たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2013年12月

昨晩のWSJ記事
米国株の高値更新、続伸にもかかわらず、アメリカの個人投資家層は「冷めている」と報じている。
記事は“That might be a problem”と買いているが、おいおい、それはどう考えても吉兆だろ(^_^;)

quote:"Stock Rally Fails to Spur Big Inflows Into Mutual Funds
Individual investors keep tiptoeing back into the U.S. stock market.
And that might be a problem.
Despite growing signs that the economy is gaining steam and the relentless climb of stocks
even after the Federal Reserve said last week it will shrink its monthly bond purchases, many
investors still feel tepid about the overall stock market.

Steep losses suffered during the financial crisis still weigh heavily on investment decisions by
many mom-and-pop investors."

another article:"Individuals aren’t putting on their rally caps quite yet, either.
Over recent years, the steadiest rise has been in the number of investors who say they are
neutral on stocks. Even with last week’s jump in bullishness, an average 30.7% of investors
were neutral on stocks each week this year."
***

このことの含意は? 
個人投資家が直接、間接とも株式保有比率を上げていないなら、ヘッジファンドを含む機関投資家、企業の自社株買いなどが株式の買い手だということになる。米国でも年金などは高値を追って買い上げるような投資はしないから、ヘッジファンドなどの短期筋が続伸の主体だとすると、年明け後に目立った反落もあるかもしれない・・・ということになる。

ただし大衆的なユーフォリアが生じていないなら、反落局面では個人投資家や長期投資家の買いが出て株価を反発させる余力も潜在的に高いと言えるかもしれないね。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
本日の午後から1月2日までインドネシアにダイビン・ツアーで遊びに行ってきますので、これが本年最後のブログです。 今年は資産運用面でエキサイティングな年でしたね。2014年も皆さまのご多幸をお祈り致します<(_ _)>
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ひさしぶりに書評を書きたいと思った本、ただ今読了。
Liaquat Ahamed、吉田利子訳、筑摩書房、2013年
 
著者はケンブリッジとハーバード大学で経済学の学位を取得、世銀の投資部門を経て、投資会社や保険会社で投資の実務にたずさわって来た投資マネジャーであり、現在はブルッキングズ研究所の理事だ。
経済学の学位を持ったエコノミスト、投資実務のマネジャー、そして本書は歴史家としての実績ということなる。 まことに米国の投資業界にはすごい知性がいるもんだねと舌を巻く。
 
第1次世界大戦勃発前後(1914年)から始まって、20年代~30年代を中心に第2次世界大戦までの国際金融・経済史、上下合計600ページ余の大著だが、まるで映画を見ているように叙述が展開し、ずんずんと読み進める。 翻訳もこなれているお陰だろう。膨大な資料を下地に書かれていることは間違いないが、一流のジャーナリストの叙述のような描写力には感嘆した。
 
第1次世界大戦の結果生じたドイツの膨大な対外賠償債務が、国家間債務の履行不能と危機の連鎖を引き起こし、最後は世界恐慌に転じて行く過程を描いている。そこで著者が発見したことは、現代の通貨・金融危機との驚くほどの類似性だ。
 
E・H・カーは「歴史とは何か」(岩波新書)の中で、歴史学とは歴史家と歴史的な事実の「対話」だと説いたが、著者のしたことは正にそういうことだろう。
 
もちろん歴史は全く同じことを繰り返すわけではない。音楽に例えると、基調は同じでも様々に時代固有の状況による変調が生じる。 当時と現代の最大の相違は、当時の官僚、政治家、知識人の多くが「金本位制」に呪縛されていたことだ。 
 
現代的な視点でふり返ると、当時の歴史は金本位制の呪縛による悲劇であると同時に、その呪縛から解き放たれるまでの文字通り血にまみれた過程だったと言える。
 
各章面白いが、私が一番気に入ったのは第5部、第21章「千鳥足の金本位制」だ。米国がルーズベルト大統領という異風のリーダーシップの下で金本位制を離脱し、大恐慌から回復過程に入る時期の叙述である。 以下のその部分を要約、引用しよう。
***
 
1933年、ローズベルトが大統領になると直ちに行なったのは預金取り付け騒ぎでパニック状態になっていた銀行全ての閉鎖だった。 既に預金取り付けパニックで、信用収縮と実体経済(生産と消費、設備投資)の収縮が相乗的に深刻化する大恐慌に陥っていた。
 
銀行閉鎖(バンクホリデー)の間に「緊急銀行法」を用意し、FRBに金(ゴールド)ではなく銀行資産を担保に資金を供給すること、政府にはFRBに銀行を救済支援することを命じる権限を付与した。さらにFRBが銀行制度救済のために損失を出しても政府はその責任を問わないと約束した。
 
そしてローズベルトは有名な「炉辺談話」で国民にやさしく語りかけた。「わたしが保証します。お金はマットレスの下に隠しておくよりも、銀行に預ける方が安全です。みなさんが銀行にお金を預ける。銀行はそのお金を貸出し、投資や生産のために活用されるのです」(下㌻237)
 
そして銀行閉鎖が解かれた最初の朝、全国の銀行の前に預金者の長い列ができた。しかし今度は預金を引き出すためにではなく、預金を預け入れる人々の列だった。
 
「バンクホリデーと救済策、ローズベルトの談話があいまって -どれが一番効果があったのかは定かではなかったが- 大衆的な心理に劇的な変化が起こっていた。・・・一夜で国の気分は一変した。・・・10日間閉鎖されていたNY証券取引所が再開されるとダウは15%跳ね上がった。一日の上げ幅としては歴史上最大だった」(下㌻237)
 
「これまたフーヴァーにとっては呑み難い丸薬だった。彼が毛嫌いするローズベルトが導入した銀行救済策は、もともとフーヴァーが提案していた原則をもとに、フーヴァー自身の部下によって立案されたもので、それがたった1週間で信頼を回復させたのだ。気の毒な老いたフーヴァーが3年も大恐慌と闘ってきても、どうしても信頼回復に至らなかったのに」(下㌻238)
 
この叙述で想起せざるを得ないことがある。今年の春頃、「アベノミクス」で株価が急騰、円高も急速に修正され、先行きに明るい兆しが見え始めた局面で、国会では民主党の幹部級代議士が安倍首相に対して「あなたのやっていることは民主党政権がやってきたことを踏襲しているだけだ」と批判したことがあった。 安倍首相は「・・・・結果が伴うか、伴わないか、それが全てじゃないでしょうか」と応じていた。まことに結果が全てだね。
 
そしてローズベルトは金本位制の放棄とドルの大幅切り下げを決断するのだが、この時は政策顧問らから一斉に反対を受ける。
「この経済の専門家たちの集団に対峙したのはひとりだけだった-大統領その人である。専門用語を並べられて反対されても全く怖気をふるわなかった。顧問のひとりにそれは不可能だと言われると『くだらん』と切り捨てた。・・・ローズベルトのシンプルな見方によれば、大恐慌に物価下落がつきまとってきたのだから、物価が再び上昇に転じた時にしか、経済は回復しないはずだった。
顧問たちはそれは因果関係が逆だと辛抱強く説明しようとした。」(下㌻240)
 
著者は経済では原因と結果の関係は、多くの場合相互依存的、循環的であり、原因が結果となり、結果が原因となるとここで語っているが、私もその通りだと思う。
そしてローズベルトは経済学の専門用語でそれを語ることはできなかったが、そうした循環的な関係の逆転、すなわち「デフレ・プロセスの逆転に鍵があることを直感的に理解していたので、大恐慌の解決は物価を上昇させることだと主張し続けた」(下㌻241)
 
「ホワイトハウスのレッドルームに経済顧問を呼び集めた。そこで、にやにやしながら顧問たちと向き合ったローズベルトはあっさりと言った。『めでたい話がある。われわれは金本位制から離脱する』 
50%を上限としてドルの金利平価を引き下げ、金の裏付けなしに30億ドルの紙幣を発行する権限を大統領に与えた農業調整法トマス修正条項を示して、この施策を実行することにした、と大統領は述べたのである。」 (下㌻244)
そのとたん部屋は大騒ぎになった。喧々諤々の大騒ぎの後にダグラス(経済顧問のひとり)は「これで西欧文明も終わりだろうな」と宣言したそうだ。
 
ところがローズベルトの決断から数日後にはドルの下落とともに株価が15%も上昇し、銀行救済計画で始まった国民心理の劇的な変化は第2段階に入った。
それから3カ月で卸売物価は45%上昇し、株価は倍になった。物価が上昇して、借入金の実質コストは急落し、自動車販売台数は倍増、工業総生産高は50%上昇した。
 
というわけで、私達日本人は、この叙述に過去1年間の変化を重ね合わせずにはいられないだろう。
もちろん今日の日本は金本位制の束縛は無縁である。しかし、日銀が国債を毎月7兆円も購入してベースマネーを2年間で倍増し、消費者物価指数2%を目指すと黒田総裁が決断した時に、アンチリフレ派のエコノミストらが示した反応(例えば、「それでは日銀の国債引き受け同じだ」など)に、ローズベルト大統領の金本位制離脱宣言に政策顧問らが示した強い拒否反応を重ね合わせてしまわずにはいられない。
 
やはり歴史に学ぶ価値は、大きいですねえ。
 
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首都圏中古マンション市場の活況
本日12月23日の日経記事に引用されている「IPD/リクルート住宅価格指数」、これは中古マンション価格と賃料に関するデータです。

私は2007年にこのデータに注目し、IPD社にお願いして、過去データを全部頂き、価格、賃料ともに以来フォローしています。
以下はその図表です。PRR(Price Rent Ratio)というのはマンション価格指数を賃料指数で割ったもので、株式のPERと同じでマンション価格の割安・割高の指標です。


これで「マンション価格の割高・割安が判断できますよ」とこれまでの著作の中で繰り返し掲載して来ました。 現在の相場は指数で見る限り昨年までの割安状況はなくなり、2007年のミニバブル時と同じ程度の割高に転じました。

ならば、マンション個人投資家としてはもう売るか? 記事に書かれているように実需に支えられているようなので、景気の腰折れがない限りまだ上昇基調が持続しそうな気がします。様子を見守りましょうかね。

ところで、中古住宅を仲介業者経由購入する場合は、消費税はかかりません。消費税は付加価値に課税されるものですが、新築と違って中古マンションの仲介では付加価値が発生していないからです。 
 
だから新築マンションについては、来年4月からの消費税率引き上げの前に駆け込み購入が起こっているのは一応理解できます。ただし新築でも、来年度から実施される住宅ローン減税処置を利用すれば消費税増税分は概ね相殺できると言われていますので、購入ラッシュすることにどれほどの合理性があるのかとも思いますが。
 
ましてや消費税の対象ではない仲介での中古マンション購入については、消費税前の駆け込みが生じる合理性は全くありません。 実需目的の購入者の懐がリッチになったわけでもない。賃金はまだほとんど増えていないし、以下の記事にあるように中古を買っている層は総じて中~低の所得層であるならば、株価上昇による資産効果も関係がないはずだ。
 
まあ、大衆というものは、そういうものなんでしょう。世の中の雰囲気の変化に感染して行動しているんだ。 私の観察では、そうした合理性の乏しい実需系購入者の買いと、株価の上昇でキャピタルゲインを得て、それを元手に資産運用する個人投資家の買い、その双方が同時に起こっているんだと思います。
 
まあ、マンション投資家としては、理由はともかく、価格が上がってくれるので嬉しい。
来年以降、じっくりと引きつけて売り抜きましょうかね。

記事引用:「価格も上昇している。リクルート住まい研究所が算出する首都圏の中古マンション価格指数は11月に128.8と、バブル崩壊後の1995年5月以来18年半ぶりの高値圏となった。理由は何か。同研究所の清水千弘フェローは「足元の活況はファンドバブルのような資金流入ではなく、実需によるもの」と話す。

買い手の主役は所得が比較的低い層だ。中古住宅の購入世帯で最も多いのは30代。特に中古一戸建ての所有層は30歳未満が多く、中古マンションは60代以上の高齢者層が好む傾向がある。
 
実際、家計調査によると、年収が平均で268万円の世帯の持ち家率は10月時点で81.3%と2年前に比べて10ポイント近く上がった。中古住宅がこうした低所得層の購入の受け皿になっている可能性は高い。」
 
追記(同日午前):消費税について
誤解されぬように補足しておきます。
「仲介業者」とは自分では購入せずに、個人間の売買を仲介して手数料を得る業者の意味です。仲介業者を通す場合も、あるいは(稀ですが)個人間で直接売買する場合も、消費税の対象にはなりません。ただし業者がいったん購入したものを(この場合は「仲介」ではない)ので、その業者から買うと消費税の対象です。 その場合も、土地部分は課税対象ではありません。
 
友人の税理士の法律上の説明では以下のようになります。
「消費税は消費税法第4条1項で「国内において事業者が行った資産の譲渡等」とその「課税の対象」を定義(課税対象ではなく課税の対象)しており(資産の譲渡等については同2条で定義している)、個人間の売買(仲介事業者がいようがいまいが)については消費税が課税されません」
 
仲介ではなく、業者がいったん購入したものを買う場合は、上記の「事業者が行なった資産の譲渡」になり、消費税の課税対象となるわけです。
 
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金(ゴールド)のドル建て価格がついに1200ドルを割れた。例えば以下のWSJ記事ご参照
 
Gold sinks to three-year low   
 
2年~3年前、「米国の量的金融緩和でインフレになるから、インフレヘッジのためにゴールドを買いましょう」なんてまことしやかなことを語るゴールド業者の御先棒を担いだ方々の言説が横行していましたね。
 
しかし私はきっぱりと「今のゴールド価格はバブルだ。かならず崩壊する」と何度も書きました。
例えば以下の2011年10月のブログと雑誌「エコノミスト」の記事をご参照ください。
 
私だけが決然と以下のように述べています。
「金色(こんじき)の熱狂、ゴールド・バブルは、はじける」竹中正治 金ベアー度☆☆☆
「現在のように趨勢的な傾向から大きく上方乖離した価格で買えば、長期で保有しても取り戻せない損失を抱える可能性が高い」「チキンレースの崖が見えて来た時、金価格は暴落するだろう」
 
しかも次のように言い添えている。
「1、2年経ったらこのブログをまた開いてみましょうかね」
 
2012年6月にも「エコノミスト」で書いています。
 
そしてその時が来ました。
結果はこれ以上のコメントが不要なほど明らか。
ゴールドが高値圏の時に「インフレヘッジのためにゴールド買え」とか、「ポートフォリオの一部にゴールドを買いましょう」なんてことを言っていた方々は、舌を噛んで、頭も丸めて反省して欲しい。
 
追記(12月22日):1200ドル近辺の金価格をどう見るか? まだ下がるか?買っても良い水準か?
私の著作を読まれた方々、本ブログのリピーターの方々はお分かりになっているはずですが、私の投資法はバブルに巻き込まれたり、業者に騙されない程度に資産価格の割安、割高の判断はしましょうね、それは決してそんなに難しくないはず、というものです。 
 
私は金市場のアナリストではないので、金価格の短期的な動向と需給をフォローしているわけでもありません。短期・中期の金相場予測なんてわかりません。もっとも専門のアナリストに、それがわかっているとも思っていませんがね。 上記の「エコノミスト」でブル見通しを述べたのは、一応「金市場(あるいは国際商品市況)専門のアナリスト」ですから。
 
インカムを生む資産のファンダメンタルな価値は、将来にわたるネット・インカムの現在価値を求めて合計すれば良いのですが、金のようにインカムを生まない資産はどう判断したら良いのか。
 
私はドル建ての金価格なら、ドルのインフレ率と比較して割高・割安を判断すれば良いのだと、極めてシンプルに考えています。 「長期的な需給動向の変化なども考慮に入れるべきでは・・・」なんて考えると業者やそのお先棒を担いでいる連中の罠にハマりますよ。 「インドや中国での金需要の増加で金の需給は趨勢的に逼迫し、価格は今後も上昇を続ける」なんてことが、散々言われてきたわけですからね。
 
私が金価格は「割高過ぎる、一種の投機バブルだ」と判断した最大の理由はドルのCPIの変化と比べて、金のドル価格があまりに高騰したからです。たとえ目先まだ上がりそうだと、業者にそそのかされても、割高な資産購入は避ける。これが素人でも勝ち越せる長期投資の極意だと思って実践しているわけです。
 
以下に掲載した図表の通り、ドルのインフレ率(CPI総合)に比べて、1200ドル近辺の価格は依然割高です。 目先下がるか、上がるか? そんなことは知りませんが、とうてい買う気はしませんな。
 
追記(2014年6月5日):「金の価格、「罠にはまった中国の個人投資家」・・・値を戻すのは「期待薄」=中国メディア」 (^_^;)
 
 
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毎度のトムソン・ロイター社でのコラムです。↓
ご覧になってよろしければ、ロイター社サイトにて「おすすめ」とかクリックお願い致します。
 
今回はunit labor cost(単位労働コスト)の概念と消費者物価指数との高い相関関係が切り口です。
 
一部抜粋引用
米国株式が高値更新を続ける一方で、経済学者の間では「米国経済の長期的停滞」の可能性を懸念する議論が関心を呼んできた。その代表は元米財務長官のローレンス・サマーズ氏が11月8日に国際通貨基金(IMF)の会合で行った講演だ。内外のエコノミストらの間で話題となったので、ご存じの方も少なくないだろう。
 
講演内容を一言で要約すると、リーマンショック以降、短期金利をゼロ近傍まで下げ、かつてない量的な金融緩和政策(非伝統的金融政策)で実質金利がマイナスになる状態を09年以降続けているのに雇用の回復が遅く、インフレ高進の気配すらないのはなぜかという問題提起だ。
 
そうした状況を説明するひとつの仮説として、「自然均衡利子率が大幅なマイナス水準に落ち込んでいる状況を考えてみよう」と同氏は語っている・・・・
 
・・・CPIとの高い相関性を踏まえて考えると、以上のULC(unit labor cost)の推移は次の3点を示唆している。第1にULCの推移を見る限り、米国が慢性デフレになるリスクは当面は低そうだ。その結果、自然均衡利子率の大幅マイナスというシナリオもとりあえず杞憂に終わるだろう。
 
第2点として「杞憂に終わる」という判断は短期か中期のことであって、長期ではサマーズ氏が指摘したリスクを米国経済は抱えている。米国の労働分配率は90年代の平均値65.8%から2000年―13年の63.4%まで趨勢的に低下し、13年第3四半期では61.0%まで下がっている。
 
労働分配率は景気回復過程では低下し、景気後退期には上昇する。したがって、現下の低さには景気回復と企業収益の改善を反映した短期・中期的な面もある。しかし、ULCの趨勢的な低下がこのまま続けば、ディスインフレからデフレへと転じる危険性を高めるだろう。
 
資本分配率の上昇を伴った企業収益の伸びで株価が高値更新を続ける一方で、ミドルクラスを中心に賃金は上がらず、労働分配率は低下しているのだ。この傾向が続けば、いずれまた到来する景気後退期にインフレ率の底がさらに下がり、サマーズ氏が懸念したような自然均衡利子率が大幅なマイナスに落ち込むシナリオへの道を開いてしまう危険性が高まる。
 
第3に日本はまだULCの変化が前年同期比でマイナスであり、デフレ脱却、マイルドインフレ達成のためには賃金上昇が欠かせない。各種賃金動向を見る限り、その兆しは見られるが、それが明確な変化になるかどうかの見極めには、最低あと数カ月はかかるだろう。
 
不幸にして「賃金上昇、国内物価上昇、賃金上昇」の連鎖が始動しなかった場合には、目標とされるマイルドインフレ期待の後退によって「円売り持高の巻き戻し、円高への急激な揺り戻し」が起こり得る。このシナリオも杞憂に終わって欲しいが、そうなるかどうかはまだわからない。」
*****
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
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Peter O'Toole 逝く・・・・今朝のNHKBSの各国TVニュースでどこも報道している。
私にとっても懐かしい名優でした。

最も印象的な代表作は次の2つです。
Lawrence of Arabia

Man of La Mancha

いずれも「ヒーロー」と「悩める男」の2つの人格の相克が基調になっていますよね。
O'Tooleは他の映画でも、同じ基調のキャラを演じており、彼の「持ち味」だったと思います。
Man of La Manchaの主題歌
The Impossible Dream (←クリックで映画のシーンに飛びます)
 
この歌、「現実はどんなにボロボロでも、そのどん底で自己の尊厳に覚醒し、栄光への道を歩め」と鼓舞しているんですね。若い頃、なりたい自分のイメージと、それに手が届かない自分の現実の狭間で悩んでいた時代に、このミュージカルに鼓舞されました。私と同じ気持ちの人、他にも少なくないでしょ?
 
今でもこの歌は時々口ずさんでいます。
そうやって「今ある自分」に妥協せず、「違う自分」、「まだ手の届かない姿」をイメージしながら自分を鼓舞して来たから、今ある私が存在するんだと感じています。そしてそのプロセスはまだ終わっていません。死ぬまでいくで~
 
 
 

2013年のノーベル経済学賞の受賞が決まったシカゴ大学のユージン・ファーマ教授とラース・ハンセン教授のインタビュー記事が日本経済新聞に掲載されていた。私はファーマ先生の議論は矛盾しているように思うのだが、私の浅学の故だろうか。不勉強・不遜をさらすリスクを承知で、そのポイントをご説明しよう。
 
↓記事全文
 
引用:(-の横線はインタビューアの質問)
――効率的な市場とは、アダム・スミスのいう「神の見えざる手」のようなものですか。
 「色々な比喩があるが、分かっているのは情報によって価格は即座に調整されるというだけだ。メカニズムはよく分かっていない。それに、あくまでモデル上の話だ。完全に正しいということはあり得ない」
 「大事なのは実践的な目標を達成するのにどう考えるのがベストか。少なくとも投資に際しては、市場が合理的だとの前提に立って行動すべきだ」
 ――つまり基準のようなものだと?
 「そう。基準だ。完全に真実ではないにせよ、それが(適切な)行動を導く」
 
補注:効率的市場仮説とは
株式市場は効率的であり、市場に出回る情報はすぐ株価に反映するため、過去の株価の動きや公表情報から将来の株価を予想するのは不可能であるとする仮説。過去の株価の動きをチャート分析して将来の株価を予想するのは無意味ということになる。
 
 ――市場に「バブル」は存在しないとの主張です。
 「私のバブルの定義は『価格が上がり、その後の下落を予想できる』状況。だが価格下落を予想できるとの証拠は、統計学的に存在しない」
 ――市場の振れを引き起こしているのは何なのでしょう。
 「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)だ。株なら、予想配当率、業績、投資の動向、それからリスクに対する人々の姿勢などだ」
 ――人々の姿勢とは、つまり行動のことですね。その行動にバイアスがかかることはありませんか。
 「もちろんある。経済学のすべては、行動に基づいている」
 ――では、エール大のシラー教授が主張するように、人々の心理によってバイアスが大きくなり、市場が非合理的な動きをすることもありうるのでは。
 「それが、どう価格に表れるかが不明なのだ。可能性はあるが、大事なのは、それがどのくらい起きているか。さらに心理状況が、いつ価格を上下させるかという点も予想できなければ(論理は)空っぽだ
 
 ――人々の心理を重んじる行動経済学の考え方そのものをどう思いますか。
 「すべての経済学は行動がベース。伝統的な経済学は合理的な行動を前提とするが、個人が非合理的な行動をとることは分かっている。問題は、それがどう価格に影響するか。個人が非合理的な行動をするからといって、価格にも大きな影響が出ていると主張するのは飛躍だ。きちんと分析して証明しないと。私の研究では証拠はない。個人の行動と、市場の動きの間には大きなギャップがある」
 
 ――資産価格の乱高下を防ぐ手立てはないのでしょうか。
 「景気循環をなくせば、資産価格の変動は少なくなるが、それは無理というものだ」
 「経済の振幅を減らすという意味でなら、マクロ経済学は手法を獲得したと思っていたが、08年の金融危機で幻想だったと分かった。経済学は、好不況の原因について実はうまく説明できていない。多くの論理はあるが、想像の産物という面がある
***
 
以上から理解する限り、資産価格が大幅に高騰し、その後暴落することがあっても、それがバブルとその崩壊であると判断できるためには、大変動のメカニズムを解明する理論モデルが欠かせないとファーマ先生は主張していると理解して良いだろう。
 
行動経済学が指摘する様々な個人の非合理的な行動選択がバブルとその崩壊を引き起こすと主張するためには、やはりそれが理論モデルとして説明できなくてはならないと主張している。
 
理論経済学者が「モデル」という場合には、通常は単純化されているとしても、経済(ここでは市場)全体の動きを統一的包括的に説明できる連立方程式の組み合わせだ。そしてファーマ先生のバブルの定義を満たすようなモデルはこれまでのところ存在しないと言っている。
 
しかし待てよ。そのようなモデルが発明、発見されれば、そのモデルの判断で「今はバブルだ。下落は必至である」と予想できることになる。バブル崩壊のタイミングまで予測できるかどうかは微妙だが、少なくとも「遅かれ早かれ崩壊する」と言えることになるだろう。
 
とすると、そのバブル・モデルの判定に基づき当該資産を売れば、市場を出し抜いて投資の超過リターンを上げることができるだろう。しかし、そのような市場を出し抜く超過リターンが偶然以外の理由で得られることは市場が効率的であることを自己否定することになる。
 
従って、市場が(少なくとも近似的には)効率的であると言う主張と、「バブルの理論モデルができなければバブルが存在するという判断はできない」というインタビューで述べられた主張は、原理的に矛盾すると思うのだが、いかがだろうか?
 
この矛盾を回避する唯一可能性があるバブル現象のモデル化は、カオス現象としてバブルを捉えることかもしれない。カオス的な変動は、比較的単純で決定論的なモデルが生み出す予測不能の変動である。
 
なぜ決定論的なモデルが予測不能の結果を引き起こすかというと、端的にはバタフライ効果として知られているように初期値に対する依存性が極めて高いので、ほんの微細な条件の変化でも、それまでの経路から大きく外れた結果を導くからだ。
 
そうした視点からのバブルとその崩壊を説明しようとするアプローチも試みられている。
ただし果たしてファーマ先生が求めているバブルの理論モデル化が、そうしたカオスを中心とする複雑系研究家のモデルを念頭に入れたものかどうかは、この記事からはわからない(おそらく違うだろう)。
 
要するにファーマ先生の表現を借りれば、次のように言うのが正しいのではないか。「経済学は、バブルとその崩壊の原因について実はうまく説明できていない。」 そしてうまく説明できていない最大の原因は、市場参加者の合理性と情報の完全性を前提にした効率的市場仮説をベースにモデルが出来上がっているからだと、私は思う。
 
私は効率的市場仮説の内容を全否定する考えはない。特に、市場活動(経済活動)の自己言及性という点については真実だと考えている。これは私の著作の中でも繰り返し強調している例えで言うと、本日午後の降水確率90%を信じて、皆が傘を持って外出すると、午後には雨は降らずに晴れ上がってしまうという人間活動の本質だ。 
 
従って天気予報のように客観的で信頼度の高い予測は原理的に成り立たない。十分な事実認識と合理的な判断による予測が当たるのは、その予測が一般的に知られていない、あるいは信じられていない場合だけであるという一種のパラドックスである。
 
本件テーマを考える上で参考になる一般図書を2つだけ紹介しておこう。
ジャスティン・フォックス「合理的市場という神話」東洋経済新報社、20101年
ベノワBマンデンブロ「禁断の市場 フラクタルで見るリスクとリターン」東洋経済新報社、2008年
 
 
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解けましたあ! 
↑ NHKBSドラマ「ハードナッツ」の数学ガール、くるみ(橋本愛ちゃん)のセリフ
 
いやあ・・・わかったんです。
エヴァンゲリオンと今年大ヒッのトマンガ&アニメ「進撃の巨人」が大受けになった共通点が・・・・。
 
エヴァの主人公、碇シンジ君、キャラは優柔不断でトラウマ(「父に捨てられた、愛されていないのでは・・・」)を抱え、悶々とするタイプ、「がんばらなきゃ」と思う時もあるのだが、ポジティブになりきれない自分自身に悩むタイプ
要するにシンジ君は現代の草食系男子の先駆者&象徴だね。
 
直属の上司は父、碇ゲンドウ、使命に殉教するタイプで、そのためなら冷酷に徹する。
 
一方、エヴァに登場する女性達は、それぞれのキャラは違うが、みな迷いがなくて強く、危機が迫ると躊躇なく戦闘モードに移行する。要するにビシ、バシとしている肉食系女子。
ミサト、レイ、アスカ、リツコ、この点でみな共通している。
 
エヴァの登場人物は以下サイト参照
 
進撃の巨人の主人公、エレンも優柔不断で決断仕切れない自分に悩んだり、後悔したりするシーンが繰り返し出てくる。 「ボクも戦うぞ~」と男を見せる時もあるのだが、戦闘スタンスが不安定で持続性に欠け、しかも最大の敵「女型(めがた)巨人」にボコボコにやられる。
 
直属の上司はリヴァイ兵長は、戦闘能力抜群で、任務のために手段を択ばない冷酷なキャラ
 
一方、登場する主要女子キャラは、やはり迷いのない強いタイプ。ミカサ、アニなどこの点で共通している。
進撃の巨人の登場人物は以下サイト参照
 
もう、わかりましたね。
これはいわゆる草食系男子と呼ばれるちょっと気の弱い、迷いの多い男子君から見た今日の社会イメージ、人間群像そのものなんだ。
 
同世代では、迷いもなくガシガシ勉強したり、スポーツしたり、就活したりする肉食系女子群の台頭に「およよよ」と圧倒されている。 社会に出ると、仕事のためには「なんでもするぞ!」という上司が怖く冷酷な存在に見える。
 
「ボクもがんばらなきゃ・・・」とは思うのだ、その気合がなかなか持続せずに、「なんで君たちはそんなに迷いもなくがんばれるの・・・?」と違和感を感じてしまう。世界ではガンガン戦いが続いているが、そもそもなんでこんなにしんどい戦いが起こっているのか、根本のところで、主人公も視聴者もわかっていない。
 
そうした草食系男子諸君がたっぷりと共感し、自己投影できる迷い多い男子キャラを主人公にしてエヴァも進撃の巨人も謎めいた物語を展開している。 これがこの2つの物語が現代の草食系男子層を中心に圧倒的な人気を博した要因ではないか・・・・・と思うのだ。
 
まあ、それでも、進撃の巨人の主人公、エレンは迷いながらも成長を遂げている感じがする。いつか女型の巨人を打ち負かし、人類解放に道を拓くのではないか・・・という感じでアニメは途中まで来ている。(私はマンガは読んでいない。アニメしか見ていません)
 
旧世代男としては、エレン君の成長に期待しましょうかね。
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
 

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