たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2011年07月

米国連邦議会が政府債務発行残高の上限引き上げで民主党と共和党が8月2日までに妥結できないと、政府の支払いが止まり、新たな金融危機を招く、という問題が繰り返しクローズアップされている。
私の目にはこれは過去何度もやって来た両党のチキンゲームで、先に妥協した方が負けの党派対立に過ぎない。
 
「でも、妥結できないまま、双方とも米国経済を道連れに崖から転落するというリスクもゼロではないのでは?」という心配が投資家心理を冷え込ませているのだろう。
 
今日のダイヤモンドオンライに掲載された元クリーブランド連銀総裁のホスキンス氏の以下の説明は、私の認識に一番近いので、ご参考まで。 
 
 
 

えええっと、どなたでしたっけ? オーストラリアドル・円の購買力平価、直近のグラフを見たいと言っていた方は?
何度か記事を紹介している日経新聞の田村さん(編集委員)が、本日の日経新聞WEB版のコラムでオーストラリア・ドル円のPPP掲載しています(以下サイト)。
 
マンキュー先生の多通貨の名目相場変化とインフレ率の相関グラフもわかり易い。
双方掲載しておきます。
  
 
 
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外資系証券のストラテジスト、アナリスト2名によって書かれた以下の書を読んだ。
 
 
財政赤字問題に関する従来の議論、すなわち「現在の財政赤字と政府債務の増加は長期にわたって持続不可能であり、このままでは国債暴落、インフレ、資本逃避、金融危機が起こるリスクに直面する」という財政学の主流意見と、そうはならないと考える俗流的な楽観論の狭間で、欠けていた議論をカバーしているのが本書の価値だろう。

具体的には3章で、「長期に持続不可能」といわれながら、既に10余年というかなりの長期にわたって、膨大な赤字国債が発行され、低金利が持続してきた原因を実証的に議論している。
 
結論をいうと原因として、日本の過剰貯蓄が経済理論が想定するように短期・中期のタイムスパンでは容易に解消せず、膨張する政府債務のファイナンスが実質金利の上昇をもたらすメカニズムが働かなかったこと、デフレは財政学の教科書では実質債務負担を増加させるわけだが、政府債務のファイナンスの側面においては、デフレで実物資産への投資が委縮する故に逆に政府債務への投資が促進されるという効果が指摘されている。

逆に言うならば、経済がデフレを脱却した場合、過剰貯蓄の趨勢的な縮小が始まる可能性があり、その時にこそ政府債務の長期にわたる安定的な吸収を支えていた条件が消えるわけであり、国債の金利急上昇(価格急落)が現実のものとなるだろうと言っている。全く目新しい議論ではないが、論理的な結論だろう。
 
ただし、ここからさらに一歩進めて、国債価格の急落で保有金融機関(銀行、郵貯銀行、生損保、年金基金など)に多額の評価損が生じること、その場合には満期まで保有しても、既に上昇した市場金利との格差で莫大な期間損益の赤字が生じること、その結果、金融危機に直面するリスクがあると私は考えるが、その点での議論の展開はなかった。

また同じく3章では日本政府は、歳出規模、公務員数、公的資本形成のいずれを見ても大きな政府ではなく、全体として見ると小さい政府に部類するが、「受益と負担のバランスが異常化している(低受益、超低負担)結果、財政赤字となっているとデータに基づいて指摘してきしている。つまり政府歳入が小さすぎる(国民負担が軽すぎる)のだ。その通りだと思う。

さらに4章では日本の財政危機が顕現化する複数のシナリオを樹形分岐方式で検討している。想定されている各事象の発生確率は、あくまでも主観的なものであるが、議論の整理に有益だ。それによると「狭義のデフォルト」12%、「ハイパーインフレ」7%、「財政状況はさらに悪化するが破綻はない」56%、「一定の財政収支改善が実現され安定化」20%、「財政再建完了」5%となっている。

著者の立場は日本国債の大暴落や狭義のデフォルトは「そう簡単に発生しない」であるが、財政赤字楽観派を支持しているわけではない。記述の通り、経済が回復して貯蓄超過が解消し、金利上昇が起こり始める時こそ日本国債の重大なリスク局面である。例えるならば、超肥満患者が「立ち上がろうとする(経済が回復する)時に、そのままでは超肥満の身体を筋肉と骨が支えきれなくなって砕けてしまうようなリスクが、政府債務の膨張により増大していると指摘している。すなわち立ち上がる前にやはりダイエット(財政再建)しなくてはならないと言うわけだ。
6章では、日本国債のデフォルトリスクが議論されているが、日本の金融機関では日本国債がデフォルトするような場合には、自社も破綻不可避なので、そもそも日本国債のソブリンリスクは「想定外」とされていると指摘されている。怖いね。東電の原発対応と同種のパターンを感じる。

終章では、問題の解決のためには、高齢化に対応した内需振興、社会保障の持続可能な形への再設計、一定程度の増税しかない。「日銀叩き」「官僚叩き」「公共事業叩き」といった不毛な議論から脱して、日本の進むべきビジョン設計に進んで欲しいと結んでいる。全く同意である。

書店では、国債暴落・財政破綻を扇動するような書籍や、その真逆の「日本の財政赤字問題なし論」など俗流的評論家の書籍が目立つが、そうしたものに惑わされずに実証的に議論、思考したい読者にとって有益な一冊だと思う。
 
 
 

 本日(7月20日)に掲載された小峰教授の日経ビジネスオンラインの論考は、経常収支、財政赤字、そして将来起こり得るリスクとしての日本からの資本逃避(キャピタルフライト)の関係をわかり易く解説している。
 俗流評論家に扇動、洗脳されて、「日本の財政赤字は問題ない」と主張し、財政再建の主張をみな「財務省の陰謀」と中傷している方々は、頭を冷やしてこの論考を読んで頂きたいものだ。
 
 ただし、国際収支発展段階説は、私はあまり機械的に適用しない方が良いと思う。というのは最終ステージは「対外債権取り崩し国」であるが、そこで一国の経済発展がみな終わりを迎えるわけでもないからだ。また、小峰先生と同じで、今回の震災を契機に日本が一気に経常収支赤字に移行するとも考えていない。
 
 さらに、何度も言うように、今のコースを後10年かそこら辿れば、国内の貯蓄・投資バランスは貯蓄過少になり、政府債務は家計部門の金融資産残高を上回り、債権取り崩し国に移行し、資本逃避に直面するリスクが高まるだろうと言う点で、小峰先生と全く同じ意見だ。
 
 以前日本の対外純資産は約260兆円ほどで、世界最大である。しかし1990年までは日本の財政収支はほぼ世界一健全だった。それからわずか10年で政府債務のGDP比率最大の国になってしまったことを考えれば、安穏としていられまい。
 
 日本について、未成熟な対外債権国から成熟した対外債権国に移行できるのか、この点もこの国の金融・投資文化、リテラシーの現状を考えると楽観的な気分になるのは難しい。最悪のシナリオは未成熟な対外債権国から中抜きで一気に対外債権取り崩し国に移行してしまうことだろう。
 
 それができるかどうかは、日本の投資家の合理的なリスクテイク姿勢の回復にかかっている。
 

「その者、青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」
 
 
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facebook友人がこのフレーズを引用していました。感嘆したので、そのまま真似掲載させていただきました。
解説はヤボになりますから、しません。ツイッターなどでも流れていますね。
 
竹中正治HP
 
 

凄い試合だった。感動した。涙出た。
なでしこジャパン、強い、タフ、冷静、誇りに思う。
 
 
追記:
この了戒率美子という人のなでしこジャパン勝因分析は良くできていると思う(以下)。
女の気持は女の方が良く分かると言うことかな。
 
竹中正治HP

さてisaroaさんの問題を考えてみよう。
 
「物価上昇率を加味した実質金利というのは、資金移動が自由化されている場合は、どこの国でも長期的には一定になるように動くはずという理解でよいのでしょうか?」

そうです。短期、中期では当然実質金利は異なりますが、資金移動が完全に自由な諸国の間では長期・趨勢的な実質金利は同じ水準に収斂すると原理的には考えられているし、私も日米で過去20年か30年でやってみましたが、とてもよく近似します。
 
「となると、長期間、キャリートレードが起こっており、多くの人が利益をそれで得ていたということ自体は、実は、経済理論的には、おかしく、実は、何らかのバブルが発生しているなど、経済状況がおかしかった可能性が高いということになるのでしょうか?」
 
キャリートレードはブームと破裂を繰り返してきたと理解しています。ブーム期にはPPPから高金利通貨高の方向に相場が乖離し、破裂局面でPPPに回帰し、あるいは反動でPPPより割安方向にオーバーシュートします。これは私の為替相場関連の著書で具体的に記述してきたことです。
ただしそれを「経済状態がおかしい」というかどうか?表現が主観的ですね。経済とは必然的にそういう振れを発生させるものだと考えれば、まあ自然なことだとも言えます。
 
「実質成長率は各国異なります。実質成長率が高い国の場合は、株式や土地資産といった資産は、高い成長率で成長すると期待されます。 こちらの差異は、どのように調整されるのでしょうか? 成長率が高い国への資金流入は、その資産の今後の実質ベースでの期待上昇率が、その他の国の同様の資産の実質ベースでの期待上昇率と等しくなるように調整されるということでよいのでしょうか?
 
さて、この問題が難しそうだ。各国の実質成長率はひとり当たり実質GDPで見ると先進国では戦後2%程度に収斂する傾向が見られます。しかし、労働人口成長率は異なるから、実質GDP成長率は収斂するわけではない。その結果、「実質GDP成長率-実質金利(これを成長率・金利格差と呼ぼう)」の趨勢値にはバラツキが生じるでしょう。
 
成長率・金利格差が相対的にプラスで高い国の投資収益率は、低い国よりも高くなるか? ここで「投資収益率」とは株式や不動産などリスク性資産への投資と考えるべきですね。つまり無リスク金利(国債利回り)にリスクプレミアムがのったリターンです。 
 
投資家のホームバイアス(投資の自国偏重)が全くない原理的な完全世界では、諸国間のリスク性資産への実質投資リターンも収斂すると思います。投資家(例えば日本の投資家)が完全に合理的でホームバイアスがないなら、自国よりも高い投資リターンを生む国(例えば米国)への投資を増やすはずだからね。
 
その結果、現時点の米国の資産価格は上昇し、ドル相場は上昇する。その見合いに将来にわたる資産のインカム・リターンは低下する、あるいは今後の資産価格の成長率は鈍化し、将来のドル相場も投資収益率が収斂する水準まで下落する。
 
ところが、実際過去20年で見ると、「米国のリスク性資産の実質投資リターン>日本のそれ」となっている。20年間というのはかなり長期だから、収益リターンが収斂することを妨げる事情が長期でも働いていると考えるべきでしょう。
 
その事情とは、やはり投資家のホームバイアスが大きいと思う。加えて投資家の国によるリスク選好の相違も作用しているかもしれない。米国のリスク性資産の実質投資リターンが日本よりも高くても、ホームバイアスが強くて、かつリスク選好の低い日本の投資家は米国に投資したがらない、ということですね。
 
以上のように考えると、各国の国債のように無リスク金融資産(実際は無リスクじゃないけど)ではホームバイアスが低く、高リスク資産になるほど(不確実性が高まるにほど)ホームバイアスは強く働くと考えるのが妥当かもしれない。 だから実質国債金利では現実にも収斂がみられるが、リスク性資産の投資リターンでは収斂が働かず、バラツキが大きく残る。
このことをデータで実証できれば、まだ他の誰かがやっていなければ、論文になりそうですね。
 
とりあえず、こういう考えで良いかな・・・・。
なかなかチャレンジングな問題提起でした。
 

先日紹介した日経新聞Monday Nikkeiで購買力平価の考え方について特集記事を書いた田村編集委員の新しい記事が日経ウエッブ版に本日掲載されている。
有料の登録をされていない方がどこまで読めるのかわからないが、以下の通り。
 
「いつかは経済自由人」
「長引く円高、歴史が示すドル目安レートは?」(編集委員 田村正之)
 
 
ちなみに、購買力平価で検索していたら次のような「アンチ購買力平価」のサイトを発見した。
なかなか傑作なトンデモ論なので、ここにご紹介しておこう。
 
このサイトかなり包括的な内容になっているにもかかわらず、運営者が不明で、各セッションを執筆している人達も匿名でわからない。
 
おそらく証券会社など投資家の海外投資をビジネスにしたい機関が、匿名執筆陣で書かせているのだろう。
匿名にしているのが、実に姑息(こそく)で、「こうやってデマを世の中にふりまくんだ」という見本のようだ。
 
購買力平価に関する「トンデモ度」はSA級、大学の国際金融論の講義の試験で、これをこのまま掲載して、誤っている点を指摘せよ、なんて問題にするのも良いかもしれない。(ただし絶対的購買力平価の算出が無理であることを指摘している点は、ある程度同意できる。)
 
「海外投資データバンク」
以下引用です。
 
「確かに相対的購買力平価説は、ある程度は理屈の通る法則でしたが、近年では崩れつつあります。2000年代に入り、激しいデフレで通貨価値が上昇しているはずの日本円が、世界のほぼ全ての通貨に対して円安が続いていた現象が、相対的購買力平価説を真っ向から否定しています。
 
これは、低金利の円で資金調達し、高金利国で運用する「円キャリートレード」が原因です。特に2005年以降は、ネットでのFX取引が個人にも広まったことで、円売り=外貨買いの需要が極端に増えたことも、円安を助長しました。FXは数十倍のレバレッジが掛けられるので、例えば100万円しか資金が無い個人投資家でも、数千万円分の円売り・外貨買いを行うことが可能なのです。
 
ところが2008年の金融危機以降、今度は極端な円高になりました。世界各国が自国通貨の切り下げ合戦を激化させていることが原因です。FRBやECBがマネタリーベースを激増させていることは、国債などの資産を直接買い支えるという意味だけでなく、自国通貨が安いほど貿易で大きな利益を稼げる為、意図的に通貨安へ誘導させるという効果もあるからです。
 
そして世界で唯一、マネタリーベースを増やさない日銀のせいで、日本は円高に苦しめられることになっています。日本はGDPが欧米よりもより大きく減少しているのに、強烈な円高が襲っているという事実は、為替の基本とされる「国力に比例する」という理屈を真っ向から否定しています。
 
購買力平価説は、グスタフ・カッセルが1921年に発表した理論ですが、当時は国際的な資本移動はまだ少なく、現在とは経済の前提条件が違いすぎます。カッセルの時代には、円キャリートレードなど想像だに出来なかったことです。
 
天動説が地動説に改められたことと同様に、経済理論も時代の変化と共に訂正されるべきものなはずです。21世紀の世界経済は、為替レートは購買力平価説にも、国力比例説にも合致しない、新たな領域に入り始めたのです。」
 
竹中正治HP

 
本書はアメリカの最も知的で良質なリベラル派の立場から書かれたアメリカ経済史&精神史だ。
経済データが比較的信頼できる19世紀まで遡って俯瞰すると、アメリカ経済が順調な成長を遂げた時代には寛容と開放性、良心的な社会改良の思潮が興隆し、反対に経済成長が長く停滞した時代には差別と排他、デモクラシーから遠ざかる思潮が強まったことを、経済、文学、政治の知識を総動員して描かれている。

ただしこのパターンの例外は1930年代の大恐慌、大不況の時代であり、4人に一人が失業したこの空前の危機の時代には、この国家的な困難、問題を解決するための社会改革が実行され、それはその後の時代にも制度として定着した。この点で当時の大統領ローズベルトが高く評価されている。

著者の今日的問題状況への含意は明瞭だ。
戦後最大の金融危機と不況を経た今日、経済成長への悲観や経済成長それ自体への懐疑が唱えられている。しかし、筆者はそうした主張にはくみしない。本書の英語版は金融危機前の2005年に出版されたものであるにもかかわらず、本書を読む者は、「経済成長と社会正義のための改革に今こそ立ち上がろう」と鼓舞するメッセージを感じずにはいられないだろう。

著者はFRBのエコノミストも勤めた金融論を中心にしたマクロ経済学者(ハーバード大学教授)であるが、文学から政治に至るまでのその見識の広さと深さは驚嘆に値する。 私でもあと50年ぐらい勉強すれば、こういう文章が書けるだろうか、ははは、寿命が続かない(^_^;)

重厚な内容であるが、訳文は非常によく練り上げられており、実に読みやすい。
アメリカ社会の総合的な理解のために欠かせない1冊としてあげたい。
 
竹中正治HP

 

さてkimさんが知らせてくれた「くりっく365が中国元、韓国ウオン、インドルピーの取り扱いを始める」件です。
以下のくりっく365のサイトをご参照いただきたい。
 
 
「中国元が買えるなら、対ドルで買っておけば、間違いなく儲かるんじゃない?年間数%のテンポだけど中国政府は対ドルでの元の上昇を受け入れているからね」
 
そう考えた方は、危ない。 これは通常の為替相場市場ではなく、non-deliverable forward(以下NDFと記す)市場の相場による売買だからだ。
 
NDFとは以下のウキペディア(英語版)をご覧頂きたい。
 
「小難しくてわからん(@_@)」
こういうことです(以下)。
 
中国政府は(韓国政府もインド政府も)、自国通貨が世界の外為市場で自由に売買されることを嫌い、それを防いでいる。どうやってそれを防ぐか? 海外の銀行を含む非居住者が資金決済用の中国元口座を中国の銀行に保有することを禁止する、あるいは厳しく制限することで、それが防げる。なぜかというと、外為市場で元を売買した海外銀行(非居住者)は相手の銀行と元資金の受け渡し(決済)をする必要がある。
 
世界中どこでも交換性の自由なドルや円、ユーロなどであれば・・・例えば通常ドルを売買したら、その海外銀行は米銀に置いてあるドル口座を使ってドル資金の受け払いを行なう。 ところが元の場合は、海外銀行が資金決済用の元口座を中国の銀行に保有して決済することが許されないので、中国の外では決済を前提とした元の売買ができない。
 
そこで海外では、資金決済を前提とせず、期日に反対売買で損益だけ清算されるNDF取引しかできない。ところがNDF取引は、中国の外為市場からは切り離されているので、中国の外為市場から乖離した相場が形成される。
 
さらに元とドルの例で説明すると、NDFの先物相場はドルと元の金利差を反映した金利裁定相場が成り立たない。なぜなら、金利裁定による先物相場は元とドルの間の資金移動の自由を前提に成り立つのだが、資金移動の自由が規制・禁止されているので成り立たないのだ。
 
ではNDFの市場でどのように先物相場が形成されるかというと、例えば市場参加者の予想と売買需給の結果として、1年先のドル元相場は現在の相場よりも5%元高ということになれば、5%元高の先物相場となる。
 
そこでNDFをベースにしたFXトレードで、中国元を買うとどうなるか? 先物相場が金利裁定原理で形成されれば、今はドル金利より元金利が高いので、スワップスプレッド(ポイント)が受け取りになるが、金利裁定原理は働かないのでそうならない。
 
逆に1年間で5%元高という先物スプレッドから計算されたスワップポイントが適用されるので、元買い持高のキャリーはスワップ・ポイントの支払いとなる。 これを1年間継続すると、5%のスワップスプレッド分だけキャリーコストを払うことになる。
 
従って、例えば$1=6.4元で元を買って、1年間キャリーした時の持値(損益分岐点)は6.08=6.4×(1-0.05)になる。つまり1年後に市場の予想通り5%元高になっていても、あなたの儲けはゼロ、実際には直物とスワップポイントの売買幅だけ損になるだろう。 5%を超えた元高にならなければ、儲からないということだ。元高の変動が5%未満ならその分だけ損となる。
 
またNDFは以上の事情で市場の規模が狭隘で流動性も乏しいので、業者の提示する売買幅は広くなり、相場は値が飛びやすくなる。浅いストップロス注文などは簡単についてしまうかもしれないし、その執行レートもユーザーにとって悪いものになる可能性が高い。
 
以上、お分かり頂いただろうか。市場の世界に確実に儲かる「フリーランチ」はないということだ。
もしあなたが、FXトレードのユーザーであるにもかかわらず、以上の説明でも 「小難しくて良くわからん(@_@)」と思われたら、FXトレードから即刻足を洗いなさい。
 
竹中正治HP
 
追記:
くりっく365の「制度要綱」のスワップ・ポイントの項目には次のような「備考」がついている。
「(外為市場の相場次第では)必ずしもスワップポイントの受取、または支払いが左記の通り(高金利通貨の買いは受取、売りは支払)とならず、受取と支払が逆になることもある」
 
ははは、良くできた制度要綱だね。ちゃんと書いてあるじゃないか。
 
 
 

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