たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

タグ:国際経済

毎度のロイターコラムです。 同サイトでは掲載し切れなかったグラフとデータサイトを掲載しておきます。
「遠退くトランプ大減税、しかし米国景気悲観は不要」 

冒頭引用:「税制改革、インフラ投資と並んでトランプ政権の目玉のひとつだったオバマケアの廃止・代替法案の可決に失敗したことで、トランプ政権の先行きに不透明感が濃くなった。議会共和党の幹部とトランプ大統領は、税制改革法案の組成に向かうと言っており、同政権への期待はまだ剥落していない。


しかし税制改革について議会共和党の首脳部は財政赤字を膨張させない「歳入中立(revenue-neutral)」の方針を貫こうとしているようだ。国境調整税の導入や法人税率の引き下げを伴う改革も、税収入全体ではあまり減らないものになる可能性が高い。つまり「トランプ大減税で今後10年間に46兆ドルの減税」という選挙キャンペーン、並びに大統領就任直後まで語られてきた減税の「大判振る舞い」が実現する可能性は大きく後退しつつあると考えた方が良いだろう。そうなれば大減税がもたらす短期・中期的な景気の大上振れというシナリオも消える。


 それでは期待剥落で株価もドル相場も急落、長期金利も低下基調になるかというと、それほど単純でもない。なぜなら米国の実体経済は水準としては底堅く、方向としては上向いているからだ。今後は過剰な期待の下方修正と底堅い実体経済の双方がどの辺に収束するかがポイントとなる。本論ではこうした条件下での2018年末までの長期金利を推計してみよう・・・」

以下、コラム本文で引用、紹介した景況感調査指数 
Gallupの大統領支持率調査

追記:
トランプ大統領の支持率調査と逆を向いている指標をもうひとつ見つけました。米国は正しい方向(right direction)あるいは悪い方向(wrong track)に乗っていると思いますか?という調査です。以前からあるものですが、2010年以降ずっと「悪い方向にのっている」が多数でした。ところが、やはり昨年11月9日以降、悪い方向が減って、正しい方向が増えています。通常はこれは大統領の支持率とだいたい同じ向きに変化するんですが、今回は逆に動いていますね。
私の「トランプ隠れ支持者仮説」を傍証する材料ではないでしょうかね。つまり「トランプ大統領」という名前を出して支持・不支持を尋ねると、支持を表明することを躊躇う人々が多い。ところが、トランプの名前を出さずに尋ねると「正しい方向に向かっている」と答える人が増えているわけです。


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毎度のトムソン・ロイターの論考です。


抜粋引用:「『予想外な円安・ドル高と日本株買い』の動きについて読み解いてみよう。結論から言うと最大の要因は、トランプ氏の大統領選勝利までほとんどの市場参加者が本気で考えていなかったトランプ大減税が来年度に現実のものとなる可能性が急速に高まったことだ。

この大減税が本当に実施されると、来年以降のドル相場、米国インフレ率、金利動向、景気動向にわたって私を含むエコノミストが選挙前まで想定していたことをかなり修正するインパクトが生じる。変化の方向は、インフレ率アップ、金利高、ドル高、短期・中期の景気の上振れである。その点を説明しよう。
  ~~~
 この大減税が実施されると、連邦財政赤字の拡大、国債発行増、長期金利上昇、日米金利格差拡大、ドル高というシナリオが既に語られている。内外金利格差拡大がドル相場上昇をもたらすというのは国際金融論のテキストも語る基本命題なので、いかにももっともらしい。

しかし日米の長期名目金利格差とドル円相場の変化の関係性は実はとても不安定だ。実際に2010年以降の期間で検証すると、名目金利格差拡大がドル高(逆は逆)という相関関係は弱い程度でしか検出できない。期間によっては関係性がほぼゼロか、逆の場合すらある。

ところがこの関係性がほんの23か月前から非常に強く復活したのだ。なぜ金利格差とドル円相場の関係性が非常に強い度合いで突如復活したのか、これを語らないことには説明として意味がない。つまり同じ金利格差の変化でも、選挙投票日の迫った今年の夏以降と以前とでは、金利格差拡大がドル高に強くつながる何か違いが生じているはずだ。

それはトランプ大減税がもたらす米国の景気動向の上振れシナリオの浮上だ。


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 ドル金利の上昇を伴った米国経済の潜在成長率からの上振れは、典型的には80年代前半(レーガン政権第1期の大減税、198384年平均実質GDP成長率5.9%)、90年代後半(クリントン政権第2期のITブーム、9600年同4.3%)、200407年(ブッシュ政権第2期の住宅バブル、0405年同3.6%)と過去何度か繰り返されて来た。


いずれの時期も米国の内需拡大で経常収支赤字は拡大したものの、金利の上昇と強い景況に引かれて海外から米国への資金流入が強まり、程度の違いはあるがドル高となった。市場参加者の一部はそうしたシナリオの可能性を今年の夏以降予想し始めたのだ。

それではなぜ選挙明けの119日の東京市場でドル売り、日本株売りが起こったのか・・・

*****

以下の上段の図はロイター非掲載図で、全体的に見ると日米の名目長期金利差とドル円相場の変化(前月比)の極めて弱い相関関係と、その相関関係が2016年7月から急速に強まった様子を表示したものです。下図はロイターにも掲載した米国のGDPギャップとコアPCE物価指数の相関図です。




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中国経済については、過去数年、節目節目に幾度か書いてきたので、ここらで自分の書いてきたことを一覧して、レビューしておこう(掲載の事情でオンラインで書いた論考のみ)。

以下時系列順で掲載


引用:「中国自身の為替介入の不完全性と資本移動規制の空洞化が、海外からのドル資金の流入→中国国内での過剰流動性→不動産バブルという事態を引き起こしていると言えよう。

これまで中国では次のような俗論が横行してきた。
『日本は日米貿易摩擦で1985年のプラザ合意で円相場の急騰を米国に強いられ、円高不況を回避するための過剰な金融緩和がバブルを起こし、その崩壊で経済成長が低迷した。従って中国は決して米国の中国元相場の急激な切り上げ要求に屈してはならない』
 
皮肉にも今の中国は、通貨の切り上げを拒否するための大規模な為替介入の累積と、固定的な相場維持に不可欠な資本移動規制の空洞化によって、国内の過剰流動性が不動産価格の上昇を助長するという形でバブルの罠にはまりつつある。これを中国政府が果たして金融引き締めやその他の手段で対処できるかどうか。

それに失敗すれば、次の大規模なバブルとその崩壊を私たちは中国で見ることになるだろう

2011年2月「『住宅バブルの法則』が予言する中国危機」日経ビジネスオンライン、ニュースを斬る

引用:「このジレンマに今最も先鋭的に直面している国は中国だということだ。現在中国で進行している住宅価格の高騰(その結果、都市部の標準的な住宅価格は勤労者の平均年収の30~50倍)は、やはり金利・成長率格差の大きなマイナスによるものだ。それを金利の引き上げだけで抑制しようとすれば、名目成長率が2ケタである以上、金利も2ケタ水準まで上げる必要があろう。景気へのオーバーキルを考えれば中国の金融当局にそんな金利の引き上げはできないだろう。

代わって銀行の融資を間接・直接に制限する量的制限方式も(これまでは十分な効果を上げてこなかったが)、同時に施行されている。しかし日本の1990年代初頭のケースと同様に調整が難しく下手をすれば、バブルのソフトランディングではなく、崩壊的なハードランディングになる危険も高い。

日本でもバブルの時は地上げでゴルフ場を建設して会員権を売りさばけば、錬金術のように莫大な収益が入ってくるので、多くのディベロッパーが暴走した。農民から土地を取り上げて、銀行からの融資で工場団地や住宅に仕立て上げれば、莫大な非税金収入が入ってくることに酔っている今の中国の地方政府の姿は、往時の日本以上のバブル道をひた走っているのだ。」

2012年9月「人民元国際化に政治の壁、通貨危機」リスクも」トムソン・ロイター・コラム

引用:「自由な市場機能にそもそも信頼を抱いておらず、官僚による指令主義的志向の強い中国政府は「管理された人民元国際化」を志向しているとも言われる。しかし、それは概念矛盾に他ならない。既述の通り、トリレンマの原理が示す選択肢は「管理されたローカル通貨」か「取引自由な国際通貨」しかあり得ないのだ。

あるいは、国内の規制金利を維持しながら、「人民元国際化=内外資金移動の規制緩和」という政策的に不整合な路線を志向してしまうかもしれない。 政治的な理由で経済原理に反した制度・政策の大きな不整合を犯した場合、最終的には巨大なしっぺ返しを引き起こすことは、すでにアジア通貨危機を例に述べた。また、現下のユーロ圏のソブリン金融危機が見せつけてくれていることでもある。同種の過ちを中国が将来犯す危険性は、筆者は決して低くないと思っている。」

2015年8月「『中国ショック』は世界不況を招くか」トムソン・ロイター・コラム

引用:「以下の4つの事情で、中国経済の成長率は深刻な下方屈折を起こしている。構造的な変化に適応しなくてはならない中国の苦しい過程は始まったばかりだ。他の国々も程度の違いこそあれ中国経済の失速から受ける実体経済面の負のインパクトに備える必要がある。また、新興国投資全般は当分の間、高リスク・低リターンの「冬の時代」に入るだろう。順番に説明しよう。」

2016年1月「中国バブルのミンスキー・モーメント」トムソン・ロイター・コラム

引用:「今後不可避と思われる中国の過剰債務の調整過程で何が起こるのか。それは日本や米国で起こったことと基本的には同じだろう。おそらく習近平政権は10年、20年という長期の時間をかければ軟着陸は可能だと考えているのだろうが、私は懐疑的である。

過剰債務の調整とは、結局のところ経済的な損失負担の問題であり、貸した金が回収できないという事実を前に、債務者、債権者(含む金融機関)、政府(納税者)がどのように損失を負担するかの問題だ。その過程で債務企業や金融機関の大規模な整理、破綻、失業者の増加などは不可避だろう。
中国国内からの資本逃避が一層強まる恐れもある。年間2000億ドルを超える経常収支黒字にもかかわらず、中国の外貨準備は14年のピーク時の約4兆ドルから15年末には3.3兆ドルに約7000億ドル減少している。これは資本流出により、人民元相場を現在の水準近辺で維持できなくなっていることを示唆している。

資本逃避が一層強まれば、1ドル=7元を超えた元安・ドル高もあり得よう。その場合には、中国の民間非金融部門の1.2兆ドルと推計されるドル建て債務(BIS四半期レビュー、2015年12月)から巨額の為替損(10%の元相場下落で約14兆円相当の損失)も生じる。中国の過剰債務の調整が今後本格化すれば、未曽有の過酷かつ長期的プロセスになると考えておくべきだろう。」

以上


毎度のトムソン・ロイター社でのコラム、ただ今掲載されました。
ご覧になってよろしければ、「おすすめ」とかお願い致します(^^)v
「これから先10年、米国経済の優位が続く」・・・ど~んと強気で出しちゃいました(^_^;) 
もちろん、株価やドル相場は上げも下げもありますよ。
 
 
冒頭引用:「振り返ると「米国経済凋落論」や「長期停滞論」にずいぶんと世間は幻惑されてきたものだ。米国経済に関する過度な悲観論は、日本では一部のアンチ米国的な信条によってひどく増幅されてきた。
筆者はそうした過度な悲観論を批判し、米国経済と米国株式投資に関する長期的な楽観論を説いてきた。この先5年から10年、おそらく米国の相対的な経済的優位が継続するだろう。そう考える理由を説明しよう・・・」

 
2015年は米国経済の一人勝ち・・・なんて論考は既に出始めていますね。
「この先10年・・・」思い切ってタイトルにしちゃいました。
 
想い起せば、2008年9月リーマンショックが勃発した後、「これから先5年、米国経済はゼロ成長」って言った著名なエコノミストがおりました。名前は・・・・なんて言いましたっけ、ミズノ・・・何某。
以下は2009年から2013年までの米国の実質GDP成長率です。
-2.82.51.62.32.2
 
2009年こそはマイナスですが、その後は平均で2%以上のプラスに回復、今年2015年は3%台成長が予想されています。 株価は・・・ガンガンに高値更新してきました。
 
「資本主義は終焉するんだ」「資本主義の最大の牙城である米国経済は凋落するんだ」と信じた方々、ずいぶんと大きなコストを払っていると思います。
 
追記:1月15日、所得格差と消費(総有効需要)の関係について
上記の論考では次のようにかなり大胆に断じておりますが・・・
「国民所得統計を見る限り、米国の家計貯蓄率はリーマンショック危機後の2009年こそ6.1%まで上がったが、その後は低下し、2013年以降は4.9%と1990年以来の平均値5.5%より低い。したがって所得格差の拡大による消費性向の低下(貯蓄率上昇)は生じていない。」
 
この種の一般向けコラムでは、短い字数でわかり易く書くことが求められます。それ故に、かなり議論を単純化して論述していることを申し上げておきましょう。
 
所得格差の拡大が消費需要を抑制する効果があるかないかについては、経済学者の間で長い論争と論文の累積があります。リベラルvs保守の典型的な論点になりますからね。
 
比較的最近の論文では以下のものがわりと包括的な議論状況を語っているようです。
 
A Cointegration Analysis Yuan Mei, Trinity College
***
The effect of inequality of the distribution of income on aggregate consumption has been
the subject of considerable debate over decades, especially between the Keynesian economists
and the Chicago school economists. In the case of the United States, while income distribution
has become more unequal since the 1970s, the country‟s aggregate consumption growth has
been maintained at a relatively high rate. However, Keynesian economists like Palley (2002)
and Setterfield (2010) argue that the fast growth of aggregate consumption in the United States
can be attributed to an unsustainable process of debt financing. If the impact of debt financing
is removed, the relationship between consumption and income inequality will become obvious.
 
It is found that there exists a cointegrating relationship between the Gini Index and
consumption. However, the regression results of the VEC model imply that income
distribution only affects consumption in the short run.
***
 
追記:Tracking Inequality in America  WSJ

追記:Waiting for Wage Growth? Everyone Is Watching the Employment Cost Index        WSJ

追記:For Many U.S. Families, Financial Disaster Is Just One Setback Away  WSJ

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ついにユーロ圏のデフレ(消費者物価下落)が始まった。かなり前から予想していたことだが。
 
Eurozone Consumer Prices Fall for First Time in Five Years  WSJ dated 2015 Jan. 7
quote : The European Union’s statistics agency on Wednesday said consumer prices last month
were 0.2% below their December 2013 levels. That was the first year-over-year fall since October
2009, which marked the last in a sequence of five months during which prices were lower than
 
以下は毎日新聞社エコノミストの2010年11月臨時増刊号に私が寄稿した「国際通貨史」の「ユーロの挑戦と矛盾」の一節。 
 
引用:「通貨統合前であれば、対外不均衡がなんらかの限度を超えた時点で、PIIGS諸国の為替相場が下落し、調整機能が働く。自国通貨の相場が下落するということは、外貨建てで計算した場合の労働コストが低下する(自国の労働が安く売られる)ことだからだ。しかしこうした為替相場による調整機能は通貨統合によって放棄された。
 
ならばどのように調整は働くのだろうか?PIIGS諸国の物価と労賃がドイツに比較して下がることによって調整されるしかない。つまりドイツのインフレ率が趨勢的に上昇するか、あるいはPIIGS諸国がドイツより低インフレ・デフレになるしかない。ところがドイツは趨勢的に低インフレ経済で国民や政府にもアンチ・インフレ機運が強いので前者の選択肢はないだろう。
 
すると、PIIGS諸国が今後デフレ圧力を甘受することによってしか調整は働かない。
 
しかしデフレは負債コストを押し上げることで、投資を萎縮させ、経済成長にネガティブな効果を持つ。これがPIIGS諸国(ユーロ圏のGDPの約3割を占める)とユーロ圏の現在の憂鬱の根底にある問題なのだ。」 
全文は次のホームページで閲覧可)
 
ECBはここからどうするのだろう? 日米と同じように国債の大規模購入による量的金融緩和に動くのだろうか? ECBが国債を大規模に買うことは、財政規律の弱い国の財政をいわゆるマネタイゼーションでファイナンスすることになるとしてドイツなどが強く反対してきたことだが、背に腹は換えられなくなるのだろうか?
 
一度「デフレ期待」が定着すると、量的金融緩和でもなかなか容易には抜け出せなくなることは、日本の過去の経験が示している。
 
ユーロ圏も黒田日銀のような超大規模な量的金融緩和を実施すれば、ユーロ相場の一層の下落でインフレ率を押上げることはできるかもしれない。しかしそのような超大規模な緩和にドイツがOKを出しそうな雰囲気は伝わってこない。
 
ギリシャはもう見限るとしても、イタリアやスペインの労働者や技術者がドイツ人のように行動して働けるようになるまで、デフレ圧力は止まらないってことになるかな。けっこう無理すじだね・・・(^_^;)
 
 結果として、ユーロ圏の景気低迷はまだまだ続きそうな感じがする。
 
追記(1月11日):ドルユーロ、名目相場と実質相場指数推移グラフ
以下にグラフ掲載しました。
1月9日時点の1.1844という名目相場水準は、実質相場指数では93.30で、99年以来の平均値103.55から約10%下方に乖離した水準です。
 
上下の水平の黄色線は、実質相場指数がその平均値から1標準偏差乖離した水準で、3分の2の確率で実質相場指数はこの上下の幅の中におさまっていたことを示しています(逆に言うと3分の1の確率で範囲外にとび出した)。
 
あと数%下がったら、対ドルでユーロのナンピン買いをしてみるのも、面白いかも・・・・とちょっと思える水準でしょうかね。
 
 
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米国の量的金融緩和の縮小、さらに将来の利上げ展望が、新興国経済から資金流出を引き起こし、経済の不安定化を招いているという批判、あるいは懸念が一部の論者から繰り返されている。経常収支赤字が大きく、インフレ率が高い「脆弱な5カ国(インド、ブラジル、インドネシア、トルコ、南ア)」がこの点で最も不安視されている。
 
経済学者でかつインド準備銀行(中央銀行)の総裁であるラグラム・ラジャン氏がこの種の批判の代表的存在だ。同氏は先進国の中央銀行の金融政策は途上国経済にもっと配慮した国際協調の下に行われるべきだという趣旨の主張を繰り返している。
 
しかしながら問題となる途上国からの資金流出は、FRBバーナンキ議長が量的金融緩和の縮小を示唆した昨年5月よりずっと以前から起こっており、途上国経済の不安定化を量的緩和の縮小に直接結びつける説明は不正確な認識であると私は昨年7月に以下のロイター社コラムで述べた。
 
ところで途上国からどのような投資家や金融機関が資金を引き揚げているのか。この点は上記コラム執筆時には主要な国際機関などの関連データが未発表だったので大雑把な推測によらざるを得なかった。その後データが公表され見えてきた事実があるので以下ご説明しよう。
 
国境を超えるマネーフローには、直接投資、銀行ローン、証券投資(株式投資と債券投資)などがある。直接投資は企業経営権を伴う形で長期の事業として行われるものであり、短期・中期の金利や景況次第で引き揚げられるということは一般にはない。したがってここで問題になるのは、銀行ローンと証券投資のフローだ。まず銀行ローンの面から見よう。
 
対象債務国としては、上記の「脆弱な5カ国」にアルゼンチンを加えた6カ国について見てみよう。上段の図は欧米日の銀行による6ヵ国向けの与信残高を債務国別に示した。2011年をピークに減少に転じている。
 
中段の図は6カ国向けの欧米日の銀行の与信残高(BISデータ)の推移である。ひと目でわかる通り、2000年代に6カ国向け与信残高を急増させたのは欧州銀行であり、2008年の危機後にいったん減少するが、2011年にかけて再度増加してピークとつけた後、減少に転じている。
 
対象6カ国への与信全体に占める比率で欧州系銀行の比率は圧倒的で、2013年9月時点で欧米日の銀行全体の72%を占めている。
 
その欧州系銀行の与信残高はピーク時2011年6月の9082億ドルから2013年9月の7856億ドルに1226億ドル(約12.5兆円)減少している。一方、米国の銀行のそれは同じ期間に2259億ドルから2064億ドルに195億ドル(約2兆円)の減少、日本の銀行は944億ドルから957億ドルに13億ドル(約1300億円)の増加だ。
 
「米国の量的金融緩和で供給された資金はドルだから米銀がやっていることだろう」と多くの方はイメージしていただろうが、実はそうではない。銀行与信について見る限り、途上国からの資金流出とは欧州系銀行の与信回収に他ならないのだ。
 
もちろん欧州系銀行の与信回収の背景のひとつには金融危機後の自己資本規制(バーゼル2)強化への対応などのために、2000年代に膨張した与信残高を圧縮せざるを得ない事情が働いている。
 
また欧州系銀行の6カ国への与信急増は、リーマンショック後の米国の量的金融緩和以前から始まっていることにも注意しておこう。図を見て明らかな通り、それは2005年頃に始まったトレンドである。興味深いことに2001年以降の6カ国の経常収支の変化と当該諸国への海外銀行与信の増減には、高い相関関係がある(下段の図)。つまり銀行与信が増えると1年のタイムラグで6カ国の経常収支赤字が拡大する関係が見られる(逆は逆)。
 
最後に冒頭の政策論について私の意見を言うと、途上国の政府としては、米国の量的金融政策の結果、海外銀行からの自国企業や機関の借入が増えて国内信用膨張し過ぎることが問題ならば、海外銀行からの借入を規制すれば良いだけのことだ。あるいはもし国内の金融自由化政策の方針上、そうした規制はしないことにしているならば、海外からの資金流入によって自国通貨が上昇するからそれを放置すれば、輸出減⇒国内景気抑制となって国内の信用膨張も抑制される。だから先進国の金融緩和に責任をなすりつけることは奇妙な議論なのだ。
 
それでは証券投資フロー(債券、株式投資)の変化はどうか?この点は銀行与信よりもやや複雑である。この続きは近日掲載予定のロイター社コラムでご説明しよう。
 
追記:関連のロイター論考、本日4月21日午後、掲載されました。↓
 
 
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中国の専門家から、各種メディアまで、さんざん書いていることだから新味ないけど、記録のために書いておこう。
 
まず、三菱東京UFJ銀行(中国)有限公司の「経済週報」から
 
引用:「2013年の金融機関の分野別貸出統計レポート」では、不動産向け貸出が貸出全体の3割を占めており、同割合は前年比3ポイント近く上昇したことが明らかになった。詳細は以下の通り。

主要金融機関、小規模農村金融機関及び外資銀行における不動産向け貸出は、残高ベースで前年比
+19.1%の14兆6,100億元、貸出全体の伸び率(+14.1%)を5ポイント上回った。新規貸出ベースでは2兆3,400億元と前年対比9,987億元の大幅増と、新規貸出全体の28.1%を占めており、同割合は2012年末より10.7ポイント高かった。」
 
「内訳をみると、①土地開発向け貸出残高は前年比+9.8%の1兆700億元、②不動産デベロッパー向け貸出残高は同+16.3%の3兆5,200億元(①+②=不動産開発向け貸出残高)、③個人住宅ローン残高は同+21%の9兆8,000億元。2013年の新規貸出額は1兆7,000億元と前年同期より7,389億元の増加となった。」
 
これを見る限り、中央政府の不動産投資抑制の号令は、ほとんど効いていないと言って良いようだね。
地方政府にしてみれば、歳入の不動産収入への依存が高く、これを止めろといっても止められない、そう言う状態が続いている。 
 
「バブルにソフト・ランディングなし」と言っておこうか。問題はいつ、どういう形でバブル崩壊が起こるかだけだ。
 
本日(2月25日)の日経新聞の報道も、なかなか不気味だ(^_^;)
引用:「 【上海=土居倫之】中国で24日、不動産市況の先行き懸念が再燃した。準大手の「興業銀行」が不動産会社向け一部貸し出しを停止したことが伝わり、株式市場では「資金繰り悪化につながる」との見方から不動産株が急落した。最大手の万科企業の株価は前週末比6%超下落した。
 
興業銀が停止したのは一般的な無担保融資より経営破綻時の弁済順位が低い劣後債や劣後ローンなど。銀行にとっては、一般的な融資より高い利回りが得られる一方、リスクが高い特徴がある。株式と融資の中間的な位置付けなため、メザニン(中二階)融資とも呼ばれる。
興業銀は行内に「全ての不動産会社向けメザニン融資の手続きを全行で停止する」と通知した。同通知によると、「経済が下向きの状況下で、リスクが急激に高まっており、いったん問題が生じると、処置が難しくなる」としている。同行はこうした融資の残高を公表していない。
興業銀行は国内7番目の規模。四大国有銀行に比べれば弱い顧客基盤を補うため、不動産向け融資には積極的だった。その興業銀行の方針転換を受けて上海株式市場では24日、不動産株が急落した。」
雰囲気的には2007年春頃の米国、それまでサブプライムの証券化などを手掛けていた金融機関が損失を出して撤退を発表し始めた頃の状況に良く似ている。 バブル崩壊的な状況が誰の目にも明らかになったのは、同じ年の7月から8月、BNPパリバ系のヘッジファンドなどが行き詰ったり、証券化商品に莫大に投資していた欧州の地方銀行の巨額損失が報道された時だった。
私達の問題は、中国の不動産バブルが世界経済にどう波及し得るか。常識的に考えて、中国の不動産融資関連のリスク商品を保有している在海外の投資家、海外金融機関はほとんどいないだろうから、米国のケースのような波及経路はないはず。
そうするとむしろ日本の90年代前半の不動産バブル崩壊パターンに近いのではなかろうか。リスクは国内の銀行に集中していたケースだ。海外への金融取引を通じた波及はほとんどなかった。
中国でのバブル崩壊で人民元相場が下落するとは限らない。損失の穴埋めのために、合法、非合法の形で中国から海外に投資されている資産が売却されて本国回帰するかもしれないからだ(外貨売り・人民元買い)。  
日本でも90年代前半は95年の1ドル=80円に向けての円高が進行した時期だった。それまで外貨投資の主体だった日本の機関投資家が、不動産と株価の急落で財務体力を急減させ、海外投資をストップしたら、海外資産のリストラ的処分を進めた結果、経常収支の黒字分だけ需給的に円高に傾斜した結果だった。
だから世界経済への影響は、中国の経済成長失速→中国の輸入縮小という貿易面からの波及だろう。中国向け輸出比率の高い諸国にはマイナスだが、米国、日本、欧州の景気回復を頓挫させるほどのインパクトにはならないで済むかもしれない。
5年後に不動産が暴落した上海でマンションの底値拾いショッピングなんてできると楽しいのだが、信頼できるエージェントを確保できないから、個人投資家には無理そうだな。
(以下グラフは上記日経新聞記事に掲載されたものです)
 
追記(2月27日):
記事引用:「スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の推計によると、中国非金融企業の借り入れと債券合わせた総債務残高は昨年末に約12兆ドルとなり、国内総生産(GDP)の120%相当を超えた。
債務の増加ペースは前代未聞だ。
トムソン・ロイターが、上場している中・大規模の非金融企業945社を分析したところ、総債務残高は2008年12月の1兆8200億元(2984億ドル)から、13年9月には260%以上増えて4兆7400億元(7773億ドル)となった。
S&Pのリー氏によると、中国企業の問題を深刻化させているのは、2008年の世界金融危機に対応した4兆元の景気刺激策の使い道だ。「資金が容易に調達できたため、多くの企業は競争が激しくリターンの低いプロジェクトに積極投資した。そうした投資は不調で、利益にほとんど貢献していない」という。」
一方、 以下のような見方もある。一理あると思うが、私には国家権力が強力であるほど、その間違いも途方もなく大きくなるという気がする。
引用:「中央政府の手足である国有銀行が支配する比較的未発達な金融システムは実際、市場主導型で複雑な民間金融機関のネットワークよりも安定させやすい。・・・・中央政府は、破綻した銀行や地方政府の救済を引き受けるには十分過ぎるほど頑強な財政を有する」
追記(2月28日):引用「「安全」と「高利回り」は二律背反のはずであり、この歪んだ「元本保証」慣行はやっかいな問題を生んでいる。理財商品の支払事故は、いまは一部の地方や業種の現象に止まっているが、今後増大していくことは避けられない。それに、2件の事故事案は、いずれも債務者企業が民営企業だ。政府系でもない企業の債務不履行までいちいち銀行や政府が尻拭いしていたら、損失負担が大きく積み上がってしまう。」
 
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
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ひさしぶりに書評を書きたいと思った本、ただ今読了。
Liaquat Ahamed、吉田利子訳、筑摩書房、2013年
 
著者はケンブリッジとハーバード大学で経済学の学位を取得、世銀の投資部門を経て、投資会社や保険会社で投資の実務にたずさわって来た投資マネジャーであり、現在はブルッキングズ研究所の理事だ。
経済学の学位を持ったエコノミスト、投資実務のマネジャー、そして本書は歴史家としての実績ということなる。 まことに米国の投資業界にはすごい知性がいるもんだねと舌を巻く。
 
第1次世界大戦勃発前後(1914年)から始まって、20年代~30年代を中心に第2次世界大戦までの国際金融・経済史、上下合計600ページ余の大著だが、まるで映画を見ているように叙述が展開し、ずんずんと読み進める。 翻訳もこなれているお陰だろう。膨大な資料を下地に書かれていることは間違いないが、一流のジャーナリストの叙述のような描写力には感嘆した。
 
第1次世界大戦の結果生じたドイツの膨大な対外賠償債務が、国家間債務の履行不能と危機の連鎖を引き起こし、最後は世界恐慌に転じて行く過程を描いている。そこで著者が発見したことは、現代の通貨・金融危機との驚くほどの類似性だ。
 
E・H・カーは「歴史とは何か」(岩波新書)の中で、歴史学とは歴史家と歴史的な事実の「対話」だと説いたが、著者のしたことは正にそういうことだろう。
 
もちろん歴史は全く同じことを繰り返すわけではない。音楽に例えると、基調は同じでも様々に時代固有の状況による変調が生じる。 当時と現代の最大の相違は、当時の官僚、政治家、知識人の多くが「金本位制」に呪縛されていたことだ。 
 
現代的な視点でふり返ると、当時の歴史は金本位制の呪縛による悲劇であると同時に、その呪縛から解き放たれるまでの文字通り血にまみれた過程だったと言える。
 
各章面白いが、私が一番気に入ったのは第5部、第21章「千鳥足の金本位制」だ。米国がルーズベルト大統領という異風のリーダーシップの下で金本位制を離脱し、大恐慌から回復過程に入る時期の叙述である。 以下のその部分を要約、引用しよう。
***
 
1933年、ローズベルトが大統領になると直ちに行なったのは預金取り付け騒ぎでパニック状態になっていた銀行全ての閉鎖だった。 既に預金取り付けパニックで、信用収縮と実体経済(生産と消費、設備投資)の収縮が相乗的に深刻化する大恐慌に陥っていた。
 
銀行閉鎖(バンクホリデー)の間に「緊急銀行法」を用意し、FRBに金(ゴールド)ではなく銀行資産を担保に資金を供給すること、政府にはFRBに銀行を救済支援することを命じる権限を付与した。さらにFRBが銀行制度救済のために損失を出しても政府はその責任を問わないと約束した。
 
そしてローズベルトは有名な「炉辺談話」で国民にやさしく語りかけた。「わたしが保証します。お金はマットレスの下に隠しておくよりも、銀行に預ける方が安全です。みなさんが銀行にお金を預ける。銀行はそのお金を貸出し、投資や生産のために活用されるのです」(下㌻237)
 
そして銀行閉鎖が解かれた最初の朝、全国の銀行の前に預金者の長い列ができた。しかし今度は預金を引き出すためにではなく、預金を預け入れる人々の列だった。
 
「バンクホリデーと救済策、ローズベルトの談話があいまって -どれが一番効果があったのかは定かではなかったが- 大衆的な心理に劇的な変化が起こっていた。・・・一夜で国の気分は一変した。・・・10日間閉鎖されていたNY証券取引所が再開されるとダウは15%跳ね上がった。一日の上げ幅としては歴史上最大だった」(下㌻237)
 
「これまたフーヴァーにとっては呑み難い丸薬だった。彼が毛嫌いするローズベルトが導入した銀行救済策は、もともとフーヴァーが提案していた原則をもとに、フーヴァー自身の部下によって立案されたもので、それがたった1週間で信頼を回復させたのだ。気の毒な老いたフーヴァーが3年も大恐慌と闘ってきても、どうしても信頼回復に至らなかったのに」(下㌻238)
 
この叙述で想起せざるを得ないことがある。今年の春頃、「アベノミクス」で株価が急騰、円高も急速に修正され、先行きに明るい兆しが見え始めた局面で、国会では民主党の幹部級代議士が安倍首相に対して「あなたのやっていることは民主党政権がやってきたことを踏襲しているだけだ」と批判したことがあった。 安倍首相は「・・・・結果が伴うか、伴わないか、それが全てじゃないでしょうか」と応じていた。まことに結果が全てだね。
 
そしてローズベルトは金本位制の放棄とドルの大幅切り下げを決断するのだが、この時は政策顧問らから一斉に反対を受ける。
「この経済の専門家たちの集団に対峙したのはひとりだけだった-大統領その人である。専門用語を並べられて反対されても全く怖気をふるわなかった。顧問のひとりにそれは不可能だと言われると『くだらん』と切り捨てた。・・・ローズベルトのシンプルな見方によれば、大恐慌に物価下落がつきまとってきたのだから、物価が再び上昇に転じた時にしか、経済は回復しないはずだった。
顧問たちはそれは因果関係が逆だと辛抱強く説明しようとした。」(下㌻240)
 
著者は経済では原因と結果の関係は、多くの場合相互依存的、循環的であり、原因が結果となり、結果が原因となるとここで語っているが、私もその通りだと思う。
そしてローズベルトは経済学の専門用語でそれを語ることはできなかったが、そうした循環的な関係の逆転、すなわち「デフレ・プロセスの逆転に鍵があることを直感的に理解していたので、大恐慌の解決は物価を上昇させることだと主張し続けた」(下㌻241)
 
「ホワイトハウスのレッドルームに経済顧問を呼び集めた。そこで、にやにやしながら顧問たちと向き合ったローズベルトはあっさりと言った。『めでたい話がある。われわれは金本位制から離脱する』 
50%を上限としてドルの金利平価を引き下げ、金の裏付けなしに30億ドルの紙幣を発行する権限を大統領に与えた農業調整法トマス修正条項を示して、この施策を実行することにした、と大統領は述べたのである。」 (下㌻244)
そのとたん部屋は大騒ぎになった。喧々諤々の大騒ぎの後にダグラス(経済顧問のひとり)は「これで西欧文明も終わりだろうな」と宣言したそうだ。
 
ところがローズベルトの決断から数日後にはドルの下落とともに株価が15%も上昇し、銀行救済計画で始まった国民心理の劇的な変化は第2段階に入った。
それから3カ月で卸売物価は45%上昇し、株価は倍になった。物価が上昇して、借入金の実質コストは急落し、自動車販売台数は倍増、工業総生産高は50%上昇した。
 
というわけで、私達日本人は、この叙述に過去1年間の変化を重ね合わせずにはいられないだろう。
もちろん今日の日本は金本位制の束縛は無縁である。しかし、日銀が国債を毎月7兆円も購入してベースマネーを2年間で倍増し、消費者物価指数2%を目指すと黒田総裁が決断した時に、アンチリフレ派のエコノミストらが示した反応(例えば、「それでは日銀の国債引き受け同じだ」など)に、ローズベルト大統領の金本位制離脱宣言に政策顧問らが示した強い拒否反応を重ね合わせてしまわずにはいられない。
 
やはり歴史に学ぶ価値は、大きいですねえ。
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 

アジア通貨危機(1997-98)に関わった方々には懐かしい「悪夢」が再び?

超低金利のドル建てで借りて、自国通貨に転換して国内(新興国)に投じる取引(ドル売りキャリートレード)でインドやインドネシアなど新興諸国企業の損失が拡大している。

昨日のWSJの記事
http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324886704579049943887947328.html?mod=djemTMB_h
quote:"Companies in exposed parts of Asia are facing a debt-repayment crunch as plunging
local currencies mak...e it more costly to repay foreign loans, a situation that is exacerbating
stresses on the region's economies.

The situation in India is notable. Indian companies have a combined $100 billion of unhedged
foreign debt, according to data from Indian ratings firm Crisil, an affiliate of Standard & Poor's.
A nearly 18.5% fall in the rupee since May has increased the cost of repaying those debts in
local currency terms."

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ただしアジア通貨危機と同じ展開になるとは必ずしも考えていない。

90年代のアセアン諸国は対ドルで固定的な相場(あるいは変動性を著しく抑制した管理フロート制)を維持しながら、外貨建ての対外借入れを含む内外資本移動の自由化を進め、かつ金融政策は独自と言う「国際金融のトリレンマ原理」に反する政策を推進してしまった。 危機はそのことのある意味では必然的な報いだった。

今回の局面では相場変動は90年代に比べるとより高い変動性が許容されており、金利格差が大きいからと言っても、為替リスクのあるドル売りキャリー残高はベラボーには積み上がっていないはずと推測しているのだが・・・・それとも、歴史に学ばない方々や、記憶力の弱い方々ってそんなに多いだろうか、かもね・・・・・(^_^;)
 
ロイター社サイトに掲載された関連弊論考は以下の通り。
 
 
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本日の「はてな?」記事
日本経済新聞が一面で「人民元建て貿易急拡大」???

経済・金融音痴のどこぞの新聞ならともかく、日経新聞が一面記事でこういうピントはずれの針小棒大な記事を出してはいかんぞ~と思う。

記事自らが指摘しているように、人民元建ての貿易の8割は香港-中国本土間のものだ。香港は英国からの返還後一国二制度の下で香港ドルが流通しているものの、中国の統治下にあり、事実上の中国国内経済圏なのだから、本土との交易で人民元建てが進むのは当然。...


香港-本土間を除いた対外貿易に占める人民元建て比率は、3.4%=17%×(1-0.8)に過ぎない。 「人民元の国際通貨化が急速に進んでいる」なんていうのは、猫を虎と呼ぶ様なものだ。

引用:「中国の貿易決済に占める通貨はドルとユーロで半数以上を占めるが、元の割合も13年1~6月で17%に上昇。日本は1980年代から円の国際化を唱えてきたものの、輸出入に占める円建ての割合は今年上期でそれぞれ35%、20%にとどまる。日本に比べ中国が短期間に比率を高めている。

元建ての8割は香港企業と中国本土の間の貿易だが、中華圏以外にも広がりつつある。日本の対アジア輸出のうち元の決済シェアは0.8%(約1500億円)と前年同期の倍になった。」
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