昨日3月18日の読売新聞はこの調査結果を一面にしていたので、ご覧の方も多いでしょう。
以下は時事通信の記事です。
47%が「時間がない」=がん検診受けぬ理由―内閣府調査
引用:「内閣府は16日、「がん対策に関する世論調査」結果を発表した。がん検診を受けない理由(複数回答)は、「時間がない」(47.4%)が最も多く、「がんと分かるのが怖い」(36.2%)が続いた。厚生労働省の統計では、受診率は依然として2~3割にとどまっており、同省は「調査結果を踏まえ、実態に即した対策を検討していく」としている。
調査は1月17日から同27日まで全国の成人男女3000人を対象に個別面接方式で実施した。」
これを見て少し驚いた。だって「がんと分かるのが怖い」という理由が36%もいるなんて、日本人ってそんなにバカが多かったの?と思ったからだ。
「がんと分かるのが怖い」からがん検診しない方でも、がんで死にたいとは思っていないわけだ。だったらコストとか時間などの制約がないかぎり、受けるのが合理的な判断でしょ。
あるいは通常、所属組織で行なわれている定期健診でがんも発見できると、なんとなくイメージしているとかの理由なら、理解はできる(実は定期健診では、がん検診が含めれていない場合が圧倒的だ)。
それで内閣府のサイトで報告書のオリジナルを見ようとしたら、平成19年の調査結果か出てきた。ところが私は最初それが旧い調査だとは気がつかなくて見たのだが、「結果が不安だから受けたくない」は5.2%というデータだった。
それでこれは一体どういうこと?記事がでたらめ?とかfacebookに書いて、お騒がせしたんだが、実は当日はまだ内閣府のサイトには今回の最新結果が掲載されていなかったという顛末。
で、本日掲載された今回の調査結果を見て、平成19年と今回の調査の結果が大きく違うことがようやく分かった。
今回の調査結果はこちら
平成19年と21年の旧調査では、自分ががん検診を受けていない理由を複数選択可で問うている。
そうすると平成21年の調査では4.8%の人が「結果が不安だから受けたくない」を選んでいる(複数選択だから合計は160%になる。平成19年の調査結果もほぼ同様だ。
ところが今回は設問を変えて、
「日本のがん検診の受診率は,20-30%程度と低く留まっています。あなたは,多くの方ががん検診を受けないのはなぜだと思いますか。この中からあてはまるものをいくつでもあげてください。」と尋ねている。
すると、どうだ、「がんであると分かるのが怖いから」を選んだ人が36.2%にはね上がった(複数回答なので合計は262%)。 要するに「他の連中ががん検診をあまり受けない理由について、あなたはどう考えますか」という趣旨に設問が変わっているわけだ。
これをメディアの報道は、過去の設問との違いなどの説明も抜きに報道しちゃうので、わけわからん状態になった。
で、教訓として何が言えるかと言うと・・・
①やはりアンケートというのは設問次第で生じる回答は大きく違ってくる。
②人間は自分に関することではおバカな理由付けを回避しようとするが、他人のことについては「バカな理由で選択している」と判断する傾向があるかもしれない。
③しかし本当にがん検診を受けない事情を調査するならば旧来のアンケートの設問の方が適切なのではないか?
というわけで、あんまり面白くもない顛末だったが、facebookで「この記事、おかしい」とか騒いだので、ご説明もかねてブログにしておきました。
がんと検診に関する私のスタンスは以前以下の通りブログに書いたので、ご参考まで。
手短に言うと、がん保険に年間数万円も払うより、毎年1回総合的ながん検診を受信する方が、合理的な選択ですよということに尽きる。
みなさん、がんで早死にしたくない限りは、毎年がん検診を受けましょう!
今日のがん検診は昔よりスマートになって、「直腸に指突っ込む方式」などは一般的ではなくなっているようですということも言い添えとこうか(^_^;)
以下は国立がん研究センターのがん検診に関するサイトです。
追記:がんの治療費については以下のサイトが、参考になりそうです。
特に「高額医療費の月別自己負担額上限」などご注目ください。
高額医療費制度が自己負担の上限を設定してくれますので、「治療費が途方もなくかかる」というイメージは誤っています。
追記その2:「がん統計」(財)がん研究振興財団 ←有益
がんの部位別、進行度別の5年後生存率のデータ他
以下のサイトの図表編7、「地域がん登録における5年生存率」をご覧ください。
「局所=早期がん、領域=進行がん、遠隔=末期がん」という表記になっているようです。
やはり早期がんの段階で発見できれば、5年後生存率は90%を超えていますね。
ただし5年で計測するのが標準化されているようで、10年後生存率データは一般的ではないようです。
5年以降の発病は、新規のがん発生と見るからでしょうか。
10年後生存率のデータと検証を必要だと主張するサイトもありました。
追記その3:がん検診と早期発見に関する各種サイト
どうやらコメントを寄せてくれた方々を含めて、癌治療などを批判した近藤誠氏の一連の著作の影響が強いようですね。興味がわきましたので、本件はしばらく時間をかけて勉強して後日再度とりあげましょう。
とりあえず今のところ、以下のサイトが参考になりました。
American Cancer Society
Cancer Prevention & Early Detection Facts and Figures 2010
WHO
Early Detection of Cancer
上記2つのサイトではがん予防の並んでearly detection(早期発見)のための検査の普及の必要性が語られていますので、「欧米では早期発見のための検診の有効性が否定されている」というのは、控えめに言って、言い過ぎでしょう。ただし、もちろん全ての検診の有効性を無条件に意味するものではありません。
がんちりょうドットコム
上記のサイトは、主催者の正体が不詳なので、それを前提に読む必要がありますが、比較的バランスのとれた書き方をしているように感じました(ただしくりかえし断っとくけど、私は医療もがんも素人ですからね。内容の真偽には責任負いかねます)
患者よ、癌と闘うな?
麻酔科の医師の個人サイトです
近藤誠氏vs.丸山雅一氏の論争(近藤氏の本への丸山氏の批判)が整理されています。
科学的根拠に基づくがん検診推進ページ
追記4:
近藤誠氏の本を読んで感化を受けた方は、次のように自問してみると良いだろう。あなたが今日病院で胃がんだと診断された。ただし早期の段階なので医者は手術で除去すれば90%以上完治すると言う。さてあなたは手術を受けますか?それとも近藤氏を信じて、手術は無駄だからと拒否しますか?
もちろん私は摘出手術を受けます。
追記5(2013年12月22日)
やはりこちらの主張に真実を感じますね。
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本件ブログと同じ内容です。
定着したら、そちらにシフトするかもしれません。