は肥満でもメタボでもないが、ワシントン駐在時代にダイエットで体重を71キロから3キロ減らしたことがある。日本に戻って来て、食事が美味いので71キロに戻ってしまったが、今回の番組を見て、また3キロ減を目標にダイエットすることにした。 
 
やはり若さの持続は人間の強い願望ですからねえ。
 
 
 
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IMFの専務理事だったストロスカーン(フランス人)が、NYのホテルでホテルのメイドに「性的な暴行」を加え、逮捕・起訴された5月のニュースは皆さんご存じだろう。IMFのトップであり、フランスで左派の次期大統領候補にあげられていたほどの人物がなんでホテルのメイドをレイプをするわけ???(@_@)。信じられないというのが第1印象だった。だから「政治的陰謀説」も囁かれた。
 
今日の朝の衛星TV放送でスウェーデンでの「セックス依存症患者」の治療のことが報道されていた。スウェーデンでは、セックス依存症(強いセックス衝動に支配され、やたらにセックスしまくる)は脳内バランスが崩れることによって生じる病気だという認識が定着しているそうだ。
 
新聞読みながら片耳、片目で見た報道なので記憶が正確じゃないかもしれないが、性的な興奮には脳幹から分泌される「脳内快感物質(ドーパミン?)」が係っているそうだが、「正常人」は大脳皮質のチェック機能が働き、めったやたらなセックス衝動は抑制される。ところがセックス依存症患者は、なんらかの事情で大脳皮質の抑制機能が働かずに、ダイレクトに性衝動が働いてしまうとか・・・(正確な再表現ではないかもね)
 
ストロスカーン氏は同様のスキャンダルの前歴があったそうで、やはりこのセックス依存症だと判断すると合点ができる。
 
セックス依存症で思い出すのは、原作マンガ「GANTZ」の大阪道頓堀編に登場する「桑原」である(以下添付画像)。妖怪星人ろくろっ首女を後ろから強姦し、最強のボスキャラ「ぬらりひょん」とのバトルでは、巨大女体モンスターになった「ぬらりひょん」の顔面にしがみついて、ファックしてしまうという「超絶攻撃」をやってのける。しかし奮闘はそこまでで、両手両足をひじ・ひざ下から失う。
 
ところがそれでも桑原は死なずに、味方の女性におんぶされて退却する時に、「セックス・・・させてくれ・・・・」と呻き、あいそを尽かされ、彼女らに「こいつ捨ててく?」「そうだね・・・」と言われてしまう超異色キャラだ。
GANTZは現在発刊されている31巻まで読んでしまったが、桑原はGANTZ大阪メンバーとして生き残って再生されているはずなので、また登場しないかと期待している。
 
もうひとつ思い出したのはキャメロン・デュアスが主演する映画"In Her Shoes"だ。
 
キャリア・ウーマンの姉と自堕落な妹(キャメロン)の物語だが、法律事務所で働く姉はボス(上司)と不倫関係にある。ある日ボスが姉の家を訪れ、扉を開けると、たまたま姉の家に泊まっていた妹(キャメロン)がパンティーとシャツだけの扇情的な姿で立っていた。
 
なんとこのボスは、姉の情夫でありながら、妹の扇情的な姿にドーパミン分泌120%状態となり、初対面にもかかわらず、いきなり押し倒してファックしてしまう。妹もいい加減な性格だから、されるがままにしている。するとそこへ姉が戻って来て、ファック中の二人を目撃してしまうので、もうめちゃくちゃになる。
 
プッツンして家を飛び出していこうとする姉に向かってボスは、「待ってくれ、誤解だ。説明させてくれ!」という趣旨の言葉を叫んだと記憶しているが、この場においてどういう誤解がありえようか?なんという説明が可能か?
これがセックス依存症の典型的な行動であるとすると、なるほどストロスカーン氏の超非合理な行動も理解できる気がする。
 
ストロスカーンの法廷が開始されているが、いっそ「私は病気だった!」と主張を換えて、セックス依存症治療の権威の先生に弁明してもらえば、減刑の余地も出てくるかもしれない・・・。 
しかし、セックス依存症の人物がIMFのトップから大統領候補の推されるというフランスは、まあ、なんてセックスについてリベラルというのか、寛容というのか、やはり日本人にはわからない国だ。
 
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本日の日経ビジネスオンラインに掲載されている國枝繁樹氏(一橋大学国際・公共政策大学院及び経済学研究科准教授)の「経済成長すれば増税は必要なしのウソ」は実に明快で、すっきりとする。
 
ただし財政学の専門家としては、今日では常識的な議論をしているに過ぎない。この程度の常識が国会議員の多数に共有されずに、30年も昔の第1次レーガノミクス時代のブードゥー経済論が日本の政治においてはびこるならば、日本経済の命運はおそらく10年か20年後には尽きるだろう。
 
今のギリシャやポルトガルは、このままのコースを日本が辿った場合の近未来の姿を見せてくれているとも言える。もっとも日本は独立した中央銀行を維持しているから、膨大な政府債務の累積のつけはギリシャやポルトガルとは形を変えた災いとなるだろう。
 
おそらく日本からの資本逃避と暴走的な円安が可能性の高いシナリオだと思う。
今ならまだ間に合うかもしれない。
でもコース転換が間に合うまでに残された時間は次第に短くなっている。
私はこのブログをずうっと残しておくことにしよう。
 
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6月3日に東京日本橋のマンダリン・オリエンタル・ホテルで開催された国際雑誌ユーロマネー主催によるシンポジウム、Japan Forex Forumにパネラー出演した。
 
ユーロマネーの東京でのシンポジウムは2007年以降これで3度目の参加だ。今回私が参加したのは午後4時10分からの最終セッションで、“New Macro Challenges: Capital Controls, Inflation and
Credibility”というテーマ。 私を含めて5人のパネラーと司会役で展開した。
 
最後にフロアーからのご質問タイムになって、2つ質問だ出た。そのひとつが「金価格はどうなると思うか?まだ上がるか?」というものだった。
 
5月の下旬に大阪梅田で龍谷大学経済学部主催で開催した一般セミナーでも(私の講演テーマは「賢い資産運用の秘訣」)、中高年の紳士から「自分は金投資をしているが、金価格についてどう思うか?」というご質問を受けたので、やはり高騰した金価格の動向は世間でも強い関心事項のようだ。
 
どちらの場合も私は今の金価格は完全に過大評価(over valuation)と申し上げた。なぜそう思うのか?
金は株式、債券、収益不動産のように所得(配当、利息、賃料)を生まないコモディティーである。
所得を生む資産であるならば、合理的に考える限り、その価格は将来にわたってその資産が生み出す収益キャッシュ・フローを現在価値に割り引いて、合計したものだ。
資産バブルやその崩壊で価格は乱高下するが、長期的にはこの理論値に収斂する。
 
では所得を生まないコモディティーの価格の長期的な趨勢水準はどう考えたらよいか?20世紀の初頭までは金本位制下での金は世界通貨だった。現代のペーパーマネー(不換紙幣)が購買力の低下(=インフレ)によって価値を減じるのが必定であるなら、金はインフレによる価値低下の生じないマネーである。
 
そう考えると、金価格は通貨のインフレ率の逆数だと考えるのが合理的だ。ドル表示の価格ならば、ドルのインフレ率の分(=ドルの購買力の減価分)だけ、コモディティー価格は上がる。つまり為替相場と同様に価格表示に使われる通貨の購買力原理が働いている。
 
もちろん、短期・中期の価格はその理論値から大きく乖離する。でも大きく乖離した後は、理論値に回帰する力が働くだろう。そう考えて、ドル建て金価格と米国のインフレ率(消費者物価指数)を双方とも1973年を100にして表示したのが下のグラフである。
 
1980年前後にインフレとドル相場の下落を背景にした金ブームがあり、この時は消費者物価指数が示す水準に対して、金価格は年平均で約3倍強、高値で約4倍まで高騰した。その後、1980年代前半にインフレの収束とともに急落した。
 
1990年代後半から2000年代前半には、金価格はインフレ指標が示す理論値よりも割安な状態が続いたが、2000年代後半から高騰した。
 
現在の金高騰の背景には次のような事情があるのだろう。
1、経済成長でキャッシュリッチになった新興国の金購入
2、金融危機による金融資産への全般的な不信
3、ドル相場下落への不安、あるいはヘッジ
 
1980年と今日の大きな相違は、インフレ率だ。1980年当時は70年代に二桁インフレを先進諸国が共通に経験した後で、足元のインフレ率も高かった。一方、今日では米国も他の先進国もインフレが問題になる状況ではない。唯一、現在の金価格の高騰が正当化されるとすると、今後10年間に米国が高インフレになることだ。
 
QE2や財政赤字の結果、そうなると語っている論者もいるが、私は極めて懐疑的だ。まず、賃金が物価に連動(スライド)する慣行や協定の強かった1970年代までは賃金と物価のスパイラルな上昇が起こったが、スライドが切れている今日ではそういうことにはなりそうにない。 
 
ドルについて将来のインフレが予想されているならば、米国の長期国債の利回りは上昇するはずだが、10年物利回りは一時3%半ばまで上昇した後、逆に3%割れに下がっている。インフレ連動債が示す将来の予想インフレ期待値もとりたてて高インフレを示唆していない。
 
金市場は実は世界の債券市場の規模に比べると極めて矮小なもので、債券や株式市場の資金のほんの一部が流れ込んだだけで、高騰するし、それが巻き戻されると暴落する。要するに「湯船にクジラが飛び込む効果」で価格が変動する。
 
それでも“This time is different”症候群はいつの時代でも起きる。だから今回の相場も、1オンス1500ドルという水準は理論値が示す値の約3倍だ。1980年の時のように仮に4倍まであるとすると、2000ドルもあるかもしれない・・・?という空想も可能だろう。
 
「今の金価格が割高でも2000ドルまで上がるなら、買って儲けたい」と考えるのは、典型的なバブル症候群だ。 2007年に北京に出張した時、上海総合指数は4000を超えて株ブームだった。その時も
聴衆(大学院生ら)から「先生は中国の株はバブルだと言いますが、それでもどこまで上がると思うか?5000か、6000か?まだ上がるなら買って儲けたい」と言われた。 私は「そう考えることが正にバブル心理なんだよ」と言ったことがある。 結局、6000まで上がって、暴落、今でも半値以下だ。
 
今回のユーロマネーのシンポジウムでは、金価格についてベアーかブルか、5人のパネラーの意見は2つに割れた。日本の大手資産運用機関のマネジャーさんが「金はまだあがる。私はブル」と答えていたのが記憶に残っている。 「割高でも、まだ上がる」と思う限り、高値を追っう典型的なバブル症候群が広がっているとしか、私には思えないのだけどねえ・・・。
 
ちなみに、以前書いた私のデスクの引出しの奥で永いこと眠っていたミニ・ゴールド板(100グラム)は先日、1グラム4000円台で「市場に放出」した。(^_^;)
 
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