たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2011年12月

ユーロについてはずっと悲観的な見方をしてきたので、100円割れに意外感は全くない。むしろここまで下がるのにこれだけ時間がかかったのが不思議。中国などが外貨準備でドルからシフトして買い続けていたのだろう。さぞや評価損が膨らんでいることだろう。
 
ここからさらに下がるが?分析的な作業はしていないが、直感的には時間をかけて、まだ下がると思う。
リピーターの方には既にお馴染みの国際通貨研究所のサイトのPPPを下抜けるほど下がったら、ちょっぴり買ってみようかという程度に考えている。
 
「ECBが国債を買い取れば欧州国債は安定するでしょうが、国家債務は伸び、好景気のサイクルで企業貸し出しも伸び、ユーロの広義流動性は増加して、むしろユーロ安要因になるのではないでしょうか」(marさんのご質問)
 
12月21日にECBが実施した4890億ユーロの金融機関への融資、これは6割前後が既存の借り換えらしいが、残りは新規融資で、イタリア国債でもスペイン国債でも担保にして3年間1%の金利で貸してくれる。私が欧州の銀行の経営者だったら、利回り6~7%のイタリア国債やスペイン国債を買いまくって、それを担保にECBから全部借りる。
 
国債とECB融資の裁定取引で5%も利鞘がぬけるなんて、未曾有の裁定取引チャンスじゃないか。円換算10兆円でやれば、年間5000億円も儲かる! 
 
そう考えれば、このECB融資の本質がわかるだろ。
 
ECBが直接国債を購入することは頭のカチンコチンのドイツが許さないので、代わりに銀行に「買った国債担保で融資してあげるから、国債を買いなさい」と言っているのだ。
 
銀行に莫大な利鞘収益が落ちるので銀行への支援にもなる。銀行支援とPIIGS国債買い支えの一石二鳥の名案だ。 年明けに以降に第2弾、代3段と繰り返すかもしれない。
そうなるとすると、ECBが民間銀行を通じた迂回的な手口で、マネタリゼーション(中銀の国債購入による通貨増発)を始めたとも言える。
 
その為替相場へのインプリケーションは米国のQE1,QE2と同じで、通貨安(ユーロ安)だ。
 
「金融取引はゼロサムのはず。銀行が得る裁定取引の利益、その見合いに生じるコストは誰が負担するのか?」
そのコストの一部は既存のPIIGS国債を暴落した価格で売ってしまった投資家の損が見合いになっている。
また、既存国債の保有で評価損を抱えている銀行は、この裁定取引のキャリー益で評価損を相殺することになるかもしれない。
このオペレーションで将来インフレが上昇すれば、インフレタックスとして国民が広く負担する分も出てくるかもしれない。
 
ああ、いいなあ、私もできることならECBから1000億円ほど借りて、イタリア国債を買いたいなあ・・・(^_^;)
1年間で50億円も儲かるぞ。
 
追記(1月6日)
本日1月5日付のFT記事
Europe’s banks rush to sell bonds
Europe’s banks have started the new year by rushing to sell their bonds to investors, in an
early attempt to replace the hefty amount of financial debt due to mature this year.
The region’s lenders face an estimated €700bn wall of debt that needs to be refinanced
this year, with most of that falling in the first-quarter of 2012. Last year banks managed
to sell €426bn worth of debt in the first half, according to Dealogic data, but issuance
slowed to €126bn in the second half because of ongoing eurozone turmoil. If lenders
can’t refinance the maturing debt, they are likely to have to shrink their balance sheets
– increasing the probability of a credit crunch and recession.
ははは、どうやら裁定取引ができる余裕のある銀行は極めて少ないようですね。
ECBが期間3年、5000億ユーロ級の供給をあと3回程度繰り返さないとおさまらないのかも・・・。
 
 
 
 
 
 
 

昨日のWSJの記事、悲観一色だった米国の住宅市場に変化が出て来た気配だ。
*********
Big money is starting to wager on housing. Dec.29.2011 WSJ
Hedge funds run by Caxton Associates LP, SAC Capital Advisors LP, Avenue Capital and
Blackstone Group LP have been buying housing-related investments, betting on
a rebound. And formerly bearish research firm Zelman & Associates now predicts
a housing pickup, as does Goldman Sachs Group Inc.
 
Other investors seem to be making the same bet. Shares of home builders are up 30%
since the end of the third quarter, as measured by the Dow Jones index tracking those
shares, topping a nearly 10.5% gain for the Standard & Poor's 500.
 
"We turned bullish on housing. A rebound is coming," says Andrew Law, chief investment
officer at $10 billion hedge-fund firm Caxton. He expects that home prices and
construction will rise in 2012.
 
"The housing-price bottom is probably in sight," Goldman said in a
December 15 report.
Housing prices might decline by 3% next year before beginning a rise, Goldman says.
The bank predicts gains of 30% over the following 10 years, not taking inflation into account.
 
Some investors and market observers aren't convinced of an imminent turnaround.
Still, investors try to anticipate economic trends before they materialize. Even some
housing skeptics acknowledge that real estate may no longer be the drag it has been
on the economy.
********
もちろん見方は悲観と楽観に分かれている。そりゃそうだ。転換点というのはそういうものだ。楽観派が多数になってしまったら、相場はとっくに舞い上がっているはずだからね。
 

私の運用資産の半分は都心部のマンションであることは、以前も書いた通り。
 
もちろん銀行から金を借りて、1998年に始めたのが最初だ。2002年のピーク時には投資額1億円、うち7割借入というレバレッジ(レバレッジ比率2.3倍)だったが、2007年夏に米国でサブプライム危機が勃発したので、1998年に買った一番旧いマンション(六本木)を売りに出した。
 
このマンションが購入価格より高く売れた。2006年まで不動産に日本でもラッシュしていた外資系投資家は当時急速に引き始めていたが、国内の事業者や実需投資家の買いが強かったので、高く売れたんだな。
 
ローンは10年で短めに設定していたので、9年経過した時点で借入元本は極めて小さくなっていたので、売却でできたキャッシュで他のマンション2件のローンも返済してしまった。その時点で借金ゼロになった。
 
2009年に京都に単身赴任することになり、最初は賃貸マンションに住んだが、不況で民事再生法を申請したデベロッパーが京都の二条城前のグッド・ロケーションに在庫処分(前年完成未入居物件)の破格の安値で一棟丸ごと売りに出したので、「賃料よりも安い」と判断して、1戸買い、今住んでいる。この時は銀行を退職したので、退職金キャッシュがあったので、現金で買った。
 
2009年を底に中古マンション価格はやや回復基調となったが、家賃が下げ基調で、投資リターンは下げ基調、そのためマンション投資は2009年を最後に既存物件のみ維持の状態となった。
 
しかし債券利回りが内外超低空飛行で、株式も冴えない状態で、投資のパフォーマンスを上げるにはどうしたら良いか、ずっと考えて来た。 
 
以前説明したライフセツメント・ファンドは円ベース10%のリターンで走ってくれているが、既に2000万円つぎ込んでいるので、さらに買いますのもちょっと集中し過ぎで「漠然とした不安」がないわけじゃない。なにしろ、毎月運用報告書はもらっているけど、実際の運用の中身は自分自身では見えないからね。
 
そんなことを考えていたら、築6年の物件で(新中野駅徒歩5分)、月間賃料15万円、40平米のマンション物件がとびこんできた。 坪単価200万円を割れる価格だ。管理費・修繕費の経費差し引き後ベースでネット賃料は7.0%となる。賃料の設定も決して現状割高ではない。
 
さて、この物件を2300万円で買い、15百万円を借入れ(金利2.5%)、8百万円自己資金とすると、自己資金に対するリターンは投資スタート時でいくらになるか?
 
正解は15.4%
 
もちろん、長期で保有するので空室期間が多少は生じる。また返済が進むとレバレッジ比率が下がるので、返済完了時にはリターンは15.4%から7%まで下がる。だから15.4%はスタート時の最大リターンである。
 
う~ん、やはり株式不振の時は、インカム・リターンが頼り。しかしインカム・リターンを上げるためにはレバレッジ
が必要だね。 ということで、マンション・レバレッジ投資再開ということにした。ただいま複数銀行に借入れ金利を打診中、私の希望は当初5年間固定金利で2.5%以下、おそらく出てくる。
 
ところでこの物件、築浅物件なのに、なんで安く売りに出て来たか? 投資目的で新築で買った方が購入価格フルの借り入れで買い、しかも同様に複数物件に手を広げたために、空室時に借入れを返済できなくなり、銀行からの要請で「任意売却」ということになったので価格が安めなんだ。
 
マンション投資をする個人は増えたようだが、頭金も十分に用意せず、新築プレミアムの乗った価格で買っているような方は、絶対に成功しない。そういう賢くない(非合理的な)投資家が破綻して、安く売りに出てくることは、投資のチャンスでもある。
 
業者は既に購入し、それを私に転売するので、業者はもっと安く仕入れていることになる。交渉して4%ほど値引いてもらうことにしたが、それでもちゃんと業者は利幅を確保できている。こういう物件を仕入れてくること自体、手間暇とコストがかかるから、お気楽&片手間のエンド・ユーザーとしてはこの程度の価格で手を打つのが妥当だろうか。
 
マンション投資の秘訣については「なぜ人は市場に踊らされるのか」にも詳しく書いてありますので、ご関心のある方は、ご購読ください。
 
竹中正治HP
 

さて、のりたまさんの毎月分配型投信に関するご意見を検討してみよう。
 
「毎月分配型の合理性は、天井圏での利確であり、暴落時に自然とキャッシュポジションが高まっていることで、マイナスの複利を防げます。底値で分配金を再投資すれば、かなりの複利がえられます。税金をも無視していいくらいに。これが合理的説明かと。分配金を浪費する前提で考えるから非効率と考えてしまうのです。実際にいまの局面は、インデックスを上回っていますよ。ここからの浮上は、どれだけ投資できるかにかかってはいますが。 」
 
「どんな投資も相場前提をどう捉えるかが重要です。年に数回ある暴落があるから毎月分配型が有利になることがあるのですが、暴落がない相場なら非効率であることにかわりはありません。たまたま、今の情勢に合っていたというべきでしょうか。あと中期で投資は捉えてます。運用スタイルも重要ですね。効率だけで投資は語れません。また日本株式など常に乱高下するようなものはむいていません。投資対象も有利不利に関係しますね。 
 
1、まず原理的に考えてみよう
現在の株式や外貨債券のように下げ相場が中期的に持続している場合は、定期的に生じる配当を再投資に回すよりも、キャッシュとして留保しておいた方が、リターンは高くなる。なぜなら、下げ相場だから再投資すればその部分も評価損を出す一方、現金にしておけばその部分は評価損を生じないからだ。
 
上げ相場が持続する場合は、ちょうどその反対で、配当は源泉税を払わずに再投資した方がリターンは上がるので、毎月分配型のリターンは相対的に悪くなる。
 
のりたまさんが言うような、短期的な上下動の幅が大きい相場環境で、ファンドマネジャーが短期的な上げ局面で(分配金確保のために)一部を利食う行動に成功していると仮定するならば、機械的に配当部分を再投資するよりも、毎月分配型の方のリターンが税金コストを勘案しても相対的に高くなる可能性がある。
 
ただし、本当にファンドマネジャーがそうした短期的な高値圏で売るような投資行動に成功しているかどうかは、個別のファンド毎に実態調査でもしてみないとわからない。直感的には私はちょっと懐疑的だが、検証はできていない。
 
長期的には上げ局面も下げ局面もあるが、名目株価は趨勢的にはマクロの企業収益の増加を反映する程度に上がっていくことを想定するなら(インフレ率がプラスの世界の想定ですね)、やはり配当は税金を払わずに、再投資に回す方がリターンは高くなる。
 
ところが日本株は過去20年間にわたり大局的には下げトレンドという状態、外貨債券投資も2007年以降は円高で円ベースで下げトレンド、そういう下げトレンドの中で「将来も下げだ」という予想が強くなった現在、完全に諦めた投資家は株式も外貨債券も、投信から撤退している。実際、投信残高は解約超過で減少しているからね。
 
一方、諦めきれない投資家は、長期的なキャピタル・ゲインは諦めても、配当によるキャッシュ獲得(見た目のインカム・ゲイン)志向を強めている。その結果、毎月分配型に誘引されている面がある、というように理解することが可能かもしれない。
 
そういう意味では、のりたまさんが、相場の上げでキャピタルゲインが期待できない現在の相場環境を前提に、「たまたま、今の情勢に合っていたというべきでしょうか」とコメントしている点は私も同意できる。
 
ただし長期投資に徹し、投資の合理性も長期をベースに考えるとすると、毎月配当型は市況が総悲観の中での一種の「あだ花」だと思う。 
 
また、毎月配当型を買う投資家の多くが、のりたまさんのように配当キャッシュを溜めて、底値買いのチャンスを狙っているとは思えないな。
 
2、リターンの比較検証ができるか?
次に、毎月分配型と非毎月分配型の実績リターンをモーニングスターのサイトで実際に比較してみようと思ったが、これが困難であることがわかった。以下サイト
 
モーニングスターは最近、毎月分配型のみを抽出検索できるカテゴリーを設定したが、同社の示す過去の実績リターンは配当を全て再投資した前提で計算されているので、配当をキャッシュとして蓄積した場合のリターンがわからない。
 
ただし国内株を対象にした毎月分配型の投信の過去1年間の総合投資リターンは‐20.7%で、国内株式インデックス型(TOPIXや日経225)のリターン-13%~14%よりかなり悪い。
 
もっとも毎月配分型の多くは海外債券投資が対象だ。ところが、海外債券投資については、TOPIXやS&P500などの株式指数のように比較対象できる適当な指標がないので、市場全体よりパフォーマンスが良いのか悪いのか、評価が困難だ。 
う~ん、残念だな。この点、比較参照できる適当な指数がないかどうか、もうちょっと探してみようかなと思う。
 
 

なぜか反響の大きかった投資信託の実態について、寄せられたコメントのご意見も含め、もう少し丁寧に各論を議論してみよう。
 
1、投信の手数料とネットリターン(手数料差し引き後の年率リターン)の関係
これについては私は2007年以降、これで4回目の点検をしている。著書「資産運用のセオリー」(2008年)や日経ビジネスオンラインでも図表を掲載して説明したことがあるので、ご覧になった方もいるだろう。今年12月に行なった4回目の点検結果を以下に掲載した。
 
モーニングスターのデータを使って、国内株式を対象にした純資産200億円以上の投信を対象にしたものだ。結果は、過去4回と同じで、年率換算された手数料の高い投信ほど、手数料差し引き後のネットリターンは悪い。 
 
一番上の図は過去5年間のネットリターン、2番目は過去5年間のグロスリターン、3番目は過去10年間のネットリターンを縦軸にしてある。横軸は年率換算した手数料(購入時手数料と信託報酬の総合、購入時手数料は期間で割って年率換算してある)である。
 
現在は株価が落ち込んでいる時期なので、リターンがみなマイナスであることはある意味でやむを得ない自然な結果だが、手数料率の高い投信ほど、ネットリターンは悪い。また比較的リターンのベターな投信はみな日経平均やTOPIXに連動するインデックスファンドであり、手数料率は低い(図表の左に分布している)。
 
要するに、ファンドマネジャーの銘柄選定にコストを払っても報われず、手数料のコスト分だけネットリターンは悪化するという事実は明瞭だ。 5年より10年になるとその傾向(手数料率とネットリターンの負の相関関係は一段と強まる)。
 
ある期間を特定して、株式全体は平均よりリターンの高い銘柄グループAと、平均よりリターンの低い銘柄グループBに分けることができる。 もし投信マネジャーが多少でもB群を外してA群の銘柄を選ぶことができるなら、投信のリターンの分布は市場平均リターンより多少なりとも高くなるはずである。
 
ところが、手数料を差し引く前のグロスリターンで見ても(2番目の図)、僅かならが近似線は右肩下がりで、負の相関関係がみられる。すなわちファンドマネジャー全体として見ると、猿がダーツを投げて銘柄を選定しているのとほぼ同じか、あるいはそれよりも悪い成果しか出ていないというバートン・マルキール先生(著書「ウォール街のランダムウォーカー」)が強調されている事実が日本でも確認できるということだ。
 
2、「高手数料ファンドの中にも、相対的に高実績のものがあるので、それを選べばよいのではないか?」
当然、そういう意見が出てくる。残念ながらモーニングスターのデータは、直近5年とその前の5年のデータを比較することができない。しかし、この点では米国で沢山の実証調査があり、その結果「ある時期にリターンの高かったファンドが、次の時期にもリターンが高いという相関関係は観測されない」。これも
「ウォール街のランダムウォーカー」で強調されている。
 
3、「手数料の安い投信は間違いなくパッシブ運用ですが、これはアクティブ運用に対してフリーライドを行っている面があることも重要です。ETFが拡大してアクティブ運用が廃れていけば、何らかの形でパッシブ運用のコスト(目に見えるものではないでしょうが)は高まっていくものと思われます」
これはyasuさんのコメント。みんながインデックス投資しかせず、銘柄選定をしなくなれば、パフォーマンスの悪い銘柄が淘汰されなくなり、市場全体が非効率化するのではないかという意見で、これもよく言われる点だ。 
 
私も(マルキールやボーグルも含めて)銘柄選定を否定しているわけではない。むしろ市場参加者の多くが、人より高いリターンを求めて、その時に利用可能な情報を最大限利用して銘柄選定に励む結果、市場の効率性は実現されるわけだから、銘柄選定を行なうアクティブ・ファンドにも生き残る生存領域があると思う。
 
ただし、紹介したモーニングスターの報告書は金融機関の営業が、相対的にコスト・パフォーマンスの高いファンドよりも、最終的なパフォーマンスが悪くて手数料が高いだけのファンドや、自社系列の投信の販売ばかりに傾斜し過ぎており、ユーザーの利益がないがしろにされている点を、批判・警鐘しているわけだ。私も同意見だ。
 
タカさんのコメント「日本株アクティブファンドにも投資家本位のファンドが登場してきた」というのが、今後広がるならば、投信業界にもまだ救いはあるかもしれない。
 
4、「一見、非合理的な行動を取っているかのように見えて、それが実はある制約条件下では合理的な行動であることがある、という事例は経済学が豊穣に教えてくれるものでありますが、この投信に関する問題もそのようなものだと思います」
yasuさんのコメント、具体的にどのような「制約条件下の合理性」なのか語っていないのでわからないが、毎月分配型の投信がその商品的な非合理性にもかかわらず売れてしまうのは、行動経済学が語るヒューリスティックなバイアスが投資家に働いていると考えると理解できる。
 
例えば、人間は毎月分配されるキャッシュという確定した利得に過敏に反応し、将来価格が下落する可能性(実は必然性)には鈍感であるというバイアス、あるいは知的に訓練されていない人間の効用感覚の時間割引率は、双曲線型である傾向が見られ、その結果、将来の大きなリスクよりも目先の小さなキャッシュの受取りに誘引されるという解釈なども成り立つ(後者の解釈は山崎元さんもどこかで書いていたことがある)。
 
毎月配分型の異常人気の背景として、もうひとつ私が思うのは、やはり年金不安の故に年金型のキャッシュフローが欲しいという気持ちが強く働いているのだろう。
 
そういう意味で、毎月分配型が人気であることを「合理的に解釈する」ことは可能だけど(「予想通り非合理」ってやつだね)、それを選択してしまうこと自体は、やはり資産形成としては非合理的な選択で、目的である効率的な資産形成に失敗するとしか言いようがないね。
 
竹中正治HP
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このブログのリピーターの方は手数料の高い投資信託などバカバカしくって買わないだろうが、そういう方は決して世間の多数派ではないので、改めて書いておこう。
 
梅屋敷商店街のランダムウォーカーさんのブログで紹介されていたので知ったのだが、金融庁の金融審議会に報告されたモーニングスターの報告資料が、手数料の高い投資信託の販売ばかりに傾斜する同業界の問題点を良く浮き彫りにしている。
 
以下は金融庁の掲載サイト
梅屋敷商店街のランダムウォーカーさんの本件紹介のサイトは以下の通り。
 
本当にじいさん、ばあさん騙して、手数料の高い投信ばかり売り込み、ユーザーを食いもんにしていると、しまいにこの業界滅びるぞ。実際、上場ETFが種類を拡大したおかげで、分散投資なら手数料の遥かに安いETFで間に合う。 
 
投信自体の役割は事実上終わっていると私は思う。ただ「ETFってなんじゃ?」という人々が沢山いて、彼らが金持っているおかげで、食いものにされているだけだ。
 
私は大学の演習(基礎演習)では、モーニングスターのデータを使って、手数料の高い投信ほどネットリターン(手数料差し引き後のリターン)が低いことを学生諸君に実習させている。「この世には知らなければカモにされる、騙されることが沢山あるんだぞ。だから勉強が欠かせないんだ!」と教えている。
 

来年のリスク・ファクターはユーロ圏のソブリン・リスクと中国の不動産バブルの破裂とそのネガティブ・インパクト、これは11月に参加したワシントンでのエコノミスト会合でも、ほぼ一致する見解だった。 12月になって事態の進展はますますそう感じさせる。
 
以下はFTの記事
Hedge fund alarm bells are ringing over China Dec.19.2011
As the Emerging Sovereign Group, a $1bn hedge fund backed by Julian Robertson and
half owned by Carlyle, one of the world’s biggest private equity groups, told its clients
in a recent note:
“we have a gathering sense that the next act of this rolling global debt crisis may well
play out in the East (China).”
The biggest worry most have of China is not just a manufacturing slowdown,
however,but the popping of a massive credit bubble, finding accurate data
on which is even more difficult.
 
欧州については以下のFT記事を引用しておこうか。
ECB warns of global contagion risks Dec.19.2011
“Contagion of euro area sovereign debt strains remains the most pressing risk for
financial stability in the euro area, the European Union and even across the globe,”
said the ECB’s latest eurozone financial stability review, released on Monday.
 
しかしECBの警告は、私には笑止千万に感じられる。大規模な国債買い取りを宣言して実行することで、ソブリン危機に短期的にもっとも有効な手を打てる立場にいるECBが、「それは私達の本来の仕事ではない」と背を向けているからだ。 
 
この点の事情は日経ビジネスオンラインに11月に書いた通りだ。
 
もちろん、ユーロ圏の財政規律の再構築によってPIIGS諸国が国債の信任を回復することが最終的に不可欠だが、不況下でそれを短期的・急激に実行すれば不況が深刻化するのは明らかだろう。だから短期的にはECBが国債を大規模購入し、投機筋の売りをひっくり返し、時間をかけて長期的に財政再建を進めるするしかない。
 
ECBによる国債買い上げという短期の処方箋抜きで、財政債券のみで対応するというのは、麻酔無しで手術をするようなものだ。患者は出血と痛みでショック死するかもしれん。すなわち経済不振を理由に国民の不満が高まり、政権は倒壊するだろう。 そして政治的な混迷がますます財政再建を難しくする。
 
第1次世界大戦も第2次世界大戦も、つきつめて言えば、西欧が当時の国家的な利害対立の調整に失敗した結果だったことを思い出さずにはいられない。
 
もっともユーロ圏が土壇場で妥協し、劇発性の危機を回避する可能性も残っていると思うが、楽観できないな。
 
竹中正治HP
 
追記:12月23日付け日経新聞、カルロス・ゴーンがこう言っている。私もそれが望みえる2012年のベストシナリオだと思う。
「――12年はどんな年になるでしょう。」
「欧州が最大のリスク要因であることは間違いないが、他の地域は意外に明るいのではないか。欧州が世界に悪影響を与えるというよりも、そこだけがマイナスで他から取り残されるというイメージだ。実は今年の世界の新車販売は約7500万台に達し、過去最高を塗り替えそうだ。12年もやはり200万~300万台増えると予測している。日本や米国は一定のカーブで回復し、新興国市場も伸びる。一言でいえば『モデレート・グロース(そこそこの成長)』の年になると思う」
 
 
 

昨日書いた「日本の株式、なぜそんなに悲観しているのか?」には、本ブログのコメント・リピーターの方々とコメント初の方がいろいろ寄せてくださいましたね。日本の株式市場の現状は、確かにフラストレーションのたまるものです。 
 
米国市場については、S&P500で見ると、昨年末が1257ドルで越年、今の相場は1200ドル台前半ですから、まあユーロ圏ソブリン危機と中国不動産バブル崩壊で、世界経済はどうなるかとこれだけ揺れている状況で、年末ベースでほぼフラットなら上々じゃない?と日本人の私は感じてしまいます(プラス配当平均2~3%もあるしね)。
 
しかし米国はやはりマイルドインフレの国ですから、「フラットでは不満じゃあ、フラストレーションがたまる」というのが投資について右肩上がり信仰の壊れ切っていないアメリカ人のセンチメントのようです。
 
昨日のWSJ記事の以下の記述は現在12月の米国市場の感触を端的に要約していると思います。
"We're getting good news out of the U.S., bad news out of Europe and holding our
breath on China," said Jeanie Wyatt, chief executive at South Texas Money
Management, with $1.8 billion in assets under management."
 
年の瀬ですから、今年1年間の私のポートフォリオをふり返ってみましょうか。今年の株式の不振を底支えしてくれたのがインカム・リターン期待のセグメントです。
 
その1:マンション投資
依然として純運用資産の約半分はこれです。賃料は過去3年ほど下げ基調、テナントが入れ替わり、一部賃料の引き下げを余儀なくされましたが、契約更新については「賃料不変」で押し切りました(^_^;)。 
 
賃料が下げ基調の割には都心の中古マンション価格は底堅いです。でもその結果、新たに物件を買っても投資リターンは以前より下がっています。経費差し引き後で4~5%程度でしょうか。これじゃ流動性の違いを考えればREITの方がまし・・・という程度。
 
私のホームページで更新している「マンション価格指数/賃料指数」のグラフを見て頂くとわかる通り、
PRR(price/rent ratio)で示したグラフは上がってしまって2010年以降「マンション価格は賃料との比較で割高」となっているのがわかります。 
 
でも、価格変動にぴくぴくと神経を疲れさせないで、チャリンチャリンと賃料口座に毎月たまっていくインカムはポートフォリオだけでなく、心理的にも安定化効果があります。
 
もちろん、マンションは老朽化により価値が減耗します。新築プレミアムの剥脱部分を除いても年率減耗率(法定減価償却ではなく実態ベース)は、年率平均で2%程度でしょう(東京都区部のサンプル・データで実際に計測してみました)。
 
経費差し引き後リターン5%から老朽化減耗率2%を引くと、税引前でも3%しか残らない?平均的にはそうなります。ただし不況の時に買って好況の時に売るとことで、この減耗分をほぼチャラ、運が良ければ多少のキャピタルゲインにできると思います。また借り入れでレバレッジをつければ、自己資金に対する投資リターンはぐんと上がります。
 
「思います」というのは、私は2007年に売ってそれを経験したのでほぼ確信しているのですが、所詮それも過去のこと、未来は不確実ですから、「絶対大丈夫」は無しです。
 
2、ライフセツルメント・ファンド(LFファンド)
ご存じない方がほとんどでしょうが、以下ウキペディア(英語)の解説をご参照ください。
生命保険の中途解約すると二束三文の解約金しか生保は払ってくれませんね。これはどこの国でも同じです。
米国では生命保険の第3者譲渡が合法なので、ファンドは解約希望の保険者から二束三文より多少高い価格(でも期待余命などをベースに算出する期待値よりは低い価格)で保険を購入し、保険者が死ぬと保険金をファンドが受け取り、投資家に配分する投資スキームがあります。
受取り生命保険金はインカムなのか、キャピタルゲインなのか、会計分類上の問題はわかりませんが、大数の法則に基づいた一種の裁定取引(保険の購入価格と期待理論値の価格差の裁定)と言えます。
 
私はTranen Capital(以下サイト)が運用するLFファンド(ドル建て)を為替ヘッジで円ベースにしたファンド(日本で国内販売)を2009年に2000万円買いました。
投資期間2年半サイクルで、ドルベースでは年率17~18%のリターンがありますが、為替のヘッジコストと日本の管理会社(証券会社)の2%手数料など引かれてしまいます。それでも年率約10%のリターンを上げてくれていますので、私のポートフォリオ全体の底支えになってくれました。
 
「そんな良いもんがあるなら、どうして教えてくれないのか?」 
私としては特定の投資商品の方棒を担いでいるように思われるのは嫌なので、ほとんど紹介しませんでした。
あるいは「本当なら投資家が殺到するだろう?」と思われるでしょうか?
実際、日本の年金などが買い始めているそうです。それでも、日本の投資機関は総じて新種のスキームやリスク(なんらかのリスクがあることには変わりない)には怖気づいているようで、バンバン売れる状況ではないようです。
 
竹中正治HP
 
 
 

掲載した最初の図表は日本の株式指数TOPIXと全産業の経常利益(除く金融機関)の推移だ(+ボタンで拡大してみてください)。2008年のリーマンショックから企業の経常利益は比較的急速に回復したのに、なぜか株価はそれほどに回復せず、2009年後半以降は停滞している。
 
2番目の図表は経常利益の変化率(前年同月比)とTOPIXの変化率(前年同月比)を四半期ベースでとって、散布図にしたものだ。当然、経常利益の増加(減少)→TOPIXの上昇(下落)という因果関係をベースにした相関関係がある。
 
ところが、2009年後半以降の赤い楕円で囲った部分は、過去の相関関係からの乖離が見られる。経常利益が回復したのに、それに見合ってTOPIXが回復していない。ちなみに、2009年後半以降を除いて相関係数を測ると、相関係数(R)が目立って上昇する(3番目の図)。つまり2009年後半以降、株価と経常利益の間の相関関係が崩れてしまっているわけだ。
 
これはなぜだろうか?考えられる理由(解釈)は以下の通り。
 
理由1、経常利益は財務省の法人企業統計からとったものだが、長いデータ系列は金融業を除くものでしか利用できない。法人企業統計が金融機関のデータを含めるようになったのは近年だからだ。ところが金融機関の株価の下落が2009年以降著しい。その結果、金融機関の株式を含むTOPIXと金融機関を含まない経常利益の乖離が大きくなっている面がある。
しかし、それだけではこの相関関係の変化のごく一部しか説明できない。
 
理由2、今期2010年はともかく、投資家の来年に向けた見通しがひどく悲観的なため、足元の利益は回復しても株価が上がらない。株価が織り込む利益とは実現された過去の利益ではなく、見通せる将来の利益だから、そういうことならつじつまは合う。この解釈が正しいなら、日本の株価は来年に世界経済が再度不況に突入し、日本も再度景気後退になることを織り込んでいることになる。
たしかに、ユーロ圏ソブリン危機が一段と深刻化し、中国でも不動産バブルで不況ということになれば、その予想は実現してしまう。
 
しかし、一方で米国の株価指数S&P500は、米国企業の収益回復を反映した程度には回復しており、停滞著しい日本株とは異なる。リスク要因は依然あるものの、米国景気自体には底堅さが戻って来ている。
一方、欧州のソブリン危機は「連続ドラマ化」しており、欧州景気の低迷は持続するだろうが、劇発性のショックは回避されそうな可能性が出てきている。
 
ふ~ん・・・日本株が来年の世界景気不況再突入を織り込んでいるなら、実際にそのシナリオが実現しても下げ幅は相対的に小さいかもしれない。反対に、世界景気の持ち直しが実現した場合には、日本株は割安感からぐんと上昇するかな??? まあ、あまり期待を膨らませずに、「禁欲的期待」という程度にしておこうか。
  
 

著者の本を読むのはこれが3冊めだ。
これまでに読んだのは「生物と無生物のあいだ」「動的平衡」。
 
 
著者のメッセージに従って読む限り、著者が追究しているテーマで一番挑戦的な部分は、遺伝子の突然変異と自然淘汰による適応的な変異の蓄積として進化を説明するダーウイン以来の進化論に関して、それを肯定しながらも、それでは足りない部分を感じ、生命を生命たらしめている第3の仕組みを解明しようとしていることだろう。

遺伝子の突然変異と自然淘汰は、ゆっくりと漸進的に蓄積される変化をもたらすが、それでは例えば「カンブリア爆発」のような急速かつ爆発的な多様な種の進化を説明できないと言う(p52)。またチンパンジーと人間の遺伝子の差異は2%だが、この2%の違いでは人とチンパンジーの相違を説明できないと筆者は言う(p207)。

その視点から本書では「エピジェネティックス」というフロンティア的な研究分野を紹介している。「遺伝子の外側で起きている」ことが実は個体発生上、種の重要な相違を生み出しているという学説だ。遺伝子の構造と当時に、遺伝子のスイッチがオン・オフされるタイミングの相違で実際に形成される形態の大きな違いが生まれる。そして遺伝子活性化のタイミングを制御する仕組みが、親から子に受け継がれる点に注目するのがエピジェネティックスの視点だと言う。

その仕組みはまだ解明の糸口段階にあるようだが、卵細胞に含まれている遺伝子以外の物質(マターナルRNA)やDNAの糸を規則正しく巻き上げるタンパク質などが係っていることがわかってきていると言う(p214)。
また大腸菌がプラスミッドというDNAの小片を他の大腸菌に渡すことで、環境適応的な変異を急速に遂げることなども、実に興味深い(p146)。

私は生物学も進化論も専門ではないが、リチャード・ドーキンスの著作やSJグールドの著作などを楽しんできた。福岡伸一氏も、語りの巧みさと、話題の豊富さ、発想力の奔放さで、彼らに並ぶ書き手だと思う。
 
竹中正治HP

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