たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

タグ:その他金融と投資

ダイヤモンド・オンラインに寄稿しいました。
2020年末までの相場見通しの結論は昨年末に「現代ビジネス」に書いた時と同じですが、楽観、悲観、弱い悲観の3通りのシナリオに基づく日経平均の予測推計値を示しています。
 
引用:「結論から言うと、今年後半に海外と日本の景気が持ち直すとの期待もあるようだが、その可能性は控えめに言っても高くない。仮にそうなった場合でも、株価の上昇余地は相対的に小幅だろう。

 むしろ2020年末までを展望すれば日米欧中が景気後退に移行する可能性は高く、その場合、日経平均は1万5000円前後までの下落、ドル円相場は1ドル90円前後までの円高をとりあえず覚悟した方が良いだろう。」


 「どのようなことがあれば、この動きが上向になり得るだろうか。1つは米中の貿易戦争で何かしらの妥協が成立し、米中相互に関税の撤廃が起こることだろう。その可能性は否定しない。その場合には株価もいったん跳ね上がることだろう。そこは日米ともに株式ポートフォリオを減らす、あるいはヘッジを入れるチャンスだと考えている。」

 「長期投資で成功する基本原則の1つは「魚の頭と尻尾はくれてやれ」である。図表2に示した予測推計は、日本株が「魚の頭」の局面に入っていることを示唆しているように思う。」

***
イメージ 1

イメージ 2

講談社現代ビジネス、マネー現代への寄稿です。今朝掲載されました。
先日ブログに書いたテーマですが、もう少し膨らませて丁寧に書いております。
データも一部修正があります。

***

引用:「2008年のリーマンショック以降、長期的には持続不可能な信用・債務膨張に支えられてきた中国経済が、ようやく本格的な債務調整局面に入りつつあるように見える。私が「中国バブルの『ミンスキーモメント』」 (2016年1月)を某大手情報通信社のコラムで掲載してから3年が経った・・・」

「ここまで述べた通り、中国政府も景気の底支えに金融・財政政策を発動し始めているので、一気にクラッシュ型の危機と不況に移行することは当面避けられるかもしれない。
しかし、それは必要とされている過剰債務の整理を先送りするだけで、中国の経済成長率の一段の低下は避けられまい。

相対的に堅調な米国経済もクレジットサイクルの視点から見て、2009年以来の景気回復期の最終局面にあり、2020年頃から景気後退期に移行すると筆者は考えている。
米国の対中国関税の引き下げや撤廃で米中の貿易戦争が休止になれば、短期的には世界全般に株価の一段高があるかもしれない。

したがって、そこは株価指数のベア・ファンドや先物で部分的ながらもヘッジの売りを入れ、次の景気後退期までリスク性資産の買い増しは待機する方針だ。」

***



現代ビジネス(マネー)への寄稿論考です。11月5日(月)朝、掲載されました。
この前のブログで書いたことですが、加筆修正し、もっと丁寧に説明しています。
図表も最新データに更新済。

引用:「筆者は本業のかたわら個人投資家として、中古のマンション投資を始めてから20年となる。始めた最初の年は1998年であり、銀行不良債権危機で深刻な不況となった時だ。

おそらく「今が底値圏だ」という直感的な判断で始めたのだが、その後、エコノミストとして東京を中心にマンション市場のマクロ動向を分析し、マンションの購入と売却のタイミングを判断する多少役に立つ知恵を得た。

過去何度か著作の中で紹介しているが、改めてそれに基づいた現在と今後の市況についての判断をご説明しよう・・・」

 

毎度のロイター・コラムです。
本日夕刻に掲載されました。


抜粋引用:「むしろ注視すべきは長期にわたるハイテク分野での米中覇権争いの方だ。この点に関連しては少し前になるが、「米国経済の優位はこの先10年続く」(2015年1月14日付)のコラムでの「イノベーションにおける米国の優位」で述べた内容から私の見解は変わっていない。「この先20年」に延長しても同様だ。そのように考える論拠を1つだけ示しておこう。

今日、アマゾン・ドット・コムやグーグル、フェイスブックなどに代表されるプラットフォーム・ビジネスが人工知能(AI)やクラウド技術を伴って世界を席巻している。中国でも巨大な国内市場規模をベースに同様の企業の台頭が顕著だ。

ところが、中国は国家としてジョージ・オーウェルが小説「1984年」で描いたような監視社会、ビッグブラザー資本主義に向かっている。つまり、中国系プラットフォーム企業を利用することで情報が中国共産党に筒抜けになる体制だ。中国国内であればそれで仕方がないと思うのだろうが、中国外でそのような仕組みを受け入れることは、ユーザーにとっても、その国の政府にとってもあり得ないだろう。そこに限界が生じる。 」

米国の景気後退局面では株価指数は間違いなく下落し、回復期には期待に違わず上がってくれるので、不況期に少し買い増しさえすれば、長期の年率リターンが10%を超えることも容易だ。にもかかわらず多くの日本の投資家が、長期的には為替相場の変動で円金利利回りと同じ低リターンに収束する高金利外債投資という無駄な投資を繰り返してきたのだ。 

2008年のリーマン・ショック時の米国株価暴落は絶好の米国株投資チャンスだった。私が著書「ラーメン屋vs.マクドナルド」)で「日本の個人投資家層も万羽のミニハゲタカとなってよろめく巨象、米国の金融資本市場をついばもう」と書いたのは2008年9月だ。

ところが、残念なことに世間に出回る「米国金融資本主義凋落論」などに幻惑されて、米国株式投資に動いた日本の個人投資家はわずかだったはずだ。次の米国景気後退局面では、日本から万羽のミニハゲタカが米国資本市場の空に舞うことを願っている。」

***


毎度のロイターコラムです。


冒頭引用:「1990年代以降の株価指数を俯瞰(ふかん)すると、日経平均では2万円を少し超えた水準で幾度も上昇トレンドがはね返され、日本株は長期右肩上がりのトレンドを失っていた。

米国株を含む海外主要先進国の株価指数が長期右肩上がりのトレンドを維持していることに比較すると、これは異色の出来事だ。もっとも、上場企業全体の時価総額で見ると、今年5月末は676兆円で、バブルのピークだった1989年12月末の611兆円をすでに超えており、日本株の四半世紀の停滞は終わったという見方もできなくはない。

しかし、日経平均や東証株価指数(TOPIX)に連動するインデックスファンド投資が増える状況下、株価指数ベースで長期右肩上がりトレンドに復帰できるかどうかは、重大な関心事だ。その点で、日本株は重要な分岐点に差し掛かっているように思える・・・




イメージ 1


 

明日23日発売の週刊エコノミスト、シリーズ「出口の迷路、金融政策を問う」に寄稿しました。
ご関心のある方は、明日買って読んでくださいね・・・と思ったら、オンラインで既に全文掲載されている。これでは買わずにすんじゃうね。

けっこう大胆なこと書いてしまったような気もしますが、どうでしょうか。...
金融政策に詳しい大先生からお叱りを受けないか・・・・<(_ _)>

***

物価と雇用、バブル回避は共存しない
引用:「このようなフィリップス曲線の不安定化は中央銀行にとっては頭の痛い問題だ。スタグフレーションの下ではインフレ率を抑制するために金融を引き締めると、不況が深刻化し失業率が上昇してしまう。

 また今日のようにゼロ%に近い低インフレ下でフィリップス曲線が水平化してしまうと、名目金利を下げることで実質金利を下げ、景気浮揚効果を出すことが困難になる。

 要するにフィリップス曲線が安定的に存在しないことは、物価の安定を通じた雇用情勢の改善を困難にする。金融政策にとって「不都合な真実」なのだ。 これは言い換えると「インフレ率の安定化に適した金利水準」と「自然失業率の実現に適した金利水準」が中長期でも一致しないことを意味する。

 さらに厄介なことに「資産バブルを起こさない金利水準」が、もうひとつ違う水準として存在し、「ほどよいインフレ率の実現に適した金利水準<雇用の最大化に適した金利水準<資産バブルを起こさない金利水準」であることだ。

 この事実は80年代末の日本のバブル期も00年代の米国の住宅バブル期も、インフレ率は問題のない水準だったことが物語っている。 異なる三つの適正金利水準の存在は、現下の金融政策に関する意見対立を不可避にする・・・」

***


マンション暴落が来る?
まあ、1980年代末のような狂い方ができるほど、日本人は既に若くないから、基本はプチ下がりだと思う。
それでも直近の高値から20%も下がれば、在庫を抱えた業者は大赤字、資金繰りに行き詰まる業者も出てくるだろう。

私が近年継続的に見ている添付のグラフ(上段)は、成約件数に対する在庫比率(赤線)が上昇し(左、逆メモリ)いよいよ「水位が満杯まで上がったダム」の感じになってきた。在庫比率の変化は価格の変化に対して約1年弱先行している。つまり在庫比率が上がり過ぎると(逆メモリなので下に動くと)1年弱遅れて価格が下がり始める。 今年の4月にマンション価格の割高を警鐘した時よりもさらに在庫比率の上昇が鮮明になっている。

中古マンション価格指数(青線、右メモリ)は前年同月比でまだ5%弱のプラスだが、前月比ベースではマイナスの月も出始めている。下段のグラフは著作で紹介してきた中古マンション(東京)のPRR図表だ。 

以下の9月13日の日経新聞の以下の記事も、「ダムの決壊」が遠くないことを示唆する前兆現象を記述しているように思う。
 
***

日経新聞引用:「「投資用マンションを買える顧客の目安は数年前まで年収600万円以上だった。今は銀行審査が緩くなり400万円でも購入できるようになった」(不動産会社幹部) (そんな輩は2~3か月も空室になるとローンの返済ができなくなり、結果として担保物件が安く売りに出てくる。竹中)

 融資の現場では「不動産の担保価値の100%を融資します」といったローン商品でノンバンクが銀行から顧客を奪っている。対抗するため大手行でも厳格な返済条件を課すなどした上で「担保価値の120%貸す裏技も登場している」(関係者)という。

 「もう1棟、1億円の物件を買いませんか」。福岡県で2億円のマンション1棟を買った年収1000万円の会社員は最近、こう誘われた。もう1棟買えば3億円の借金を抱えるが「銀行融資は通りますよ」という誘いに心が揺れる。地銀の今年6月末の事業融資残高は前年比2.9%増。うち2%分は不動産向けだ。信用金庫では2.1%増のうち1.7%になる。」

***
 
ただし今回局面がこれまでのマンション市況の循環と異なるのは、長期国債利回りがマイナスにまで下がり、運用難に陥った長期運用資金の一部が不動産にシフトしている可能性があることだ。現下の超低金利はまだ長引くだろう。そうすると割高に見えるマンション価格も過去より持続する可能性は捨てきれない。

それを検証するために、長期金利と東証REIT指数や中古マンション価格指数の変化の相関関係をチェックしてみたが、とりあえず有意な関係性を見出すことはできなかった。この点は引き続き検討事項として、何か発見があればブログで追報しよう。

追記:不動産経済研究所、8月のレポート、新築の下落は始まりましたね。


イメージ 1
イメージ 2




今月のトムソン・ロイター社コラムへの寄稿です。ただいま掲載されました。
コラムでは図表はひとつしか掲載できないので、補足図表を掲載しておきます。

「株安・円高の呪縛が解ける日」↓

冒頭引用:「日本株と円相場の関係について、昨年夏の中国ショック、あるいは今年6月の英国のEU離脱国民投票をめぐるBREXITショックなど、世界経済に暗雲が立ち込め、世界中の株価が急落する時に円高に動くことが続いた。これに釈然としない方々は少なくないはずだ。メディアは「相対的にリスクの低いと考えられている円が買われて円高になった」とほとんど意味のない市況解説を繰り返してきた。この相場現象を考えてみよう。その上で現在の「株安・円高、株高・円安」という相関関係(逆相関)が崩れる可能性についても考えてみよう・・・」

途中引用:「ただし1990年代から2004年までの期間で見ると、株安・円高、株高・円安という逆相関の関係は安定的ではなかった。19902004年の期間について、月次データを使ってドル円相場と日本の株価指数TOPIXの前月比の変化で相関関係(期間1年)を計測すると、逆相関(相関係数がマイナス)が計測できるのは全期間の33%に過ぎない。また絶対値で0から1までの変域をとる相関係数(値が1に近いほど関係性が高い)が0.5を超えている期間は全体のわずか7%で、関係性は総じて弱かった。
 現在まで見られる日本株と円相場の強い逆相関は実は2005年頃から始まった。2005年から167月までの期間について同様に計測すると、全期間の96%について逆相関となり、しかも相関係数がマイナス0.51.0の高い値を取る期間が全体の60%を占める。この経緯を振り返ってみよう」

上記の部分、日本株と円相場の逆相関の関係、以下の上段の図をご覧頂ければ、わかると思います。2005年から前月比で見ても、前年同月比で見ても、相関係数はほとんどマイナス域にシフトして、しかもマイナス1に近い高い逆相関となっています。

下段の図はロイター社コラムと同じものです。

こういう現象ってアカデミズムの世界ではほとんど関心が払われていません。ああ、そうか。次はこれをもっと深堀して、論文にしようかな。


イメージ 1
イメージ 2

イメージ 3


気がついたら、金融・投資の世界はロボット(AI)だらけ!
人口知能が金融を支配する日」櫻井豊、東洋経済新報社、2016年8月

この本は日本の金融・投資に関わる全ての方々に読んで欲しい。
アマゾンでの発売日は8月19日だが、東京駅丸の内北口のオアゾ内丸善では5日から店の正面の大きな面積を平積みで占有していた。買って開いてほとんど一気に読みとおした。感銘を受けた。

Deep Learning技術により飛躍的な進歩局面に入った人口知能(AI)が、ビックデータの活用と相まって、金融・投資の世界をどれほど劇的に変革しつつあるかを平易に説いている。そしてその最先端を走るのはやはり米国であり、日本の金融・投資業界は悲しいほど遅れている。

実際、株式、債券、為替など主要な金融市場の売買はAIをバックにした超高速アルゴリズム・トレーディングに席捲されており、この分野の日本の金融機関の対応は悲しいほど遅れている(1章)。

2章では、ヘッジファンド業界では人工知能の実践的な活用のために莫大な投資がブームになっており、投資技術開発の熾烈な競争が展開している状況が語られている。ほとんどの一般の日本人には知られていない状況だ。

3章ではAIをベースにしたロボット投資アドバイザーが、米国では急速に普及し始めたことが語られている。その波は間違いなく日本にも押し寄せようとしている。

あとの章は省略するが、数理系人材として東京銀行でクオンツとして各種デリバティブの開発、運用に携わり、2000年にソニー銀行に転職し、執行役員市場運用部長として活躍した櫻井豊さんほど、本書のテーマに取り組むのにふさわしい人物はいないだろう。末尾の参考文献からは、櫻井さんが本書を書くために改めて相当勉強したことがうかがえる。
 
実は、私が東京銀行で通貨オプションデスクのチーフ・ディーラーだった時代に、櫻井さんは若きクオンツとして資本市場2部に属し、私は彼の価格モデルを頼りに日本で初めてノックアウト・オプション類(当時は「ストップション」と呼称した)の取り扱いを開始した(1989年)。

その後、ノックアウト・オプション類は為替や株式市場に広く出回るようになり、良くも悪くも度々市場やユーザーを激震(文字通りノックアウト(^_^;))するようにもなった。
最後に櫻井さんの思い(危機感)が凝縮された箇所を引用しておこう。
 
***

引用:「一方で日本の金融業界の実情はどうでしょうか。残念ながらこのような(米国)の動きにまったく太刀打ちができないほど遅れをとっています。その理由は、護送船団形成された体質、数理的センスの欠如、経験と勘を重視するという日本人の特性などさまざまです。」
 
「とにかく、これまでの日本の金融業界では、人工知能など数理的な手法で市場取引やビジネスを構築するという発想とセンスが欠落していました。」
 
「(金融)ビジネスのシステムにおいて何か革新を起こすと言う発想がほとんどなく、昔からの枠組みの中での競争を好む文化があります。」
 
***

しかし日本も「ダメダメ」ばかりではない。最後の6章では、日本では物理的な形を持たないAIの開発や利用には立ち遅れていても、なぜか物理的な形のあるロボットの開発と利用には強い関心と執着心が見られることが指摘されている。

その通りだろう。そして日本で人工知能開発に最近もっとも大胆な投資をしたのがトヨタであることも偶然ではない。おそらく日本のAIはロボットカーという形態で進化するのではなかろうかと私が思う理由でもある。

イメージ 1




本日の日銀の決定会合の結果、事前にブルンバーグ社が流した追加緩和政策の発表がなかったことから、株は急落、円急騰となった。短期トレーディングしている金融機関のディーラーや個人投資家諸兄は、ずいぶんと上に下へと振らされた人達も多いのではなかろうか。

私の銀行時代のディーラー経験では、短期売買でもトレンドのある局面でトレンド順張りで儲けることはそれほど難しくない。ところがこのように極めて短期間でジェットコースターのような大揺れ相場になると、儲けることは非常に難しくなる。 オプションを買ってデルタヘッジでもしているディーラー以外は、ほとんど儲からないか、やられる。 たいていは上げか下げかの片方の局面で儲けた益を、反対の局面で失って、骨折り損のくたびれ儲けとなる。

私自身は短期トレーディングはせず、中長期に徹しているので、こんな乱高下相場は高みの見物である。

新版修正積立投資法

さて以前も一例を紹介した修正積立投資の新版をご紹介しよう。
まず第1図は2000年1月末から毎月末、定額(ここでは1万円)をTOPIX連動ETFに投資した場合の投資結果である。 青い線が示す資産時価総額は黄色い縦棒が示す累積投資額に対して、2015年12月末時点で1.41倍(4月27日時点では1.27倍)、キャピタル損益のみのIRRは年率4.4%、平均配当利回りを1.5%とすると、総合年率利回り5.9%となる。

この投資では直近は2013年からようやくプラスのリターンに転じたわけだが、2009年から12年まではかなり深い評価損状態が持続していた。辛抱できない人には無理な投資だろう。

S&P500連動ETFへの定額積立投資

第2図は、同じ時期に全く同様に円資金で定額(ここでは1万円)をS&P500連動ETF(東証にも円建てで上場されている)に積立投資した場合の結果だ。2015年12月末時点の資産時価総額/累積投資額=1.89倍、キャピタル損益のIRR7.9%、平均配当利回り2.0%とすると、総合年率リターンは9.9%になる。これは上等な出来栄えだ。やはり日本株は米株にかなわないね、ということになる。

しかし日本株でもインデックス投資でリターンを上げる方法は、いろいろ考えられる。学生の研究テーマにちょうど良いので、過去何度も大学のゼミ生の研究対象に取り上げてきた。 今回紹介するのは、おそらくこれが一番簡単でその割に効果が高いと思われる例である。

修正積立投資

第3図は、TOPIX連動ETFで毎月1万円定額積立投資をするのは同じ。それに加えて、TOPIXの過去5年の移動平均値を計算し、毎月月末にTOPIXが移動平均値より30%低ければ定額の5倍買い増し、逆に30%高ければ5倍売る機械的な売買を組み合わせたものだ。

30%というのは、この時期のTOPIXの過去5年移動平均からの乖離率のほぼ標準偏差であり、この水準から上方、あるいは下方に飛び出す期間が約3分の1ある(3分の2の確率で上下の範囲に収まる)ことを意味している。

その結果は、2015年12月末時点の資産時価総額/累積投資額=2.9倍(16年4月27日時点では2.57倍)、キャピタル損益のIRRは9.2%、平均配当利回り1.5%とすると、総合年率リターンは10.7%である。 これなら米株の定額積立投資すら上回るリターンとなる。しかも評価損の幅も、その期間も、非常に小さくなっていることがわかる。

私自身の株式の売買の履歴に照らすと、①買った時期:2009年~11年、②売った時期2013~15年であり、ほぼこの投資法の売買シグナルと重なる。 ただし最初に買った時期は、主に2000年後半~2001年であり、この時期の買いはこの手法のシグナルに反しており、結果的に高い価格での購入となった。IT不況の到来を早めに判断することができなかったからだ。また、2006-07年は株の売り局面になっているが、私は2004-06年に主に売っており、やや早過ぎたことを示している。

この修正積立手法の現状でのシグナルはどうか?グラフが示す通り、TOPIXは移動平均からの1標準偏差上方水準線を下に抜けており、もはや売り場ではない。定額の1万円投資のみを継続する中立ゾーンである。また時価で見た投資残高はピーク時の半分程度に縮小している。要するに様子見を決め込んでいればよいレンジだ。 

私自身の日本株投資残高は、このブログで何度かコメントしたようにピーク時の3割程度に落としてある。中途半端ななんぴん買いをする気もない。買い出動は次の景気後退まで待ちの姿勢である。

修正積立投資法の限界

最後に、この修正積立法の限界を言っておこう。あらゆる相場に対応できる万能投資法などない。80年代後半の日本株、あるいは90年代後半のITブーム期の米国株のようにほぼ一本調子で急速な上げ相場が何年も続いた場合は、この投資売買比率(定額1に対して5倍)だと途中で売り尽くしてしまい。上げ相場での利得を取ることができない。その結果、単純な定額積立のリターンに負ける。

言い換えると、今後日本株でそうした超強烈な中長期の株上昇トレンドが来ない限り、この投資戦術は優れて有効だと言える。まあ、2%インフレ目標の実現も未だ見通せない状態では、今後数年先まで考えても、そうした超強烈な上げ相場がここから到来すると考えないのが妥当だろう。

図2
イメージ 2
図3
イメージ 3


↑このページのトップヘ