現代ビジネスオンラインへの寄稿です。今朝掲載されました。
https://gendai.media/articles/-/109424?imp=0

引用:「ゼロ金利下のリフレ政策は、金融の量的緩和のみでは、それが大規模なものであっても、効果は極めて限られる。財政支出の拡大とセットであることが肝心だ。

この点は、アベノミクスのブレインであった浜田宏一氏(東大名誉教授、イエール大学名誉教授)が、2016年に量的金融緩和だけではインフレ目標が達成できない状況が明らかになった時点で、それまでのマネタリスト的リフレ派の政策主張を転換し、「量的金融緩和に加えて財政支出の拡大も必要だ」と唱えて話題になった。

ところが浜田氏が主張転換の理論的論拠にしたのがFTPL(Fiscal Theory of the Price Level、物価水準の財政理論)という米国の経済学者クリストファー・シムズ氏(プリンストン大学教授)の仮説的理論だったので、エコノミスト・経済学者の間で物議を醸した。同理論の解説は省略するが、実証的なデータは同理論を支持していないという指摘が多い。筆者が見聞する限り、日本の金融系学会からは懐疑的な意見が多かった。

しかしながら、異論の多いFTPLなど持ち出さなくても、短期金利をゼロまで下げても民間の借入増によるマネーストックの増加が起こらないならば、上記の通り、残った選択肢は日銀の国債購入と財政支出の増加のセットしかないことは明らかだ。これは別に新発見ではない。デフレ不況からの脱出には、金融緩和と財政支出の拡大の双方が必要だと説いたケインズ(ケインズ学派)の唱えたことだ。」

「「YCCをもう止めるべきだ」という意見もある。しかしそれを止めて伝統的な短期金利の操作に戻るのは、どの程度のインフレが定着するか非常に不確実な今の日本経済の状況では、時期尚早過ぎるだろう。その結果、10年物国債をターゲットにしたYCCに替わる金融政策の指標をどう設定するか、これが植田日銀新総裁の大きな課題だと思う。

もうひとつの課題は、今後の趨勢的なインフレ率が2%かそれ以上で定着するのか、あるいは再び低インフレ、ないしはデフレ基調に戻ってしまうのか、これを見極めるタイミングだ。」