これは1950年代後半から60年代初頭の戦慄すべき中国現代史の一局面を描いた書である。著者はロンドン大学の教授で香港大学でも教鞭をとっている。
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1958年の「大躍進政策」からその破綻、大飢餓に至る時代を対象にした書籍は多数あるが、中国の膨大な資料を丹念に引用しながら描かれた本書はその資料面での豊富さと網羅性において傑出している。
「一気に共産主義社会を実現する」という非合理的な情念(というよりは狂気)に取りつかれた独裁者毛沢東のイニシアチブで、共産党組織全体に狂気と圧政、民衆への暴力が横行した。結局、合理性のかけらもない政策が次々と破綻し、全国的な飢餓がひきおこされる過程が、詳細に描かれている。推定で4500万人が飢餓、拷問を含む組織暴力で死に追いやられた(当時人口は6億人台)。
中国の故事に言う「苛政は虎よりも猛し」そのものだ。日本軍による中国侵略時の圧政と暴力すら、比較するとかすんで見える。 しかも、この時代の暴力と凄惨さは、1960年代半ばに始まる文化大革命の序曲でしかなかった。
その戦慄的な実態は、その規模と凄惨さにおいて、ナチスのユダヤ人殺戮、スターリンの大規模粛清、民族弾圧に匹敵する、あるいはそれを上回るものとして歴史に刻まれるだろう。本書はその歴史への「太い刻み」として今後必読の一冊となるだろう。
今の中国共産党は当時よりはモダンになったようにも見えるが、当時と同じDNAは1989年の天安門事件の時に顕在化した。今も同じDNAが潜在しているリスクを感じざるを得ない。
その戦慄的な実態は、その規模と凄惨さにおいて、ナチスのユダヤ人殺戮、スターリンの大規模粛清、民族弾圧に匹敵する、あるいはそれを上回るものとして歴史に刻まれるだろう。本書はその歴史への「太い刻み」として今後必読の一冊となるだろう。
今の中国共産党は当時よりはモダンになったようにも見えるが、当時と同じDNAは1989年の天安門事件の時に顕在化した。今も同じDNAが潜在しているリスクを感じざるを得ない。
また北朝鮮では、本書に描かれた50年~60年前の中国と似通った状況が展開しているはずであり、これは過ぎ去った過去の出来事ではないとも言えようか。
ちなみに、日本では1970年代にはこうした「中国社会主義」の人命無視、圧政・弾圧の実態が情報としてはかなり流れてきていたが、1970年代後半になっても日本の左派の一部には依然としてこの時代を含めて中国共産党を賛美・礼讃する人々が根強く残っていたことも書き添えておこうか。あの方々は今どこで何を考えているのかなあ・・・。