たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

タグ:FX、為替

毎度のロイターコラムです。本日午前に掲載されました。

冒頭引用:「結論から言うと米国経済は底堅いものの、すでにトランプ政権による減税や大規模インフラ投資で大きな景気の上振れが起こるという今年春先までの期待は剥落している。その結果、円安・ドル高への戻りは限定的だろう。 
一方、円高方向については、目先数カ月では1ドル=100円前後までが変域だろうが、トランプ政権の後半期(2019―20年)には米国経済が次の景気後退に移行するリスクが高まり、再び1ドル=90円から80円の水準を見る可能性が高まるだろう・・・


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さて、前回のShiller PERの使い方に続いて、ドル円相場に関して、従来の考え方を一部修正したので、書いておこう。

過去、各種の論考や著作で次の様に説明して来た。
実質相場指数が示唆するドル高の天井圏」2014年11月、ロイター・コラム
 
引用:「為替相場は相対的購買力平価(以下「相対的PPP」)からの乖(かい)離と回帰を繰り返し、長期的には相対的PPPに収束する。これは筆者が一貫して説いてきた国際金融論の基礎的な知見だ。
今回のようにドル円相場の水準が変わると、大局的な水準観を求めてこの相対的PPPに関心を向ける方々が増えるようだ。ところが、勘違いをした見方をしている方が多いので、ここで注意しておこう・・・

要点をまとめると以下の通り。

1、為替相場(名目相場)は相対的購買力平価(PPP)が示す趨勢的なトレンドから乖離と回帰を繰り返す。

2、しかし相対的購買力平価(PPP)は起点依存である。通常ドル円では1973年起点が一般的だが、計算する起点を変えると形状の水準も大きく変わる。

3、そこで名目相場をPPPで割った実質相場指数とその長期的な平均値を計算すると、実質相場指数はその長期的な平均値から乖離と回帰を繰り返す(平均への回帰原理)。これで特定の起点依存を回避できる。

4、平均値から上方に大きく乖離したところはドル割高圏、下方に乖離したところはドル割安圏と判断して、長期投資目的で持高を操作する。

こうした観点から図表1に示した1973年からの実質相場指数グラフを作成、開示してきた(竹中正治ホームページ)

こうした考え方は、Shiller PERの考え方と実は共通であると分かるだろう。Shiller PERは名目PERの分母である一株当たり純利益(名目)の代わりに、過去10年間の実質純利益を使用し、さらにその値が長期では平均に回帰することを原理にしている。

ドル円の実質相場指数について、その長期平均値は実に驚くほど安定しており、第1図でも実質相場指数の1973年からの平均値はその線形近似線とほぼぴったりと重なってしまう。これはこの手法を私が使い始めた10年余り前から変わらない。

しかし超長期に安定と思われたShiller PERも、1990年以降趨勢的な上方シフトを起こし、100年以上にわたる長期平均値一本では間違った操作方針を導いてしまった。

ドル円実質相場指数も、起点である1973年からの平均値一本では今後不適応になる可能性がある。例えば使用している日本の企業物価指数、米国の生産者物価指数に何かしらのバイアスが生じ、相対的購買力平価計測上の歪みが累積することも起こり得る。完璧な経済統計データは存在しないのだ。

ではどうしたら良いか?指標判断に長期的な安定性と同時に超長期的な柔軟性を持たせた判断をするために、各時点での過去10年の移動平均値を計算し、その水準からの乖離と回帰を判断の基準にすれば良いだろう。

そうやって作成したのが第2図表である。目安として過去10年間の移動平均値から上下に一標準偏差乖離した水準を黄色線で示した。もちろん、一標準偏差の乖離はめど、参考水準であり、絶対的なものではない。

現状までのところ、新版から導かれる判断は、旧版をベースにした判断と大きな違いはない。現在の名目で1ドル=109円前後の水準は依然としてドル割高圏であり、私は自分のドル建て金融資産(3分の2は主にS&P500連動ETF、3分1はドル中期債券)について、90%の比率でドル売り持高を維持している。

以上、ご参考まで。

第2図表
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追加図表(9月6日)
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円相場が円高方向に大きく戻ったので、実質相場指数を更新した。HPでの更新は後日となるので、先にブログで掲載しておこう。

1ドル=111円の名目相場指数は、実質相場指数(1973年起点=100、日本の企業物価と米国の生産者物価指数ベース)では111.50である。一方、1973年以来の実質相場指数の平均値は90.97だ。

つまりボール(名目相場)はまだまだ円安のラフであり、私が「フェアウエー」とよんでいる長期平均値から±1標準偏差の範囲にすら戻っていない。

かねてから繰り返しているように、名目相場/相対的PPPで計算される実質相場指数は、長期的な平均値からの乖離と回帰を繰り返す。 相対的PPP自体は、特定の起点に形状も水準も依存しているので、名目相場が相対的PPPに回帰するというのは誤った理解である。回帰する中心は実質相場指数の長期平均値である。

国際通貨研究所の相対的PPP図表とデータ:

また、マイナス金利導入の為替相場へのインパクトは、ドル円の金利差拡大による円安効果である。ただし今回は、原油安や新興国売りを下地に、昨年夏から余震が続いているチャイナショックに欧州の銀行不安などが重なり、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まる状況下で、既存の円売り持高の崩れ(円買い)や、それを誘発しようとする円買いの投機的な仕掛けなどが働いて、円高への戻りが生じたと理解できる。  すでにシカゴIMMのnon-commercialの持高は円ロングであることに注意しておこう。http://www.gaitame.com/market/imm.html

目先の短期的な相場動向は不確実でわからないが、このまま一気に円高に行くと言うよりは、2012年12月からアベノミクスで始まった円安トレンドが、ひとつのピークを過ぎたという程度に受けとめておいた方が良いだろう。 黒田総裁は「必要なもっとマイナス金利にする」ともコメントしているので、黒田緩兵衛殿の逆襲は今後もあり得る。


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本日3月2日発売の週刊エコノミストに円相場について寄稿しています。
 
 
今回は編集者の依頼で、今の円安オーバーシュートが将来どのような環境の下で円高に局面転換するか、日銀黒田総裁のインブレ目標(消費者物価指数で2%、除く消費税の引き上げ効果)達成が成功した場合、成功しなかった場合など3ケースに分けて考えてみました。
 
円安からの局面転換、まだかなり先のことだけどね、事前にどういうことが起こり得るか考えて準備しておく。目先上がるか下がるかという不安定な予想に依存することなく、大局を見ると言うのは、こういうスタンスなんだと思っています。
 
雑誌の紹介文
引用:「歴史で振り返るなら名目のドル・円相場だけでなく、インフレ率を加味した「実質ドル・円相場指数」を参考にしたい。これで見るといまの円安は5度目の波が起きている(以下掲載図ご参照)
 
では、将来に円高局面への転換が起こるとすれば、何が契機、要因となるか。龍谷大学経済学部の竹中正治教授は、「日銀の異次元緩和が成功した場合と失敗した場合にわけて考えてみよう」としたうえで3のシナリオを呈示する。明日発売のエコノミスト「相場は歴史に学べ」--ここが知りたい円安より。」
***
 
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ふ~む、これは興味深い。
米国プリンスト高等研究所のマイケル・ウォルツァー教授の論考
 
「イスラム主義と左派」(Islamism and the left)

同教授は「左派(the left)」の立場であり、過激なムスリム集団、テロリストの台頭に左派が正面から向き合えていない状況を批判(自派批判)している。 
 
同教授の言うthe leftの範疇が語られていないが、おそらく米国流のリベラルから西欧的な社会民主主義までをカバーするのだろう(コミュニストまで含むかどうかは私はわからない)
 
全く同様の傾向は日本の左派にも顕著に見られる。 要するに日本人人質事件の救済を訴えるデモになるはずなのに、批判の矛先がISではなく、専ら安倍内閣に向かってしまう。
 
それに対して「今の問題の核心は安倍批判ではなく、テロとの戦いのはずだ。ISへの批判、糾弾で一致すべきではないのか?」と言うと、「言論封じだ、大政翼賛会だ」とあらぬ方向に行ってしまう(^_^;)
 
同教授の議論は冗長で、もっと整理してコンパクトにまとめてくださいよと感じるが、以下わかり易い部分を中心に引用しておこう。 赤字の(  )は私の注釈。
 
引用:
ここで注目すべきなのは、オンラインでもオフラインでも集合的な左派はもはや存在していないにせよ、左派のまとまりというのは明らかに存在していること、そして彼らの中に現代宗教の統治、イスラム原理主義の政治に懸念を示す者がいなかったことだ。(失望と自派批判)
 
「外へのジハード」は今日、とてつもなく強大になっていることは確かであり、多くのムスリム世界の無信心者や異教徒、世俗的な自由主義者、社民主義者、自由を求める女性にとっての脅威となっている。そして、その恐怖は極めて合理的なものだ。
 

そのような状況にあっても、イスラム過激派を公然と非難するというより、イスラムフォビア(イスラム恐怖症・忌避症)とみなされることをいかに回避すべきかに腐心する左派に出くわすことは多い。これは今日のムスリム世界と左派の関係に鑑みれば、不思議な立ち位置である。

 

私が言わんとするのは左派の学術誌やウェブサイトに、イスラム過激派の問題について正面から向き合おうとする試みが一切みられないということだ。(再び失望と自派批判)
 
(なぜイスラム過激派をストレートに批判することを左派は躊躇うのか?に対する説明、以下)
 
彼によればイスラム過激主義に対する分析と批評を妨げているのは、今日のイスラム主義者が「西洋」すなわち西洋人、厳密にいえばアメリカ人による「帝国主義」の敵対者であるから、という事実に求められる。
 
左派にいる反帝国主義者たちは、イスラム主義者同様、個別的な判断を下そうとしない。かくして、「敵の敵は味方」という状況が生まれる。
 
イスラム過激派の犯罪を糾弾することに躊躇する理由はまだ他にある。それは、西洋の犯罪を糾弾したいがために、批判を手控えようとしていることだ。すなわち、多くの左派が主張するように、過激派の源は宗教などにはなく、西洋の帝国主義とそれによる貧困と抑圧から生まれている、という考え方だ。
左派の中には、イスラム過激派が西洋の帝国主義の産物というより、帝国主義への対抗形式のひとつだと考える者もいる。この立場は、イスラム過激派がどのような人々を魅了しているにせよ、過激派は根本的に虐げられている人々のイデオロギー、すなわち左派政治の変わり種のひとつだとみなすものである。
 
(しかしイスラム過激主義へのストレートな批判から逃げてはいけないのだよ、なぜなら・・・という自派批判、以下)

イスラム過激派に対する左派の一連の反応――同一化、支持、同情、謝罪、寛容、そして忌避――は、左派の本来のイデオロギーを考えれば、とても奇妙なことである。「西洋」に対するジハーディストの抵抗は、いかなる反応よりも先に、まず左派に深刻な不安をもたらさなければならないはずだ。
 
ボコ・ハラムは「西洋式」の学校の襲撃から始めたし、他のイスラム組織も特に女学校への同様の襲撃を行っている。過激派は、「西洋」のものとして弾劾する価値である個人の自由、民主主義、男女の平等、そして宗教的多様性などを攻撃の対象としているのである。
左派の価値とは、重視されてきた「西洋」の価値(自由、民主主義)である。従って、これらの価値への抵抗は本来左派が対決しなければならないものなのだ。そして、今現在では、その最大の抵抗者はイスラム原理主義なのである。
 
(では左派はどうすべきかについて、以下)
 
  少なくとも左派は、特に異教徒やの異端者の大量虐殺を止めるための軍事行為を支持すべきだろう(支持しない者も多いだろうが)。
 
この戦いにおいては、私たちはまずイスラム過激派とイスラム教とを明確に区別することから始めなければならない。そうする資格を私たちが備えているかどうかは疑わしい。(あらら、弱気によろめく・・・(^_^;)
 
左派は今の「ポスト世俗時代」において、いかに世俗的国家を擁護できるのか、そして、ヒエラルキーと神権政治を是とする宗教から平等と民主主義をいかに擁護できるのか、その方途を考えなければならなくなっている。気を取りなおした。)
 
過激派が私たちの敵であると明言し、それに抵抗できるだけの理知的な運動を展開すること、つまり、自由と民主主義、平等、多様性を守っていくことが必要だ。(がんばれ、がんばれ)
 
(総括に入るよ、以下)
 
世俗主義的な左派は、ある種の宗教的な極端に対して適切な敵意を見せることもあるが、イスラム過激派への反応は鈍いままだ。なぜここまで反応が鈍いのかを、最後にもう一度考えてみよう。イスラムフォビア(イスラム恐怖症・忌避症)とされることに対する尋常でない恐怖心があるのというのが第一の理由だった。
左派の戦闘員が国際旅団を形成して戦場に赴くことなど期待できない。私の知人や隣人は入隊しようとしないだろうし、彼らの多くはイスラム過激派のもたらす危険も認識してないようだ。しかし、危険は現実のもので、世俗主義な左派は擁護者をも求めている。
 
そこで、私の出番である。戦闘員ではなく、一人の著述家として、イデオロギー戦争に参戦することで役に立つことができる。多くの国で賛同者を得ることになるだろうが、それでも決して十分ではない。左派の知識人による国際旅団が待たれている所以である。」
***
 
とうわけで、日本の左派の方々も、自由と民主主義、平和の敵であるイスラム過激主義を躊躇わずにストレートに糾弾・批判致しましょうね(^^)v  大好きな「安倍批判」はそれはそれ、別案件でやって頂いてかまいませんので、幸い日本は自由な国ですから。
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
↑New!YouTube(ダイビング動画)(^^)v
 

さて、ドルの対円相場が100円台前半の膠着を抜けて107円台まで上がって来たので、実質ドル円相場指数を更新しました。ホームページの更新は月に1回なので、更新が遅れますが、とりあえずこのブログに掲載しておきます(以下添付)。ボールはドル割高のラフにしっかりと飛び出してきました。
 
10年物米国債で見たドルの長期金利が2.5%を中心としたレンジからなかなか上に上がらないので、以前ロイターで書いたように110円近辺の相場は来年年明けかな・・・と思っていましたが、そういう感じでもなくなってきましたね。 やっぱり相場の短期的な予想なんかコメントするんじゃなかった(^_^;)
 
新たに対円でドル買いが急に強まった背景には次の2つがあると思います。
 
1、GPIFの運用改革で日本株だけじゃなく、外貨投資(株と債券)の比率も増える→円売り、という思惑。塩崎氏が安倍内閣改造で厚生労働省の大臣になったので、一気にこの思惑が強くなったようですね。
 
2、米国の利上げタイミングの時期が来年に少し早められるのではないかという思惑。
実際、円のみでなくドルは対ユーロでも上がっていますからね。
金曜日の以下のCNBCニュースがそうした米国の雰囲気の変化を伝えています。
quote: Wall Street appears to increasingly expect the Fed to send a more hawkish message when
it meets next week.
Bank of America Merrill Lynch economists said they now anticipate the first Fed rate hikes in
June 2015, instead of September, and they expect the central bank Wednesday to drop
language in its statement, saying it expects to keep rates low for a "considerable time."
The Wall Street consensus for the first rate hike has been mostly around midyear and third
quarter, 2015. But it appears to be shifting to the midyear mark.
 
10年物米国債も8月下旬の利回り2.3%近辺から9月に入って2.6%まで上がって来ました。
金利引き上げのタイミングとその後の引き上げのテンポに対する市場の雰囲気は、昨年から猫の目のようにくるくる変わってきましたから、目先どうなるかわかりませんがね。
 
仮に現在の市場の支配的な雰囲気のまましばらく推移するとすると、米国株は高値圏もみ合い、反落もあり、日本株はドル金利上昇とGPIF期待で、米株が高値圏もみ合いなら日本株じり高、ドル相場も堅調・・・ということになりそうです。 でもやはり米国株の反落の度合いが大きければ(例えば直近高値から5%前後かそれ以上の反落)、日本株もしっかりと売られるんでしょう。
 
一気に110円がらみまでドル上昇?
わかりませんね。シカゴIMMの非商業筋の円ショート持高も急速に積み上がって来ていますので、あまり相場の目先の動きに惑わされないようにお気をつけください。
 
まあ、いずれにせよ私の方針は不変です。為替ではドルヘッジをじわりじわりと積み上げます。106円台で少しドル売り増して、ヘッジ率を65%から70%に上げました。
米国株のヘッジでは、7月に入ってから始めたダウ先物ショートのETNでヘッジ率25%、これをキープ。
 
補足:今回、図中に赤い細い線で示したのは消費税引き上げによる日本の企業物価上昇分を調整した(その分を物価指数から除いた)実質相場指数ベースです。
 
実質相場指数は図中の計算式が示す通り、PPPが分母になります。しかし消費税率引き上げによる物価上昇分は、円の対外的な購買力とは関係ないはずですから、PPPを計算する場合は消費税率引き上げ効果を除いたベースで計算するのが本来的には正しいのでは・・・・という思いがあるので。
 
ただし消費税率分がすべて価格転嫁されているわけでもないので、そこは大雑把に8割価格転嫁とみなして、今回の3%引き上げなら、企業物価の2.4%上昇分が消費税率引き上げによるものとして調整しました。1989年、97、2004年の消費税率分を全部同様に調整してます。
 
調整後は日本の企業物価が下がります →PPPが円高方向にシフト →PPPを分母にした実質相場指数は円安方向にシフトとなります。
 

多くの標準的な経済モデルは、なんらかのショックで経済の諸変数が均衡から乖離しても、価格と需給の自由な調整が働くかぎり均衡点にもどる・・・そういう形になっている。
 
しかし現実の経済現象、相場現象はファンダメンタルな均衡水準(その水準自体、時間と伴に変化する)からの乖離と回帰を繰り返す。 このファンダメンタルな水準からの乖離がすべて外生的なショックだとは考えがたい。むしろ多くの場合、ファンダメンタルな水準から乖離する内生的なメカニズムが働いているはずだ。これが大雑把に言って、私の基本イメージだ。
 
ファンダメンタルな均衡点からの乖離と回帰を繰り返す、そういう具合に相場現象を説明するモデルは、少ないけどもある。為替相場について、そうしたモデルの例が「ドーンブッシュ・モデル」(別名オーバーシューティング・モデル)だ。
 
以前勉強したけど記憶が薄らいでいたので、私自身の復習として以下に整理しておこう。為替相場にご関心のある方には参考になるはずだ。(テキストとしては、岩本武和著「国際経済学、国際金融編」ミネルバ書房、2012年、第3章を参照。 ちなみに岩本先生は京都大学経済学部教授で私の2012年の博士号申請について主査を引き受けて下さった方。ご関心のある方は本書ご購入ください。)
 
まず方程式が2つ
i=i*+(Se-S)/S     (わかりやすく期間1年の想定)
M/P=L(Y,i)      ② 
 
i  自国金利(ここでは日本円金利)
i* 外国金利(ここでは米ドル金利)
S 現在の為替相場(1ドル=**円表示)
Se 将来の期待為替相場
 
M マネー供給量
P 物価
L 貨幣需要  
貨幣需要はY(生産量、総所得)とi(円金利)を変数にしており、Yとは正の相関、iとは負の相関
M/Pは実質マネー供給量を意味する。
 
①式はいわゆるアセット・アプローチであり、ドルでの運用と円での運用が為替相場の変動を介してイコールになる金利平価原理を示している。
 
②式は貨幣市場の均衡条件、ただし短期と長期では変数の読み解きが異なる。
短期:価格Pの硬直性(粘着性)を想定しており、Pは不変で、例えば金融緩和でMが増加すると i は低下する(逆は逆)。
長期:PはMと比例的な関係で変化する(貨幣の長期中立性)。
 
具体的な数字例で考えた方がわかり易いので、 i=2% I*=2%  S=100(円) Se=100(円)を起点にやってみよう。
 
ステージ1:まず日本で金融緩和が行なわれ、M増加、i は2%から1%に低下するとしよう。
するとドル円相場は日米金利差の拡大に対応してドルが上昇する(S:100→101)
 
ここで金融緩和によるMの増加が一時的なもの(将来また戻る)と予想されると、これだけで終わってしまうのだが、もしMの増加が恒常的なものと予想されるなら、円通貨の将来の減価が予想され(円の購買力の減少・物価上昇の予想)、将来の期待ドル円相場Seも円安方向に変化する(例えばSe:100→101)。
 
ステージ2:そうなると、①が成り立つためにはSは更にドル高・円安に変化しなくてはならない。S:101→102
ここまでが短期の変化だ。
 
ステージ3:さらに時間が経過して中長期になると、PはMの増加に比例して上昇し、実質マネー供給量M/Pはもとの水準に減少する。
これに対応して円金利 i も元の水準に戻る。i : 1%→2%
この円金利上昇に対応してドル円相場はSはドル安・円高に戻る。 S:102→101
 
従って101→102の部分が短期的なオーバーシュートである。値幅が小さい感じるだろうが、これは期間1年、金利変化1%の想定でやっているからにすぎない。もっと長い期間の運用(期間数年物の債券など)を想定し、で金利の変化幅も大きくすれば、値幅も大きくなる。
 
このように考えると、現在の黒田緩和による円安はステージ2にあることになり、今後物価上昇が進み、円金利が戻る(上昇する)局面では円高に揺れ戻すということになろう。
 
ただしドルについては円より先に来年ステージ3(ドル金利上昇局面)に移行すると見込まれているので、この点ではドル高方向への力がさらに働く余地が残っている。 そういう意味で、円とドルの金融緩和とその終了のステージのタイムラグが、来年もう一段のドル高に作用するチャンスがあると考えるのは、理にかなっているとも言えようか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

日本経済新聞Web版に田村正之編集委員の記事が掲載され、私もコメント引用で登場しているので、コメントを付してご紹介しておこう。青字が引用文、黒字が私のコメント。
 
「6年後に再び1ドル=80円台という警鐘」田村正之 2013年2月17日
 
引用:「貿易赤字の定着で「長期では円安」という見方があたかも決定事項のように語られがちだ。その中で大和総研は今月、6年後以降は再び80円台に戻るという中期見通しを出した。エコノミストの間で「現在の為替はすでに実質ではプラザ合意前と同じ円安で、やがて円高方向に修正されそう」という見方があることと整合的だ。・・・・大和総研では今後10年の予測期間全体でも日本のインフレ率は米国をほぼ一貫して下回り、円高圧力が働き続けるとみる。」
 
米国のインフレ率>日本のインフレ率が長期で継続するという想定に立つ限り、「長期では円高回帰」以外の予想はあり得ない。 ただし私としては、米国インフレ率=日本インフレ率となるシナリオも排除していない。双方ともCPIで1~2%というのは、現状すでにそうなっているが、短期ではなく長期に持続しても不思議ではない。 
 
ただし米国インフレ率<日本インフレ率が趨勢的に実現する可能性は、現時点では予想の埒外(らちがい)、根拠の乏しいシナリオだと思う。 超円安シナリオ(1ドル=120円以上)は短期・中期のタイムスパンでは可能性が乏しいが、日本の政府債務問題に赤信号が灯り、日本国債にリスクウレミアムがのって暴落するようなリスクシナリオが将来起こってしまった時に現実的な可能性となると思う。現時点でそのシナリオの蓋然性が最も高いと予想するのは、日本衰亡論者の煽りでしょ。
 
国際通貨研究所の調査部長を経て現在は龍谷大学教授の竹中正治氏は「為替は期間(短期か長期か、注:竹中)によって決定要因が変わる。個人は自分がどんなタイムスパンで外貨建て投資をするのか明確にし、それに合わせた戦略をたてたい」と話す。」
 
毎度弊著作で強調していることですね。
 
「一方であたかも決定事項のように語られているのが、「貿易収支が赤字に転じたのだから長期的に円安になるのは当然」という考え方だ。」
 
「小林氏は「もちろん貿易収支は為替に影響を与えるが、それは短中期の要因。長期ではインフレ率格差というのがスタンダード」と話す。竹中教授も「貿易・経常収支は様々な為替要因の一つにすぎないし、それだけを過大視するのは疑問。実際、米国の経常赤字は1990年から2000年代前半までほぼ一貫して拡大を続けたが、米ドルの実効相場はこの間、逆にほぼ一貫して上昇を続けていた」と指摘する。」
 
ドルが円高・ドル安のトレンドを1970年代以降長期にわたって辿ってきたのは、長期にわたって米国が貿易、経常収支赤字だからだと思っている人が多いが、2重の意味で勘違いだ。 
 
第1に、ドル円相場=ドル相場という見方が間違い。 上記の引用コメントの通り、90年代から2000年代初頭にかけて長期にわたってドルの実効相場は名目でも実質でも上昇した。
第2に、その間、米国の経常収支は実額でも、GDP比率でも赤字拡大を続けた。経常収支赤字の調整(縮小)局面にシフトしたのはようやく2007年以降だ。今もそのトレンドが続いている。
 
「インフレ率格差を背景にした考え方で、購買力平価と少し違う形で為替の水準を示すのが「実質実効レート」(グラフC)だ。「その国の貿易競争力は名目レートではなく実質実効レートで見るのが一般的」(伊藤元重東大教授) 「実効レート」というのはドルだけでなく、ユーロや中国人民元など貿易のある通貨を加重平均し総合的に計算すること。」
「日本の実質実効レートは時期により円高、円安にかい離するが、長期的には中心ゾーンに回帰することを繰り返してきた。ちなみに実質実効レートが長期では中心に回帰するのは、大半の国の通貨でも同じだ。」
 
実質相場指数=名目相場/PPP
PPP=起点時点の名目相場×(自国の物価指数/外国の物価指数)
レートの表示建値:1外貨=**円
物価指数は起点時点を100として計算する
 
弊著で強調している通り、名目相場がPPPを中心に乖離と回帰を繰り返すということは、実質相場指数はその長期の平均値からの乖離と回帰を繰り返すということと同じである。
 
実質実効相場というのは、上記の計算による自国と各国の為替相場の加重平均値だ。加重平均のウエイトには通常、当該国の貿易に占める相手国のシェア(比率)が使用される。
 
ただし現在日銀や国際機関(OECDやIMF)が使用している実質実効相場指数は、消費者物価指数を使用している。この点で私はその有効性に疑問を抱いている。というのは相対的購買力平価原理は貿易財について成り立つと昔から考えられているからだ。
 
従って非貿易の国内財やサービスの比重が高い消費者物価指数で計算したPPPを名目相場の参照データ(乖離と回帰を繰り返す趨勢的な中心水準)とすることに難点がある。だから、現行の実質実効相場について、長期で平均回帰の現象が出るかどうかは???である。
 
もっとも貿易財物価指数や貿易財の比重が高い生産者物価指数、企業物価指数を計測・公表しているのはほとんど先進国のみで、多くの途上国ではデータの使用ができないので、消費者物価指数による実質実効相場が公表されているというのが実情だ。
 
なお関連して、消費者物価と貿易財価格の関係については、国際経済学では有名なバラッサ・サミュエルソン効果が知られている。以下参考まで。
 
「例えば実質実効レートについて「従来のような中心方向への回帰はおきにくいかも」(経済産業研究所の森川正之副所長)との指摘も出ている。「日本製品の競争力(交易条件)が落ちている中で、実質実効レートのトレンドが円安方向にシフトし始めている可能性がある」(森川氏)」
 
森川氏は、一国の交易条件=輸出物価/輸入物価と実質実効相場の相関関係を強調している。
以下論考参照
 
これを見ると交易条件と実質実効相場の乖離がリーマンショック後の急速な円高で起こっている。
そしてその乖離は2012年暮れ以降の円安で修正された(乖離幅がほぼ解消した)。
両者の乖離については、細川氏が述べている通り、「実質為替レートは交易条件(輸出価格/輸入価格)と密接な関係がある。貿易財のみを考慮した最も単純な二財モデルでは、実質為替レートは交易条件と定義上等しい(小宮・森川, 1995)」、この点がポイントだ。
 
つまり現行の消費者物価指数で計算された実質実効相場と交易条件の乖離とは、消費者物価の変化と貿易財物価(輸出物価、輸入物価)の変化の乖離だと言える。それが直近の円安で修正されたということになる。
 
また、実質実効相場(以下日経新聞の掲載図参照)で見て現在の円相場が1980年代前半並みの円安水準だからと言って、日本の輸出産業が当時と同じくらい円安メリットを享受できている(らくちんしている)というわけでは必ずしもない。 輸出産業(企業)にとって採算上問題となるのは、販売価格と仕入れ部品・原材料・エネルギーなどの相対価格(=交易条件)の変化である。
 
輸出販売価格が仕入れ原材料・エネルギー価格に対して相対的に低下すれば(=産業・企業レベルの交易条件の悪化)、実質実効相場が円安でも採算は苦しいし、逆ならば円高でも収益的に問題はない。その点、2000年代以降のトレンドは輸出価格の下落基調、原材料・エネルギー価格の上昇基調なので輸出産業(企業)は収益的に苦戦を強いられてきたと言える。 
 
この点で森川氏の上記論考の指摘、つまり実質実効相場で極端な円高ではない(2012年10月時点)から、輸出企業に為替相場の問題はそんなにないはずだというのは間違っているという指摘は妥当だと思う。
 
「「長期円安確定」とみて老後の資産の多くを外国債券や外貨建て投資信託にしている極端な人も見られるのが現状だ。」
F巻さんに煽られた方々かな?(^_^;)
 
追記:書き忘れたから書き添えておきます。2月の初めに述べたとおり、今の相場は短期では「もしかしたら100円割れもあるかな・・・?という円高リスク」です。CGOIMMの非商業筋の円売り持高も、ピーク時の半分程度に縮んで推移していますね。 以下参照
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
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毎度のトムソン・ロイター社コラム、本日午後掲載されました。↓
 
冒頭部分一部引用:「経常収支の赤字が大きいなどファンダメンタルな脆弱性を抱える新興国の経済・金融面の動揺で、為替相場と株価は再び波乱局面に入る雲行きだ。これら新興国は「フラジャイル5」(インド、インドネシア、ブラジル、トルコ、南アフリカ)と呼ばれているが、直近ではアルゼンチンも加わって「フラジャイル6」となっている。
 
米国の量的金融緩和縮小が新興国から投資資金の引き揚げを起こし、それが動揺の原因となっているとの解説が一般には流布しているが、やや近視眼的な見方だろう。
昨年7月30日掲載の本コラム「新興国襲ったドルキャリー巻き戻しの残存リスク」で指摘した通り、経済協力開発機構(OECD)の景気動向指数を見れば、これら新興国の景気動向は2011年から波打ちながらもスローダウンする局面に入っていることが明らかだ。投資資金の対外的な流出・引き揚げ、株価の低迷も当該諸国のファンダメンタルな変化を反映しているに過ぎない。
 
一方、同景気動向指数は12年後半以降、日本、米国、英国、ユーロ圏で穏やかながらも景気回復が持続していることを示している。つまり、世界経済は回復基調をたどる先進国と相対的に停滞する新興国に2極化しているのだ。
 
これは株価指数の動向にも明確に現れている。新興国の合成株価指数であるMSCIエマージング(ドル建て)は11年4月に高値をつけてから、以後一度もその高値を更新することなく低迷している。一方、米国株価は高値を更新し、日本株も日経平均でリーマンショック前の07年末の水準を超えた。
 
アンチ・アベノミクスの論者らは、現在の日本の景気回復は蜃気楼の様なもので、4月の消費税率引き上げを契機にアベノミクスは幻想だったことが明らかになるだろうと、陰鬱な見通しを呪詛のように繰り返している。(←本論とはあまり関係ないのですが、どうしても書いておきたかったので(^_^;))
 
筆者は現在の景気回復は実体を伴うものであり、消費税率引き上げ後、駆け込み需要の反動減による一時的な後退はあるものの景気の腰折れはないと考えている。
 
いずれにせよ、今年第2四半期以降も景気回復が持続するかどうかは、これまでの経済政策論争のひとつの決着点になると同時に日本経済の長期的な分岐点にすらなるだろう。」
*****
 
見通しの結論は以下の通り。
目先:一時的に100円割れの円高も
中期(1年から2、3年程度まで):円安持続(ただし1ドル=120円とか、それを越えるような超円安の蓋然性は現時点では低い)
長期:円高に回帰(日米インフレ率の持続的な逆転は起こらず、相場はPPPに回帰する)
 
また、貿易収支の赤字を長期的円安要因として重視する方がいますが、貿易収支は所得収支、各種資本収支と並んで国際収支項目、あるいは為替需給項目のひとつに過ぎませんので、それだけ特別視して「貿易収支赤=円安」という見方は一面的すぎます。
 
追記(2月3日):気がついているかな? CGO IMMのNon-Commercial筋の円売り持高(1月28日時点)が、ピーク時(昨年12月24日)から40%ほど減少していますよ。
それだけ巻き戻しても105円から102円程度への戻りですんでいるのは、102円台で円売りしている参加者がけっこういるということでしょうかね。押し目を買うのが好きな日本のFXプレーヤーかな?
直感的にはもうちょっと円高・ドル安に行きそうな感じがしますが・・・・さて、どうかな。
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
 
 

今月下旬にトムソン・ロイター社に寄稿する骨子と図を一部先行して、以下チョロ出し致します(^_^;)
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為替相場に関する弊著をご購読頂いた方々、あるいは本ブログのリピーターの方々はおわかり頂いていると思うが、為替相場の変動は長期と短期・中期の変動、その要因を分けて理解する必要がある。
 
ご参考
「この先のドル買いはハイリスク・ローリターン」2013年5月、トムソン・ロイター社コラム
「米国経済は尻上がりに改善」2013年6月、トムソン・ロイター社コラム
 
1、長期の相場動向は、2通貨のインフレ率格差に規定された相対的購買力平価原理で説明できる。
 
2、為替相場が長期的にはPPPからの乖離と回帰を繰り返す限り、名目相場をPPPで割り算して算出した実質相場指数は長期的な平均値からの乖離と回帰を繰り返す(以下掲載の上段の図)。これが短期、中期の相場変動だ。
 
3、、短期・中期の相場変動は複雑で、特定のマクロ経済変数で長期にわたって一貫した説明をすることは困難だ。ただし数年から10年前後の期間に特定すれば、その期間について影響力の強いマクロ経済変数を特定し、有意な説明をすることは可能だ。
 
私が調べる限り、2005年以降足元までのドル円実質為替相場指数に強い影響力を与えている変数は、①日米実質金利格差、②グローバルな投資家のリスク許容度だ。 
そこで以下は2005年1月~2013年12月末について、ドル円実質相場指数の対前年同月比(%)を
次の2つの変数で回帰分析すると、決定係数(R2)=0.63となり、いずれの変数についても有意な結果が得られる。
 
変数①日米実質金利格差:
 (O/N FF rate-生産者物価指数前年同月比)-(O/N Call rate-企業物価指数前年同月比)
変数②米国社債市場のリスクプレミアム:Baa格社債利回り-Aaa格社債利回り
 市場が不安定化して投資家のリスク許容度が低下するとリスクプレミアムは上昇する。
  →リスクオフの状態、円高を伴う。
 市場が安定して、投資家のリスク許容度が上昇するとリスクプレミアムは下落する。
  →リスクオンの状態、円安を伴う。
 
下段の図を見ておわかり頂けると思うが、2013年春の時点では実際の実質相場指数が推計値から大きくドル高方向に乖離している。こうした分析を基に、私は昨年春の時点では長期的のみならず短期・中期でもドル高方向に行き過ぎている(ドル反落リスクが高い)と判断したわけだ。
 
今回、2013年12月までのデータで再び回帰分析すると、昨年秋にかけて推計値がドル高方向にシフトする形で、現実値と推計値の乖離が縮小していることがわかった。これは日米のインフレ率格差(日本企業物価、米国生産者物価)が逆転した結果だ。(ご参照1月4日の以下ブログ)
 
ただしその後は再び現実値と推計値の乖離が広がっている。これは12月のデータで日米のインフレ率逆転の幅が少し縮んだ一方、ドル円が一段とドル高にシフトしたからだ。
 
ちなみに、以下の図表の最新時点2013年12月の平均ドル円相場は、名目相場103.42、実質相場指数105.91(1973年=100)、日本の企業物価対前年同月比2.5%、米国の生産者物価指数は同1.2%となっている。
 
既に1月4日のブログで述べたとおり、米国の生産者物価はシェール・ガス&オイルの増産を背景にエネルギー価格の抑制、あるいは低下でディスインフレ傾向にある。一方日本の企業物価は反対に円安と原発停止を背景にエネルギー価格の上昇が目立つ。 この変化は中期的に日米物価の動向に影響を与えそうであり、また2015年からは米国の金利引き上げも視野に入ってくるので、実質金利格差要因は当面ドル高要因として持続する公算が高い。
 
予測困難なのは社債リスクプレミアム(あるいはVIX指数も利用できる)に反映される投資家のリスク許容度の動向だ。割高感が出てきている米国株価が急反落すれば、投資家のリスク許容度の低下(リスクオフ)→リスクプレミアムの上昇→日本株売り、円買い戻しという動きに直結するだろう。
 
しかしながら、そうした米株の反落が、どういうタイミングでどの程度の規模で起こるかは事前には予測不能だ。合理的な予測は不能だから、とりあえず直感的な判断で、米国株、日本株は高値から10%程度、ドル円相場は105円のドル高値から5%程度の反落はいつ起こっても不思議ではない・・・と想定しておこうか。 反落の幅が大きい場合は、その倍(株は20%、為替相場は10%)程度の調整もあり得ると思っておこう。
 
投資スタンスとしてはこれまでと変わらない。
ドル円相場:
私はドル資産の68%までドル売りヘッジを入れた。今後110円前後まであればさらに売り上がる。
ドル反落があれば、多少買い戻してヘッジ比率を下げ(変化幅で10%程度)、また上がったところで売り直し、平均持ち値を引き上げるためのトレーディングもするつもり。
日本株:
日本株は高値更新局面をテイクチャンスして既に昨年保有していた残高の55%程度までは売ってキャッシュ化した。今年、日経平均1万8000円前後の水準まで上がれば、さらに売り上がろうか。  大反落したら恐る恐る一部買い戻してみようか。
米国株:
米国株は長期で永続的に保有する「コア持高」(昨年の最大持高の約3分の2)を残して売っちまったので、よほどの高騰がなければ現状維持。
マンション:現状維持。
 
参考論文:竹中正治、佐久間浩司 「2000年代の金融危機と外国為替相場の変動」(財)国際通貨研究所、国際経済金融論考、2013年6月
 
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