たけなかまさはるブログ

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2013年06月

今年の5月以降、国際的なマネーフローの動向は乱気流局面に入ったようだ。具体的にはエマージング諸国から流出する資金フローが増えており、それがこれら諸国の対ドルでの通貨安、株価下落を引き起こしている。
 
まず為替相場を見ると、ブラジル、メキシコ、インド、ロシア、マレーシア、タイ、オーストラリアなど昨年まで海外からの資金流入が強すぎることが問題になっていた諸国の対ドル為替相場が今年の5月頃を境に下落している。管理相場の色彩が強い人民元ですら直近が上昇基調が止まった。(以下サイトで確認できる)
 
これら諸国の為替相場の下落にほぼ並行して株価も下落に転じている。
そうした動きを一括りにしてみるためには、以下のエマージング諸国の株価指数であるMSCI-Emerging(ドル建て)のチャート適当だろう。5月から下落に転じている。
https://www.google.com/finance?q=EEM
 
こうした変化に注目した記事としてWSJの6月12日の記事を紹介しておこう。
 
エマージング諸国をめぐる国際的な資金フローの動向は、世界の投資家のリスク許容度の変化に大きく依存していることが実証研究でも確認されてる。すなわち、リスクオンと呼ばれ、投資家のリスク許容度が上昇する(=リスクプレミアムが低下)場面では、これら通貨は対外的な資金流入の強まりにより、通貨相場は上昇する。逆に、リスクオフと呼ばれる反対の局面(リスク許容度の低下=リスクプレミアムの上昇)では、対外的な資金流出が強まり、通貨相場は下落する。
 
そこでリスク・プレミアムの上昇が確認できるかどうか見ておこう。
リスク・プレミアムの指標はいろいろあるが、世界のマネーフローが流出入する米国の債券市場のリスク・プレミアムの変化で見るのが、ひとつの代表的な見方だ。
図表はFRBが公表しているBBB格付け債の利回りからAAA格付け債の利回りを引いた形でリスク・プレミアムの推移を示したものだ(格付けはムーディーズ)。
 
以下に添付の上段の図は月次データであり、リスク・プレミアムは昨年は1.3~1.5%とやや高めの水準だった。それが昨年暮れから今年4月までは低下して0.8%台と低位な水準にとどまっていた。ところが5月から反転して足元では1.0%(6月25日)を僅かに超えるところまで上がっている。
 
下図はリスク・プレミアムの推移を日時の変化で示したものであり、5月以降ジリジリっと上昇して1.0に絡む水準になっていることがわかるだろう。
 
FRBのデータサイトは以下
 
今後はどうなるだろうか?中国の不動産・金融バブル崩壊を語る報道がやはり5月以降、急速に増えている。このまま中国を含む新興諸国の成長失速で再度世界的な景気後退というリスクシナリオも描けないわけではない。
 
ただし図表のリスク・プレミアムの変化を見る限り、上昇幅は現状のところ軽微にとどまっている。むしろ、昨年暮れから今年春にかけてのリスク・プレミアム低下が行き過ぎだったのであり、5月以降の変化はそれまでの過度な楽観が修正・調整されている過程だと考えるのが現状では妥当であろうか。
 
当面はこのリスク・プレミアムの上昇が昨年のように1.5程度の水準まで再上昇するか、あるいは1.0近傍にとどまるか、要注意であろう。前者の場合は、波乱相場の長期化、深刻化を覚悟する必要があるだろうが、後者の場合には新興諸国をめぐる変調が米国や日本の株価に与える影響も、短期的な波乱で済むだろう。
 
筆者の見解としては、後者の慎重ながら基本楽観のケースの可能性が高いと予想しておこう。
この点の判断については、主観的な蓋然性でしかないけどね(^_^;)
 
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http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
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以下の論文を執筆、掲載しました。国際通貨研究所の佐久間さんとの共同論文です。
同研究所の「国際経済金融論考」としてサイトに掲載されています。
9月の日本金融学会秋季大会で発表予定の論文ですので、一応学術的な体裁で書いていますので
ちょっと小難しいかもしれませんが、ご関心のある方、どうぞご覧ください。
 
「2000年代の金融危機と外国為替相場の変動について~日本円と韓国ウォン相場の非対称性を中心に」 国際通貨研究所、国際経済金融論考、2013年第2号、2013年6月3日脱稿
 
結論要約
~実質金利格差感応度の高い円相場とリスク・プレミアム感応度高いウォン相場~
本論文は20089月のリーマンショックによる金融危機を挟んだ20051月から133月の期間を対象に、この時期の為替相場の短期・中期的変動の要因と特徴をドル円とドルウォンの相場を中心に説明することを試みた。
回帰分析の結果、双方の実質為替相場とも、米国との実質金利格差、リスク・プレミアム(米国のBBB債利回り-AAA債利回り)の2要因によって60%以上の説明が可能であることをわかった。
 
ただし両通貨の相場の上記2要因に対する感応度は二重の意味で非対称的である。第1にリスク・プレミアムに対する感応度はドル円とドルウォンでは正反対である。第2にドル円相場では実質金利格差に対する感応度が全対象期間を通じて高く、リスク・プレミアムに対する感応度は20089月のリーマンショック前後の比較的短い期間に限られた。一方、ドルウォンは実質金利格差に対する感応度は全期間を通じては不安定である一方、リスク・プレミアムに対する感応度は極めて高かった。
 
こうした両通貨相場の変動要因の非対称性の背後には、両国の対外資産・負債ポジションの相違、円が国際通貨として先物為替取引などを中心としたオフバランス取引による大規模なキャリートレードの対象になり、金利格差感応度の強い特徴を帯びる一方、ウォンは非国際通貨としてオフバランス取引の規模が限定的であり、むしろ現物の対外的な資金フローの変動に強く規定されるリスク・プレミアム感応度の高い性質を帯びているという相違が考えられる。
 
 またドル円相場について、リーマンショック後2012年暮れまで円高基調が継続した主因は、日米の短期金利がほぼゼロ近傍に張り付いたまま、日本の企業物価指数に見られる物価の下落が米国に比較して著しく、そのため実質金利格差要因が円高・ドル安方向に持続したためと言える。
 
 こうした円高基調は、アベノミクスと黒田日銀総裁下での「かつてない大胆な金融緩和」によってデフレ脱却マイルド・インフレへの転換期待が醸成されるに至り終焉し、円安方向への急激なシフトが生じた。
ただし、1ドル=100円台前半の名目相場は、本論文での回帰分析で得られた推計値に基づいて推計する限り、日本の企業物価指数で前年比78%もの上昇期待を織り込んだものであり、これはリーマンショック直前の2008年央の水準に並ぶものであり、当時の消費者物価指数は一時的に2%程度であった。
その意味では、1ドル=100円台前半のドル円相場は、米国の名目金利やインフレ率など他の事情が変わらない限り、日銀が2015年春までに目標とするインフレ率を既に織り込んでいる可能性が高く、その実現可能性について期待が後退する場合には、円高への揺れ戻しの可能性を示唆していると言えよう。
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ロイター社コラム、掲載されました。
 
「米国経済は尻上がりに改善、1ドル再び100円も」
ご覧になってよろしければロイター社サイトで「おすすめ」とかクリックお願い致します。<(_ _)>
 
一部引用:「おそらく来年にかけて米国経済は尻上がりに良くなる。
もしも米国経済が今年失速すれば、世界経済全体に再び暗雲がたれ込むことになる。そのようなリスクはゼロではないが、杞憂に終わる公算が高い。これまでの様々な悲観論の流布にもかかわらず、リーマンショック後に米国経済が辿っている軌跡は、1990年以降の日本のそれとは明らかに違う。そうした事情を以下に確認してみよう。
 
19日のFOMC声明文とバーナンキ議長の記者会見では、「今後の経済データが現在の我々の見込みと概ね一致する場合には」、現在の量的金融緩和のための債券購入額は今年の後半から減じ、来年半ばまでには停止されるのが妥当だという方針が述べられた。
 
これに反応して、直後の金融・投資市場ではとりあえず債券売り、株売りの動きとなった。今後債券については価格下落(利回り上昇)基調となろうが、景気回復が持続する限り株価の堅調基調が大きく崩れる公算は低い。
赤線が推計値の内訳から資産効果(住宅と株式)部分を抜き出したものであり、リーマンショックの年の08年から09年後半までマイナスとなった後、10年にプラスに転じたが、住宅価格が再度低迷した11年はほぼゼロ近辺となっていた。ところが12年後半から再びプラスに転じ、足元の13年は0.8―1.0%ほど個人消費支出を押し上げている(プラスの資産効果)。
 
13年第1四半期の実質GDP成長率2.4%に基づいて、この資産効果の規模を考えてみよう。同期間の政府部門の支出は前年同期比でマイナス2.3%、個人消費支出は前年同期比でプラス2.1%だった。米国の個人消費支出の規模はGDPの約7割を占め、政府部門支出の4倍である。
 
したがってプラス1%の正の資産効果による個人消費支出の押し上げは、今年の第2四半期以降の政府部門支出がマイナス4%になってもそれを相殺し得ることになる。
 
結論として米国経済は順風下にある。今年の実質GDP成長率は通年2%台に乗り、来年は3%前後となるだろう。ドル円相場について言えば、前回のコラム「この先のドル買いはハイリスク・ローリターン」(here)で警鐘したとおり、100円超えの水準で一段の円安・ドル高予想に煽(あお)られて、損失を被った方々も少なくないようだが、今年の後半には再度100円前後の円安・ドル高のチャンスがあるかもしれない。」
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追記:6月21日
山上えつ子さんの論考
私とは対照的にリスクの方を強調している。数ヵ月後に結果を比較してみましょう。
「QE縮小相場第2弾」は危機への入り口か
 
引用:「このようなQE縮小相場第2弾は何をもたらすだろうか。米国経済に対しては長期金利の上昇および株式相場の下落が景気回復の勢いを削ぐリスクがあり、一部エマージング諸国には急速な資本流出が為替レートの急降下をもたらし、国内にインフレと景気減速、金融市場の不安定化をもたらすリスクがある。そして、エマージング市場の混乱がグローバルに波及していくというのが最悪シナリオだ。
 
米国の景気は回復基調にあるとはいえ、低金利を主因とする住宅市場の改善と資産価格の上昇を背景とする堅調な個人消費がけん引役だ。製造業には弱さがあり、また歳出一律削減の影響もあり政府支出はマイナスである。ここで長期金利が上昇すると、米国景気は回復の力を失う。外需はすでに弱いが、エマージング諸国の景気が減速すれば、一段とマイナスの力が加わることになる。まして、エマージング諸国の一角に金融危機が発生すれば、米国も再びQEに逆戻りといったことにすらなりかねない。」
竹中コメント:米国だって、世界のエマージング諸国の事情まで勘案しながら自国の金融政策を運営することはしないし、できない。E諸国が国際的な資金移動で揺れて困るというならば、各国でしっかりと資本移動規制をするしかないでしょう。 
 
追記その2:倉都康行さんの論考、見ている材料は私とほとんど違いありませんが、米国経済の先行きについては慎重論(悲観論?)です。 やはり数カ月後にふり返ってみましょう。
引用:「今回の成長見通しに関しても、財政政策は強制歳出削減で硬直化したままであり、企業の設備投資は回復せず、新興国経済の急速な冷え込みで製造業の新規受注は停滞中である現状を考えれば、かなり甘い見通しだと言わざるを得ず、IMFの1.9%予想や世銀の2.0%予想の方に現実味を感じる。ウォール街の予想もほぼ2%前後だ。金融緩和の効果で住宅市況と自動車販売は確かに好調だが、この2分野だけで景気を引っ張ることは難しい。」
 
竹中コメント:5月に出した1ドル100円越えのドル円相場に関する判断とは違って、米国経済の先行きについては、現状の材料をベースに楽観論も悲観論も双方可能です。しかし「どっちもあり得る」では話にならないので、まあ私の場合は強気に賭けてみましょうということです。(倉都さんは実は私と東京銀行の同期で、お互いよく知っている間柄です(^^)v )
 

facebookつながりで知ったが、以下の「不動産投資に関する意識調査」が興味深い。
この種の不動産投資家(不動産が本業の個人、他に本業がある個人の双方が対象と思われる)の意識、動向調査はこれまであまり見た記憶がない。
 
 
http://www.nomu.com/pro/news/images/img_summary01.gif
  • 調査時期 2013年5月21日(火)~5月26日(日)
  • 調査対象 投資用不動産サイト「ノムコム・プロ」会員 (会員数 約17,000人 ※2013年5月時点)
  • 有効回答数 652 人(投資用物件の保有者:390 人、非保有者:262 人)
  • 調査方法 インターネット上でのアンケート回答
興味深い点は以下の点
「1年後不動産価格はどうなると思いますか?」
今回(2013年5月)の調査では「上がる」が65.5%の急増(1年前は13.9%)
 
「アベノミクスを受けて投資意欲が上がった対象は?」
株と不動産が筆頭
「下がった対象は?」
国債、外貨預金、外債が上位 (←円安ドル高で100円を超えた5月時点としては正しい判断ですね)
 
「保有している投資用物件について、4割以上の方が、総投資額「1億円以上」と回答」
会社員44%、プロの不動産経営者は解答者の8.7%、その他のオーナー経営者は10.0%です。
また半分は50歳以上。プロフィールのデータ参照。
 
「不動産投資で得ている収入について、3割以上の方が年間「1,000万円以上」と回答」
純収入ではなく、グロス収益のようですね。
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個人投資家がマンション投資で成功するための鉄則は、本書の5章で詳しく解説しています。
 
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大学の「就業力」トップ10に龍谷大学!
本日の日本経済新聞記事

「就業力」って何?→就職後に仕事環境に適応して成長する能力、一種の潜在力のようだ。
早大も慶応も飛び越えて、龍谷大学が関西大学唯一のトップ10入り(゜o゜)

ホント!?って・・・・その大学に勤めているセンセーが驚いたらいかんのかもしれませんが(^_^;)・・・・それとも龍大学生諸君、君たちってもしかしたら、ほんとは凄いの?

以下記事

「就業力」育て 総合ランキング上位は
東京外語大、授業に高い満足度 横浜国大、学年垣根越え交流

2013/6/17付 ニュースソース
日本経済新聞 朝刊
 就職・転職支援の日経HRは大学生を対象に学業や課外活動など4分野から成る「学生生活充実度調査」を実施した。学生時代に身につけた主体性や協調性は、社会人に必要な能力として企業が注目する。調査結果から就職後に成長する能力などを指す「就業力」を育てる大学をランキングにした。就職面の強さを重視して大学を選ぶ受験生の参考になりそうだ。
 
 総合首位に立ったのは東京外国語大学。授業に関して88%が「面白い」「理解している」と回答するなど、学業分野の評価が高い。ある学生は「目標がある人には何でも学べる入り口が開かれている」と指摘した。交友関係分野では100%が「学内に2人以上の友人がいる」「学外に年齢の異なる友人がいる」と答えた。海外からの留学生が多く、国際色豊かなキャンパスライフがうかがえる。
 
 2位には横浜国立大学がつけた。交友関係分野で100%が「先輩・後輩との付き合いがある」、94%が「学生生活は楽しい」と回答した。主要な施設が横浜市のキャンパスに集中しており、研究分野や学年の垣根を越えて交流できる環境が整っている。
 3位の一橋大学は回答者の全員が研究室に参加しており、「ゼミの一橋」の面目躍如となった。商学部の学生は「小規模なので教授の目が行き届いている」と評価する。大学の就職支援について91%が「役立つ」と回答。学園祭や合宿の参加経験が100%となるなど、課外活動も活発だ。
 
・・・途中省略・・・
 
 10位は関西勢で唯一ベスト10入りした龍谷大学。「学内に2人以上の友人がいる」が100%、「先輩・後輩との付き合いがある」が95%と交友が盛んだ。
 
 総合ランキングで10位に入らなかったものの、分野別で上位につけた大学もある。総合で59位だった同志社女子大学は学業分野では3位に入った。現代社会学部の学生は「幅広く教養科目の知識を身につけられる」と回答した。
 
 大学の就職支援などを聞いた就業観分野では、山口大学が首位。地域に根差した就職支援組織が充実している。2位には女性のキャリア教育に定評がある跡見学園女子大学が入った。3位の金城学院大学はインターンシップを経験した学生が56%と多かった。
 
 課外活動分野では岡山大学が3位。ボランティア活動に参加経験がある学生は67%おり、全大学でトップだった。交友関係分野は弘前大学が4位。学生からは「比較的小さな規模なので顔見知りが多い」といった声が上がる。
 
 ▼就業力 文部科学省が2010年度に「大学生の就業力育成支援事業」の中で使い始めた。「学生が卒業後に自らの資質を向上させ、社会的・職業的自立を図るために必要な能力」などと位置付けられている。
 調査概要: 日経HRが2012年11月19日から、同社で企画・管理する就職情報サイト「日経就職ナビ2014」の登録会員(大学3年、院1年)にインターネットで実施。13年4月30日までに回収した。有効回答数は470大学・4463人(4年制大学のみ)。
 ランキングスコアの算出方法: 「学業」「課外活動」「交友関係」「就業観」の4分野で構成するアンケートを実施。各分野の質問に対する肯定的な回答を大学ごとに集計・得点化するなどしてランキング化した。
 ランキング対象: 回答者数が15人以上あった77大学のうち上位65大学までの総合ランキングを作成。17日発売のムック「親と子のかしこい大学選び」(日経HR)では、65大学全体の総合ランキングや調査結果の詳細などをまとめています。
 
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「市場の価格形成は短期的・中期的には非合理的でファンダメンタルな価値から大きく乖離するが、長期的にはファンダメンタルな価値に回帰する。この乖離と回帰の波を利用できれば、長期的な投資のリターンを向上できるはずだ」
 
これは新著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法~」(光文社、2013年5月)の中核的なメッセージだ。  (クリックでアマゾンにとびます↑)
 
昨年暮れ以来のREIT相場の急騰と5月の反落は見事にその実例になった(本書5章でREITの割高・割安の見抜き方も扱っている)。
何度も紹介しているが、REITの割高・割安を見抜くP/NAV指標、5月末時点のものが以下に開示されている。
 
今年2月20日のロイター社コラムに寄稿した私の論考「REITバブル、再来の可能性」は以下でご覧いただきたい。
 
引用:「REITは、本来は短期的なキャピタルゲインよりも配当利回りを目的とした長期投資の手段だ。しかし、市況がミニバブル的な高騰をするならば、長期保有の投資家にとっても割高局面ではある程度売り抜くのが合理的な選択だろう
 
インカムの源泉が不動産の賃料のみで、配当可能利益の90%を配当することで法人税を免除されているREITの収益構造は一般企業に比べるとはるかに単純だ。にもかかわらず、これだけのバブル的な高騰と暴落を招いてしまうということは、投資家サイドの集合的な合理性に致命的な欠陥があるということだろう。しかし、市場の非合理性は、冷静な眼を持つ長期投資家にとっては絶好のチャンスでもある。
 
のど元過ぎれば熱さを忘れる」の例え通り、日本のREIT市場が再びミニバブル的な高騰を起こす可能性が高くなるだろう。割安圏でREITを購入できた投資家には、楽しみな局面となってきた
 
上記論考で指摘した通り、J-REITはあっと言う間にミニ・バブル的高騰となり、5月に「泡」が破裂した。
予想通りでなかった点は、新たなfoolish moneyの買手の主体が、アジアの新興国マネーではなく、投資信託と銀行マネーだったことだ。
 
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追記訂正(6月24日):4月にREITをバカ買いしたのは海外マネーだった!
不動産証券化業界の6月のレポートを見てわかった。
4月にREITを700億円もバカ買い(買い越し額)したのは海外投資家だった。
どの地域の海外かまではわからないが、私が2月に「中国を含むアジアの新興投資家のマネーが日本でもREITの新たな買手に加われば(すでに流入しているのかもしれない)、「のど元過ぎれば熱さを忘れる」の例え通り、日本のREIT市場が再びミニバブル的な高騰を起こす可能性が高くなるだろうという予想は、買い手の指摘まで含めてドンピシャだったことになる。
不動産証券化協会6月のレポートは以下(13ページ)
上記図表のオリジナルデータは東証の以下のサイト
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今回の高騰局面で私は2009年から12年に買った自分の保有REITの9割近くを売った。女房に昨年買わせた分も3月に売った。
 
さて、反落したREIT、予想配当利回りは再び3%台から5%台の分布レンジに上がったが、ここからまた買うか? あまりそんな気はしないな。P/NAV指標は反落したとは言え、1倍を超えているからね。超割高が修正されても、まだ割高圏だ。以下REIT一覧サイトご参照
 
株やREITの利食いでポートフォリオの現金比率が上がったので、中古マンションをまた一戸買おうかと思って、仲介業者に声をかけてあるのだが、売り手は強気になり始めているし、買手の方は積極的になっているようで、魅力的なリターンの物件が出てこない(^_^;)  昨年までとは明らかに市況が変わっている。
まあ、いいや、しばらく各種相場の動向を見ながら、様子見としましょうかね。
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国際通貨研究所が開示している相対的PPPについては、著作や日経新聞でも繰り返し紹介してきたので、多少知られるようになったが、図の見方については肝心な点で誤解している方々が多いので、改めて説明しておこう。
 
もっとも、ここで説明することは新著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法」の4章(p126~128)に書いてあるので、既にご購入下さった方は、そこを読んで頂いてもけっこう。
 
ひとことで言うと、相対的PPPは起点依存だ。つまりどの時点を起点に選ぶかで、市場実勢相場(名目相場)とPPPの位置関係はいか様にも変わってしまう。国際通貨研究所のPPP図表はドル円について1973年を起点にしている。
 
この起点次第でPPP図の姿がまるで変わってしまうことは、以下に添付した1995年3月起点のPPP図表を国際通貨研究所のPPP図表(1973年)起点と比較すれば一目瞭然だろう。
 
この1995年という円高に傾斜した時点を起点にしたPPPでみると、市場の円相場はいつも円安にバイアスがかかった動きをしていることになる。しかしそれは間違いで、実は円高にバイアスのかかった1995年3月が起点になっているからそう見るだけだ。
 
どの時点がPPPの計算時点として最もふさわしいのか、その点については「日本の経常収支不均衡が小さく、変動相場制の移行年時である1973年を選んだ」と私も説明しているが、相対的な問題であり、決定的にこの年次がふさわしいと言えるものではない。
 
市場相場と特定時点起点のPPPを直接に比べながら、その乖離幅が広がったとか、縮まったのとかコメントしている相場アナリストもいるが、「まるでわかってないね。勉強不足!」としか言いようがない。
起点を変えればまるで水準が変わってしまうPPPと市場実勢を直接比べたって意味がないことぐらいわからないようでは、一般人ならともかく、相場のアナリストとしては失格だ。
 
それで起点依存に陥らない見方は、実質相場で見ると言うことだ。
実質相場指数=名目相場/PPP
 
つまり実質相場指数は名目相場(市場相場)のPPPからの乖離度を指数化して示したものだ。
実質相場の長期にわたる平均値をとり、この平均値からの乖離を見ることで、当該通貨相場の割安割高を見抜くことができる。 これならば特定時点の起点に依存せず、対象となった全期間の平均値との比較になる。その図は以前にも繰り返し紹介しているが、以下に添付した(2番目の図)。
 
もちろん、通貨相場は短期的な振れ、行き過ぎもあるので、一定の幅をフェアウエイにして見ることだ。
図ではひとつのめどとして平均値から±10%の水準にグレーの線を引いてある。
 
さて、ユーロドルの相場でも単にPPPと市場実勢を比べていては、特定の起点(1999年)に依存した見方になってしまう。そこで以下3番目にユーロドルの実質相場指数と1999年からの平均値を示した。
 
これをご覧になって「それでもユーロの実質相場指数は2005年以降は下がっても平均値をほんのちょっと下回る程度で、平均値を上回っている時期が長い。なんで?」という質問を発することはできる。
 
考えられる理由はとりあえず2つ。
1、長期の平均値と言っても相対的なものであり、今後の相場変化次第で変わる。 もしかしたら現在までの平均値はもっと長期ではやや低めなのかもしれない。
 
2、これからユーロはもっと大きな下げ場面が来るのかもしれない。
 
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