ユーロについてはずっと悲観的な見方をしてきたので、100円割れに意外感は全くない。むしろここまで下がるのにこれだけ時間がかかったのが不思議。中国などが外貨準備でドルからシフトして買い続けていたのだろう。さぞや評価損が膨らんでいることだろう。
ここからさらに下がるが?分析的な作業はしていないが、直感的には時間をかけて、まだ下がると思う。
リピーターの方には既にお馴染みの国際通貨研究所のサイトのPPPを下抜けるほど下がったら、ちょっぴり買ってみようかという程度に考えている。
「ECBが国債を買い取れば欧州国債は安定するでしょうが、国家債務は伸び、好景気のサイクルで企業貸し出しも伸び、ユーロの広義流動性は増加して、むしろユーロ安要因になるのではないでしょうか」(marさんのご質問)
12月21日にECBが実施した4890億ユーロの金融機関への融資、これは6割前後が既存の借り換えらしいが、残りは新規融資で、イタリア国債でもスペイン国債でも担保にして3年間1%の金利で貸してくれる。私が欧州の銀行の経営者だったら、利回り6~7%のイタリア国債やスペイン国債を買いまくって、それを担保にECBから全部借りる。
国債とECB融資の裁定取引で5%も利鞘がぬけるなんて、未曾有の裁定取引チャンスじゃないか。円換算10兆円でやれば、年間5000億円も儲かる!
そう考えれば、このECB融資の本質がわかるだろ。
ECBが直接国債を購入することは頭のカチンコチンのドイツが許さないので、代わりに銀行に「買った国債担保で融資してあげるから、国債を買いなさい」と言っているのだ。
銀行に莫大な利鞘収益が落ちるので銀行への支援にもなる。銀行支援とPIIGS国債買い支えの一石二鳥の名案だ。 年明けに以降に第2弾、代3段と繰り返すかもしれない。
そうなるとすると、ECBが民間銀行を通じた迂回的な手口で、マネタリゼーション(中銀の国債購入による通貨増発)を始めたとも言える。
その為替相場へのインプリケーションは米国のQE1,QE2と同じで、通貨安(ユーロ安)だ。
「金融取引はゼロサムのはず。銀行が得る裁定取引の利益、その見合いに生じるコストは誰が負担するのか?」
そのコストの一部は既存のPIIGS国債を暴落した価格で売ってしまった投資家の損が見合いになっている。
また、既存国債の保有で評価損を抱えている銀行は、この裁定取引のキャリー益で評価損を相殺することになるかもしれない。
このオペレーションで将来インフレが上昇すれば、インフレタックスとして国民が広く負担する分も出てくるかもしれない。
ああ、いいなあ、私もできることならECBから1000億円ほど借りて、イタリア国債を買いたいなあ・・・(^_^;)
1年間で50億円も儲かるぞ。
追記(1月6日)
本日1月5日付のFT記事
Europe’s banks rush to sell bonds
Europe’s banks have started the new year by rushing to sell their bonds to investors, in an
early attempt to replace the hefty amount of financial debt due to mature this year.
The region’s lenders face an estimated €700bn wall of debt that needs to be refinanced
this year, with most of that falling in the first-quarter of 2012. Last year banks managed
to sell €426bn worth of debt in the first half, according to Dealogic data, but issuance
slowed to €126bn in the second half because of ongoing eurozone turmoil. If lenders
can’t refinance the maturing debt, they are likely to have to shrink their balance sheets
– increasing the probability of a credit crunch and recession.
ははは、どうやら裁定取引ができる余裕のある銀行は極めて少ないようですね。
ECBが期間3年、5000億ユーロ級の供給をあと3回程度繰り返さないとおさまらないのかも・・・。