たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2015年07月

今の日本の個人投資家の人気高金利途上国通貨と言えば、ブラジルレアル、ロシアルーブル、トルコリラが御三家であろう。 実際、ブラジルレアルについては、直の債券投資だけでなく、レアル買い(対米ドル)の為替リスクを組み込んだ投資信託が「高配当」をうたって販売されている。 ロシアルーブルやトルコリラも以前から高金利に惹かれて債券が販売されている。

当ブログのリピーターの方々は、弊著などお読みになり、高金利通貨=高インフレ通貨=長期的には購買力低下=為替相場下落という原理に従って、金利格差は為替相場の変化で長期的には相殺されることをご理解いただいているものと思う。

簡単に復習しておくと以下の通り。

相対的購買力平価=起点時点の為替相場×自国の物価指数/外国の物価指数
(起点時点の物価指数はいずれも100とする)

実質相場指数=名目相場/相対的購買力平価
(普通は100をかけて起点時点を100とした指数で表示する)

名目相場(市場相場)が相対的PPPを中心に乖離と回帰を繰り返すということは、実質相場指数がその長期の平均値から乖離と回帰を繰り返すことを意味する。

ところで、当該通貨相場が大きく急落、暴落した割安な局面で投資すれば、超過リターンを得るチャンスがあることも事実だ。 急落、暴落した局面というのは、つまり相対的購買力平価に比べて大きく値下がりした局面=実質相場指数が長期の平均値から大きく下落した局面ということだ。

実際、私も昨年暮れからの原油価格の急落を反映したロシアルーブルの急落はそうしたチャンスのひとつだろうと判断して、今年の2月にロシアの中長期債(現物)とロシア短期債の投資信託を買ってみた。

ただし、対円では現下の円相場が超割安なので、円売り・ルーブル買いの持高にする気は全くないそこで対ドルでの為替持高にした。

どういうことかと言うと
ルーブル買い・ドル売り=ルーブル買い・円売り+円買い・ドル売り
と分解できるので、円でルーブルを買い、同時にドル円でドル売りの持ち高をFXトレードで保有すれば、ルーブル買い・ドル売りの持高になる。

今年の5月頃まで暴落後のルーブルの反発で購入時から3割ほど評価益となり、絶好調だったが、6月以降再び原油価格が軟調となり、ルーブルも再度軟調の展開で、評価益の半分程度を失った。まあ、そんな大きな持高ではないので、もうしばらくキャリーしてみようと思う。

かねてよりトルコリラやブラジルレアル債などに手を出している方々がいるであろう。そこで以下の上段の図が3つの通貨の対米ドル実質相場指数と長期平均値である。下段の図は名目相場(市場相場)である、

これで俯瞰すると、ルーブルはやはり1999年ロシア危機でルーブルが暴落した時が最も割安だった。

レアルは2001年のアルゼンチンのデフォルト後、ブラジルでも資金逃避的な情況になったが起こった2002-03年の暴落局面が突出している。

また2005年、06年以降は大型途上国ブームで総じて各通貨割高の(平均値よりも上にある)時期が長く続いた。2008年のリーマンショック直後に急落した場面があったが、それは短期的だった。

そして3通貨とも2014年第4四半期から再び平均値を割り込んで、下落に転じているが、過去の大幅な割安時に比較すると、その割安程度は穏やかな程度にとどまっていると言えよう。

さて、現下の状況をどう判断するか? 

シナリオ① 各国が「危機」と言うほどの事態に今後展開していくのであれば、下落はまだ始まったばかりであり、既に買っている方はこれから「長い冬」を覚悟しなければならないだろう。

シナリオ② 今までの大型途上国ブームは終わったものの「危機」には至らず、これまでの過大な期待が調整される程度の局面だと考えるならば、買っても良いのかもしれない(その場合でも分割して購入し、タイミング・リスクを平準化することが大切)。

私自身は、「中国のバブル崩壊⇒経済失速」が現在進行中であり、これがこれまでの大型途上国への投資ブームの反動をけっこう大きく、かつ長いものにする可能性(主観的に3割前後の確率)があり、①と②の中間程度のシナリオが展開するのではないかな・・・と感じている。 ドル金利の引き上げによるマネーフローの変化・調整もドル高・各通貨安だろうか。

というわけで、高金利通貨投資のお好きな方々のご参考まで・・・。
各通貨の市場相場(名目相場)を見るには以下のサイトのチャートが便利でだろう。

注:データの制約などに関するお断り
実質相場指数を計算する際の物価指数は、貿易財を主とする生産者物価指数、あるいは企業物価指数が望ましいと考えているが、途上国では消費者物価指数しか公表していない先が多く、本件図表も消費者物価指数に基づいている。

また、使用したIMFのデータでは年間ベースの物価指数しか取れないので、年間平均物価指数のデータを月次に調整することで計算している(後日、月次物価指数で再計算する予定)。

もちろん、本件図表を参考にどのような取引を行っても、その結果には筆者は全く関知しない。また図表の正確さについても筆者は責任を負わない。


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私が著作で度々紹介し、ホームページで公開している東京の中古マンション価格指数、賃料指数、そしてPRR(Price Rent Ratio=Price/Rent)のグラフを更新したので、このブログで強調しておこうか。

PRRは私が著作などで繰り返し説明している住宅価格の割高・割安を見抜く指標であり、グラフでは赤線で示してある。株価のPER(株価収益率)に準じた概念だ。

一目でわかる通り、東京で内外の不動産ファンドがプチバブルに踊った2006-07年を超える割高圏に突入している。今回の特徴は賃料の伸びが非常に鈍く、ほとんどフラットに近いことだ。2006-07年の時はもう少し賃料の上昇があったのだが。

理由は明白で、名目賃金の伸びが依然鈍いからだろう。ローンで買ってしまう住宅価格と違って、ローンで賃料を払う人はいないので、賃料の変化は専ら賃金所得の伸びに依存しているということだ。

企業利益の伸びが絶好調なのに、賃金の伸びが冴えない構造については、前回「円安がもたらす国内所得分配への影響」で書いた通りだ。この先、景気の回復がさらに続けば、賃金の伸びももう少し高くなってくる・・・そうすれば賃料ももうちょっと上がる、と予想しているが、それでも既にかなり割高になってしまった価格のほんの一部を正当化するだけだろう。

誰が割高になったマンションを買っているのかについては、例えば日経新聞の以下の記事が報じていることに違和感はない。

「不動産、中国リスクの影 富裕層マネーの退潮懸念」
日本経済新聞(7月10日付)

引用:「都心のマンション価格はリーマン・ショック前と同じ6000万円台に上昇した。「買い手は節税対策の日本の富裕層と海外マネーが中心」(野村証券の福島大輔アナリスト)という不動産市場で「都心立地を好む中国人客は最後の買い手」(大手不動産会社幹部)なのだ。

中国人が日本で不動産を買う際は全額現金で払うケースが多い。個人が中国から資金を海外に持ち出すのは難しいとされるが「海外企業設立や留学資金など名目を変える方法はたくさんある」(不動産関係者)。

上海株相場の崩落が予感させるのは、様々な経路で日本の不動産に流れ込んでいる中国の富裕層マネーが細る懸念だ。」
***

超スローモーションで崩壊する中国不動産バブルの最中に、官制株式バブルが超高速で膨張と崩壊を起こした現象は、非常に興味深いが、これを契機にアジアからの不動産マネーが細るのかどうかはよくわからない。むしろ、汚職摘発と不動産バブル崩壊が進むおかげで、ますます海外に逃げる資金が増えるというシナリオもあり得るからだ。

しかし、2007年夏のサブプライム危機を契機に、日本でも外資系の不動産ファンドが一斉に停止、あるいは撤退をしたことを想起しておこうか。まあ、それでもそういう変化に鈍感な投資家、事業家もいたので、私は07年夏秋に2物件高値圏で売り抜くことができたわけだが。

2015年のこんな割高圏で買えば、投資の失敗は約束されているようなものと思うのだが、買っている連中も「2020年のオリンピック前に売り抜く」が合言葉になっているとか。本当に多数派がその気なら、そのシナリオはどこかで崩れるのが必然だろう。 

私自身は2012年から14年に、築浅の物件を今から見るとかなり安めに(リターン高めに)複数買うことができた一方、長く保有した物件を2つ高値圏で売ることができ、ポートフォリオの入れ替え完了。 株価も上がってくれたおかげで、半分以上売って得た資金で、ローンの返済も完了したので、ここは当分様子見といこうか。

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