たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2016年09月

今月のトムソン・ロイター社への寄稿論考です。

冒頭引用:「米国では9月のドル金利引き上げが見送られた一方で、12月は金利引き上げを見込む向きが据え置き予想をやや上回っている。日本、欧州ともにマイナス金利からの出口が見えない中で、先進国で米国のみは金利の上昇が展望されている。

 今年前半の米国経済はGDP伸び率に見る限り不冴えだったが、後半から来年にかけては盛り返しを予想する向きもある。超低位安定を続けていた米国の長期金利が来年にかけてどこまで上がるか。それ次第で世界の株価から為替相場まで左右されるだろう。今回は来年にかけてのドル長期金利(10年物米国債利回り)の見通しを考えよう。

 結論から言うと、現在の穏やかな景気回復シナリオが持続する限り、10年物米国債利回りは上昇トレンドを見込むものの、現在の1.6%台から1.62.8%のレンジにとどまり、為替相場を含む金融市場全体への影響は穏やかなものにとどまるだろう。ただしリスクは利回りの下振れではなく、むしろ上振れだろう。また米国経済の景気後退が来年中にも始まるとの予想が一部にはあるが、その可能性は乏しい。その理由を以下ご説明しよう・・・」

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同社サイトには図はひとつしか掲載できないので、このブログに関連参考図を2つ掲載しておきます。
上段の散布図が、ロイター社サイトにも掲載した米国のGDPギャップと長短金利差(財務省証券10年物利回り-3か月物利回り)です。 

下段の図が同じく米国のGDPギャップと物価指数(Personal Consumption Expenditure Price Index excluding
food and energy)の前年同月比(%)です。やはりきれいな相関関係が見られます。2014年以降の数期は物価上昇率が近似線から下にシフトしているのが気になります。 詳細は分析していませんが、食料とエネルギーを除く指数ですが、国際的な天然資源価格の下落の影響を間接的に受けているのかもしれません。

しかし2016年2Qの時点では物価上昇率も持ち直してきているので、今後穏やかながら景気の回復が続けば近似線が示す右肩上がりのトレンドに戻り、GDPギャップが-1.0~0.0のレンジに入ってくると物価指数の上昇率もFRBの目標の2.0%を上回り始める可能性が高いことを近似線(回帰方程式)は示しています。そうなると金利の上昇テンポも早まるでしょう。 

それはいつか?実質GDP成長率2.0%で今後進むと、それは2018年後半、2.5%で進むと2017年後半になります。GDPギャップとは、GDP実績値と潜在GDPのギャップ(比率)であり、潜在GDP自体推計でしかないのですが(それを言えばGDPも推計でしかない)、いろいろ使えてエコノミストとしては面白いものです。


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早川書房、2016年7月

面白い。

内容的にはこれまで行動経済学の代表的な研究成果として紹介されていることなんだが、リチャード・セイラー教授がまだ「駆け出しの若造」だった頃から、合理的期待形成や効率的市場仮説を信奉する主流派の経済学者らに、ある時は叩かれ、ある時は無視されながら歩んできたプロセスが語られている。
...
論敵の先生方みなご指名で登場し、「あの時、この方はこう言って叩いてくれた」「この方は、こんなことまで言ってくれたよね」とセイラー教授のジョークをまぶして仕上がっている。その意味では「Rセイラーの逆襲」と題してもいい。

今では行動経済学派の創始者的存在のジョージ・アカロフ博士を含め幾人もノーベル経済学賞を授与され、確固たる流れを占めるようになった学派であるが、主流派との論争は尽きない。

わたし的には第6部「効率的市場仮説に抗う」が一番面白く、幣著「なぜ人は市場に踊らされるのか」(2010年)「稼ぐ経済学」(2013年)でも強調した視点、論点が論じられている。
まるで私自身が書いたような文章に出会う(^ ^;))。

大学のゼミでは、幣著「稼ぐ経済学」のあとバートン・マルキール著の「ウォール街のランダムウォーカー」をテキストで勉強させているのだが、マルキールの論理的な不整合、つぎはぎ的な折衷にもかかわらず、効率的市場仮説の擁護に固執する感じにだんだん嫌気がさしてきた。

この秋スタートする演習では、「ランダムウォーカー」の最後の凡庸な章をスキップして、この本の第6部「効率的市場仮説に抗う」を読ませることにしよう。



マンション暴落が来る?
まあ、1980年代末のような狂い方ができるほど、日本人は既に若くないから、基本はプチ下がりだと思う。
それでも直近の高値から20%も下がれば、在庫を抱えた業者は大赤字、資金繰りに行き詰まる業者も出てくるだろう。

私が近年継続的に見ている添付のグラフ(上段)は、成約件数に対する在庫比率(赤線)が上昇し(左、逆メモリ)いよいよ「水位が満杯まで上がったダム」の感じになってきた。在庫比率の変化は価格の変化に対して約1年弱先行している。つまり在庫比率が上がり過ぎると(逆メモリなので下に動くと)1年弱遅れて価格が下がり始める。 今年の4月にマンション価格の割高を警鐘した時よりもさらに在庫比率の上昇が鮮明になっている。

中古マンション価格指数(青線、右メモリ)は前年同月比でまだ5%弱のプラスだが、前月比ベースではマイナスの月も出始めている。下段のグラフは著作で紹介してきた中古マンション(東京)のPRR図表だ。 

以下の9月13日の日経新聞の以下の記事も、「ダムの決壊」が遠くないことを示唆する前兆現象を記述しているように思う。
 
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日経新聞引用:「「投資用マンションを買える顧客の目安は数年前まで年収600万円以上だった。今は銀行審査が緩くなり400万円でも購入できるようになった」(不動産会社幹部) (そんな輩は2~3か月も空室になるとローンの返済ができなくなり、結果として担保物件が安く売りに出てくる。竹中)

 融資の現場では「不動産の担保価値の100%を融資します」といったローン商品でノンバンクが銀行から顧客を奪っている。対抗するため大手行でも厳格な返済条件を課すなどした上で「担保価値の120%貸す裏技も登場している」(関係者)という。

 「もう1棟、1億円の物件を買いませんか」。福岡県で2億円のマンション1棟を買った年収1000万円の会社員は最近、こう誘われた。もう1棟買えば3億円の借金を抱えるが「銀行融資は通りますよ」という誘いに心が揺れる。地銀の今年6月末の事業融資残高は前年比2.9%増。うち2%分は不動産向けだ。信用金庫では2.1%増のうち1.7%になる。」

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ただし今回局面がこれまでのマンション市況の循環と異なるのは、長期国債利回りがマイナスにまで下がり、運用難に陥った長期運用資金の一部が不動産にシフトしている可能性があることだ。現下の超低金利はまだ長引くだろう。そうすると割高に見えるマンション価格も過去より持続する可能性は捨てきれない。

それを検証するために、長期金利と東証REIT指数や中古マンション価格指数の変化の相関関係をチェックしてみたが、とりあえず有意な関係性を見出すことはできなかった。この点は引き続き検討事項として、何か発見があればブログで追報しよう。

追記:不動産経済研究所、8月のレポート、新築の下落は始まりましたね。


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