今月のトムソン・ロイター社への寄稿論考です。
冒頭引用:「米国では9月のドル金利引き上げが見送られた一方で、12月は金利引き上げを見込む向きが据え置き予想をやや上回っている。日本、欧州ともにマイナス金利からの出口が見えない中で、先進国で米国のみは金利の上昇が展望されている。
今年前半の米国経済はGDP伸び率に見る限り不冴えだったが、後半から来年にかけては盛り返しを予想する向きもある。超低位安定を続けていた米国の長期金利が来年にかけてどこまで上がるか。それ次第で世界の株価から為替相場まで左右されるだろう。今回は来年にかけてのドル長期金利(10年物米国債利回り)の見通しを考えよう。
結論から言うと、現在の穏やかな景気回復シナリオが持続する限り、10年物米国債利回りは上昇トレンドを見込むものの、現在の1.6%台から1.6-2.8%のレンジにとどまり、為替相場を含む金融市場全体への影響は穏やかなものにとどまるだろう。ただしリスクは利回りの下振れではなく、むしろ上振れだろう。また米国経済の景気後退が来年中にも始まるとの予想が一部にはあるが、その可能性は乏しい。その理由を以下ご説明しよう・・・」
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同社サイトには図はひとつしか掲載できないので、このブログに関連参考図を2つ掲載しておきます。
上段の散布図が、ロイター社サイトにも掲載した米国のGDPギャップと長短金利差(財務省証券10年物利回り-3か月物利回り)です。
下段の図が同じく米国のGDPギャップと物価指数(Personal Consumption Expenditure Price Index excluding
food and energy)の前年同月比(%)です。やはりきれいな相関関係が見られます。2014年以降の数期は物価上昇率が近似線から下にシフトしているのが気になります。 詳細は分析していませんが、食料とエネルギーを除く指数ですが、国際的な天然資源価格の下落の影響を間接的に受けているのかもしれません。
しかし2016年2Qの時点では物価上昇率も持ち直してきているので、今後穏やかながら景気の回復が続けば近似線が示す右肩上がりのトレンドに戻り、GDPギャップが-1.0~0.0のレンジに入ってくると物価指数の上昇率もFRBの目標の2.0%を上回り始める可能性が高いことを近似線(回帰方程式)は示しています。そうなると金利の上昇テンポも早まるでしょう。
それはいつか?実質GDP成長率2.0%で今後進むと、それは2018年後半、2.5%で進むと2017年後半になります。GDPギャップとは、GDP実績値と潜在GDPのギャップ(比率)であり、潜在GDP自体推計でしかないのですが(それを言えばGDPも推計でしかない)、いろいろ使えてエコノミストとしては面白いものです。
近著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法」(光文社)2013年5月20日
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